
Getty Imagesより
アカデミー賞の前哨戦とも称されるゴールデングローブ賞のノミネートリストが今年も発表された。今回のノミネーションで最も注目を集めているのは、監督賞部門においてクロエ・ジャオ(『ノマドランド』)、レジーナ・キング(『あの夜、マイアミにて』)、エメラルド・フェネル(原題『Promising Young Woman』)の、3人の女性が候補入りしたことだ。1944年に初回開催されたゴールデングローブ賞において、監督賞にノミネートされた女性は今回を含め8人のみであり、3人の女性が監督賞候補に挙がったのは史上初となる。
昨年には、グレタ・ガーウィグ監督の『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』やルル・ワン監督の『フェアウェル』、ローリーン・スカファリア監督の『ハスラーズ』など、女性の監督による素晴らしい作品が多く生まれていたにも関わらず、その全てがノミネーションから外されていた同賞だけに、今回の快挙を“前進”とみた人々から喜びの声も上がっている。
ジェンダーバランスの偏重はゴールデングローブ賞に限った問題ではない。過去に累計350人以上が監督賞にノミネートされたアカデミー賞においても、候補に挙がった女性はわずか5人のみ。
こうした映画賞のノミネーションに見られるアンバランスさは、映画業界全体におけるジェンダーバランスの不均衡な状況を示す氷山の一角であるとも言えるだろう。
男性主体の業界構造によってもたらされる深刻な問題が表面化した大きなきっかけは、2017年のハリウッドだった。大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが女性のキャストやスタッフに対し行った性的暴行が発覚したことから、「#MeToo」「Time’s Up」の運動が一気に本格化した。
この渦中で行われたアカデミー賞の授賞式では、『スリー・ビルボード』で主演女優賞を獲得したフランシス・マクドーマンドが「よろしければ、女性候補者の皆さん立ち上がってください」「最後にこの言葉を残します。“インクルージョン・ライダー”」とスピーチする一幕もあった。“インクルージョン・ライダー”とは、キャストや製作スタッフの性別や人種構成を多様なものにするために結ばれる映画製作時の契約条項のこと。つまりマクドーマンドは、出演者や製作陣における性別(そして人種)の非対称性を抱えたハリウッドの体質改善を、オスカースピーチの場で呼び掛けたのだ。
業界構造の見直しを目指す運動は、スウェーデンの映画界でも起こっていた。スウェーデン映画協会は、「2020年までに映画業界におけるジェンダーの平等を目指す」ことを意味するスローガン“5050 by 2020”を掲げ、各国際映画祭における審査員の選考方法や上映プログラム構成に関するデータの開示などを求める運動を行った。これにより昨年開催されたスウェーデンのヨーテボリ映画祭では男性と女性の監督による作品が同数上映されている。
カンヌ、ヴェネツィア、ベルリン国際映画祭などもこの運動に賛同する意志を表明した。2018年のカンヌ国際映画祭では、歴代のコンペティション部門選出女性監督数82人にちなみ、ケイト・ブランシェットやアニエス・ヴァルダ監督ら82人の映画関係者によって映画界における男女の雇用機会・賃金格差の平等を訴えるパフォーマンスが行われた。この“5050 by 2020”の重要性について、『シェイプ・オブ・ウォーター』などを手がけたギレルモ・デル・トロ監督は次のように語っている。
「これは“論争”ではなく、現実の問題。まさに今、解決すべき問題なんだ。この問題について呼びかけて、疑問を投げ掛け、指摘して、世間に知らしめることが重要だ」
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