4)聴覚障害や視覚障害を持つ人に対してインクルーシブなデザインになっていない問題
Clubhouseを一度使うと実感するのが、シンプルなUIと引き換えに生まれてしまう「分かりにくさ」だ。音声はただ流れるままで、会話の字幕やコメント欄は存在しない。さらに、アイコンの周りに細い枠が付けられることで「喋っている人」を見分けることができるが、人数が多い部屋などでは誰が発言しているのか非常にわかりにくい場面も多い。
そこで浮かび上がるのが、聴覚障害や視覚障害を持つ人に対してインクルーシブなデザインになっていないという問題だ。
「Clubhouseのユーザー体験は(聴覚障害者にとって)非常に酷く、ルームを始めることすら躊躇してしまいました。最初からプロダクトをインクルーシブに開発しないと、そうなってしまう。」(Liam O’Dell: Social media’s move towards audio and what this means for deaf people)
例えばTwitterはTwitter Spacesという新機能をリリースし、字幕機能を追加するなど、聴覚障害者にとってアクセスしやすいサービスになっているのに対して、Clubhouseはインクルーシブではなく、使える人が限られてくる。
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新しいプロダクトだとはいえ、このように初期段階でアプリ内のカルチャーや使用方法が定まってしまうことは、テック関係者からも問題視されている。
リリースから約一年が経とうとしている今、インクルーシブな機能の追加や差別などに対する規制の強化などが特段改善されていないことも批判の対象になっている。これから先、これら批判やフィードバックを糧にどこまで機能の改善や追加が行われるのかがClubhouseに期待されていることだ。
前編では主に、米国で起きているClubhouseでの様々な差別の問題を指摘した。後編では、それらの問題がなぜClubhouseで起きやすいのか、アプリの構造やテック系にはびこるミソジニーの問題などを紹介していく。