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2月9日放送の『グッとラック!』(TBS系)で、「産後うつ」の特集があり、Twitter上で共感を呼んでいる。
2013年の厚生労働省の調査によると、産後うつの疑いのある母親は9%であったが、2020年10月の筑波大学の調査では約24%が産後うつと、単純比較はできないものの、増加傾向が見られる。
番組では3児の母親であるクワバタオハラの小原正子氏に取材。小原氏のブログによれば、第三子出産の2019年に産後うつの説明を医師から受けたという。
コロナ禍で産後うつが増えていることについては「出産によって生活が一変し、ホルモンバランスの影響も受け、さらに新型コロナで生活が変わったため悪化するのではないか」と述べた。自身は第三子が生後6カ月の頃にコロナが流行し始め、子どもへの感染を心配し、病院の健診へ行くのもためらったという(※)。
※厚生労働省では<過度な受診控えは健康上のリスクを高めてしまう可能性があります><赤ちゃんの予防接種を遅らせると、免疫がつくのが遅れ、重い感染症になるリスクが高まります>と注意喚起している。
小原氏は明るく前向きな性格なため、自分は産後うつとは無縁だと思っていたというが、実際にはそうではなかった。産後うつに悩む母親には「自信がある人は要注意。絶対に一人で頑張らないで。自分で溜め込まない方がいいと思います」と呼びかけ、<(産後うつは)恥ずかしくないと思った方がいい>と強調した。
番組は、昨年7月のコロナ禍で出産した“ママ界のエンターテイナー”であるバブリーたまみ氏にも取材。入院中は夫とも会えず、その後も実家に帰れなかったり、保健所での健診時に他の親子と交流することもなく、「孤独だった」と語る。急に涙が出てきたり、子どもに当たってしまうこともあったそうだが、「勇気を出して夫に『一人になりたい』と伝え、コンビニに行ったことが救いになった」とのこと。
バブリーたまみ氏は、ママを応援する歌を披露するなどの活動を行っている。<「自分を大事にする」って分からないって思ってしまっているお母さんってすごく多いので、ママの笑顔が一番だからママが自分自身を大事にしようね>というメッセージを込めて歌っているそうだ。
Twitter上では「子どものことは大切に思っているけれども、かわいく思えないときがある」「番組見ながら泣いた」「世間の理解が広まってほしい」など多くの共感の声が見られた。
黒木メイサも「哺乳瓶洗いながら泣いてた」
出産後は出産による身体やホルモンバランスの変化、親になることへの不安などさまざまな要因から精神的に不安定になりやすい。
2児の母親である俳優の黒木メイサ氏も1月27日、Instagramのストーリーズにて、育児に関する質問について回答。産後うつや育児ノイローゼの経験を聞かれると、<今思えばそうだったのかも。哺乳瓶洗いながら泣いてた>と回答し、共感を集めた。
「産後うつ」自体はコロナ前から存在していたが、なぜコロナ禍で産後うつになりやすいのか。専門家によれば、里帰りや親が来て手伝うことができず、親のサポートがない分、母親だけに負担が集中してしまうとのこと。そして、母親学級など自治体が主催する子育て支援の集まりが中止になり、家族以外への相談が難しいことも挙げている。
「母親なら子どものために我慢すべき」「育児が辛いのは当たり前だから大ごとではない」といった風潮が社会には蔓延っており、母親自身も我慢し続けてしまうことはあるだろう。だが、厚生労働省のホームページには以下のように記載されている。
<女性の一生のうちで妊娠中や出産後は、うつ病が起こりやすい時期です>
<うつ病になった妊産婦の多くの方は適切な治療を受けていないのが現状です。治療法には薬以外にも心理療法や環境の調整も考えられます。ご本人・ご家族の十分な理解のもと、個々の患者さんにあった治療を選択できるように専門医とご相談されることをお勧めします>
とはいえ、なかなか身近な人に相談しにくい場合もある。そのような場合は、自治体で運営する子育て支援センターや家庭児童相談室などで、子育てに関する悩み相談を受け付けている。「○○市 子育て相談」などと検索してみるか、詳しい部署まで調べる元気がなければ、住んでいる自治体の代表番号にかけ「子育てに関する相談がしたい」と伝えれば窓口の案内が受けられるはずだ。
また有料にはなるが、助産師など専門家によって運営されている「じょさんしONLINE」ではオンラインでの個別相談や、オンライン講座を展開している。
周囲にもできることはある。社会に蔓延する“母性神話”の呪いを解いていくことだ。「母親にも当然リフレッシュの時間が必要」「辛いときは耐えるのではなく、相談や支援を受けたほうがいい」「完璧である必要はない」そういった空気を広げていくことが母親のハードルを下げ、産後うつを防ぐ一助になるのではないか。