誰が指揮をとっているわけでもないのに、ネットで一度始まったネガティブキャンペーンはなかなか終わらなかった。出演ドラマの視聴率が振るわなかったことで、「低視聴率女優」と書き立てられるようにもなっていった。
実際、初めて連続ドラマで主演を務めた『きみが心に棲みついた』(TBS系/2018年)は平均7.7%(ビデオリサーチ調べ、関東/以下同)、同年放送の主演作『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)も平均5.8%と、数字は芳しくなかった。
しかしその数字が、役者としての吉岡の評価と一致するわけではない。ブレイクのきっかけとなった『カルテット』(TBS系/2017年)におけるスパイスの効いた演技は、脇役ながら強い印象を与えた。主演を務めた映画『見えない目撃者』(2019年)における視力を失った元警察官の演技も、多くの観客に支持されている。
そんな吉岡にとって、『レンアイ漫画家』は満を持しての新境地開拓となる作品だろう。前述したようにある意味で「賭け」である。
実は吉岡は、コテコテのラブコメにこれまでほとんど出ていない。『きみが心に棲みついた』は恋愛ドラマではあったが、コメディ要素は薄かった。むしろ『カルテット』で演じた役柄の方が、コミカルだったくらいだ。
『レンアイ漫画家』番組公式サイトに掲載されたインタビューでは吉岡本人が<“ド直球ラブコメ”作品への出演経験がほとんどないので、すごく新鮮に思いました。また、今は明るいエンターテインメントが必要とされているんじゃないかなと、私自身も感じてたので、ポップな笑いやドタバタもあり、さらに愛情いっぱいの作品に出演させていただけることに、本当にうれしく思いました>と話している。
今回のキャスティングは、そうした彼女のキャリアを見越したものでもあるようだ。「毎日キレイ」(2021年2月11日付)で、作品の編成企画を担当するフジテレビの佐藤未郷氏は<“まさにこんな吉岡里帆が見たかった!”という作品になっていると思います。くるくる変わる、その表情豊かな吉岡さんの愛らしさをぜひ楽しみにしていただきたいです>と話している。
ドラマ版『レンアイ漫画家』は原作漫画とは登場人物のキャラクター設定が変わっており、すでに原作ファンを中心に「ミスキャスト」との意見が出ている。しかし、蓋を開けてみなければどう転ぶかはわからない。ラブコメならではの「あざとかわいい」が炸裂し、一気に女性ファンを獲得する可能性もあるだろう。
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