振替加算とは?
前述の加給年金は、「配偶者が65歳まで」という条件があるため、配偶者との誕生日が数カ月しか差がない場合、その間しかもらえませんし、年上の配偶者を養っていれば受け取ることができません。
配偶者が65歳になると、今度は配偶者自身の年金に「振替加算」がプラスされる可能性が出てきます。
ただし、昭和41年4月2日以降生まれの配偶者には「振替加算」自体がありません。
生年月日以外の要件は次の2点なのですが、複雑なため基本的な考え方を先にお伝えすると、配偶者の「会社員だった期間」が20年を切る、つまり老齢厚生年金がそれほど多くない場合に、支給される可能性があります。
・配偶者が老齢厚生年金等を受給している場合、厚生年金等の加入期間が240月未満
・妻の厚生年金保険の35歳以降の(夫は40歳以降の)加入期間が、生年月日により15~19年未満
振替加算の年額は、昭和40年前後生まれの約1万5千円から昭和一桁生まれの20万円台まで、生年月日によりかなり違います。
加給年金から振替加算に変わる仕組み
要件に該当する場合で、例えば夫が妻より2歳年上の夫婦なら、妻が65歳になるまでの2年間は夫が「加給年金」を受け取り、その後は妻が「振替加算」を受け取ることになります。2つの給付は重ならず振り替わるため「振替加算」という名称になったのでしょう。
年上の妻を夫が養っているケースは、最初から「加給年金」はありませんが、夫が原則65歳になった時点で妻に「振替加算」がプラスされます。「加給年金」がなかったために振り替わるという感覚もないと思いませんか?
ここが要注意ポイントです。夫が原則的な年金を受け取る年齢65歳になったら、振り替わる感覚がないにもかかわらず、「振替加算」を受け取る手続きをしなければいけないのです。
今回報道された訴訟でもこのケースの手続き漏れがあったのではないかと想像しています。
まとめ
報道をきっかけに、夫婦特有の「加給年金」「振替加算」を紹介しましたが、年金にまつわる共通事項としてしっかり認識していただきたいことがあります。
それは、手続きをして初めて受給できるものだということです。
自動的に口座振替用紙と請求書が送られてくるような仕組みがあれば良いのですが、当面難しいでしょう。
というのも、各々の加算であればまだわかりやすいものの、夫婦であることや生計維持関係が前提となっています。該当の年齢時点で既婚者かつ同居して扶養しているのか、生年月日は? など、あらゆる角度で要件を満たしているか否かを国で自動的に判定する仕組みがあるとは思えないからです。
夫婦前提の制度を見直すことも良いと思いますが、既得権の不利が発生してはいけないのでやはり簡単ではなさそうです。
現段階では、今回お伝えしたような知識を覚えないまでも記憶の隅に置いていただくことが重要だと思います。「何か受け取れるものがあるかもしれない」という勘に繋がっていくからです。
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