
GettyImagesより
東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長・森喜朗氏の女性蔑視発言への抗議の声が止まらない。
森氏は今月3日「女性が多い理事会は時間がかかる」などと発言。「女性差別」との批判を受け、4日に謝罪会見を開いたものの、質問の趣旨とはズレた回答や逆質問、さらには記者の追及に<面白おかしくしたいから聞いてるんだろ>と声を荒げる場面もあり、“逆ギレ会見”とさらなる批判を招いた。
怒りの声が巻き起こっているのは日本国内だけではない。今月5日にはドイツ大使館のTwitterアカウントが、複数人が左手を挙げた写真とともに、「#dontbesilent」「
#genderequality」「#男女平等」と投稿。駐日欧州連合代表部、国連広報センター、駐日フィンランド大使館、スウェーデン大使館なども同様の投稿を行った。
#dontbesilent#genderequality#男女平等 pic.twitter.com/sVhC59XQAi
— ドイツ大使館🇩🇪 (@GermanyinJapan) February 5, 2021
一方で、関係者からは森氏の続投を望む声が出ており、「既に森氏は謝罪した」として幕引きしたい様子がうかがえる。
5日の毎日新聞の取材で森氏は、<元々、会長職に未練はなく、いったんは辞任する腹を決めたが、武藤敏郎事務総長らの強い説得で思いとどまった>と答えている。また、別の報道によれば、自民党の世耕弘成参院幹事長は森氏について<余人をもって代えがたい>と述べ、最後まで責務を全うすべきとの考えを示した。
森氏の発言から4日後の2月7日には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のホームページに「東京2020大会と男女共同参画(ジェンダーの平等)について」の声明文が掲載された。以下に引用する。
<弊会の先週の森会長の発言はオリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切なものであり、会長自身も発言を撤回し、深くお詫びと反省の意を表明致しました。
「多様性と調和」は東京大会の核となるビジョンの一つです。ジェンダーの平等は東京大会の基本的原則の一つであり、東京大会は、オリンピック大会に48.8%、パラリンピック大会では40.5%の女性アスリートが参加する、最もジェンダーバランスの良い大会となります。
私どもは、改めてビジョンを再確認し、引続き、人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを尊重し、讃え、受入れる大会を運営します。ビジョンを追求しながら、多様性の調和、持続可能性、復興に重きを置き、大会後の社会の在り方にもレガシーを残すように取り組んで参ります。
引き続き、コロナの感染状況にも注視しつつ、対策に万全を期し、安全安心第一の大会とするべく準備を進めて参ります>
これらの動きにTwitter上では、「引き留める周囲にも問題があるのでは」「森氏のあの会見で『謝罪したので終わり』とするのは無理がある」「選手の割合だけでジェンダー平等を主張するのはいかがなものか」と怒りの声が止まない。
また、世耕氏の「余人をもって代えがたい」発言には、森氏は高齢でもあることから「代わりがいないとは組織のリスク管理として問題では」「同じ理由で定年延長を閣議決定されていた黒川元検事長もあっさり辞めましたよね」とも指摘されている。
なぜ「性差別について学びます」と言えないのか
森氏の女性蔑視発言はオリンピックだけの問題ではなく、日本社会の性差別との向き合い方が問われている。
そもそもなぜ森氏があのような発言をしたかといえば、属性による決めつけが性差別だという認識に欠けているためだろう。謝罪のための会見ならば、何が問題だったのか、再発防止のためにどうするか説明する必要があった。建前であっても「性差別について学びます」と表明することはできなかったのだろうか。
一部報道によれば、森氏が問題発言をした際、周囲からは笑い声があがったという。周囲が森氏に”何が問題であったか”を指摘するのも難しいのだろう。そのうえ、本人が辞めるつもりでも周囲は引き留める。森氏の続投を望みつつも、差別や人権問題について議論にもなっていない現状を見ると、東京五輪・パラリンピック組織委員会の体質を問題視されるのはやむを得ないだろう。
これは森氏とその周囲だけの問題でもない。森氏が会長の立場であの発言をしたのは、社会が女性蔑視を見過ごしてきた歴史があるからだ。問題発言をしても「年齢的に仕方ない」と甘く見たり、「○○節」などと形容し、ネタとして消費してきた風潮がある。「問題発言をするけれども、仕事ができる・社会的地位が高い人」をスルーしてきた社会のツケが浮き彫りになったのではないか。
また、森氏の発言について女性に意見を求めるメディアが多いが、これは女性だけの問題ではない。”男性対女性”ではなく、社会の一員として性差別を見過ごすのか見過ごさないのか、性別関係なく全ての人に問われている。
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