「同居」だから気楽 15年以上一緒に住んでいるAさんとMさん

文=藤谷千明
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 ちなみに、手術は無事終わったものの、入院の対応を巡ってMさんと両親の間に溝ができてしまったという。

「親が病院に言われるがままに高い病室や入院プランにサインしてしまって、パジャマもレンタルだと高くついてしまうのに、めんどくさがって承諾しちゃって……。それに私は皮膚が弱いのでレンタルのパジャマだとかぶれてしまうんです。素材や洗剤も選ばないといけないので、そういったことは全部Aさんが対応してくれました」(Mさん)

「お見舞いも家族が許可した人じゃないと病院に入れないんですよね。厳しい病院だったのかもしれないけど。それで私が親から承諾をとって、週に一回、皮膚の薬や替えのパジャマを持っていきました」(Aさん)

 Mさんは退院したものの、時期を見てもう一度手術が必要な状態だという。職場復帰もしばらくは難しかったようで、その間の生活費はAさんによって賄われていた。

「若干の貯金はありましたし、普段の家事はMさんに任せっぱなしだったから、このくらいは大丈夫です(笑)。自分の親からは“いくら友達だからって、そんな大変な状態の人と暮らさなくても”と呆れられてますが、今から一人暮らししたほうがお金がかかりますし」(Aさん)

 凸凹という言葉がぴったりのバランスで、短期間で離婚する夫婦も少なくない中、15年以上も共同生活を続けている二人だが、今後もずっとこの共同生活を続けていくつもりなのだろうか。

「来年で40歳になりますし、そろそろ“老後どうする?”って話は出ますね。でも“今更離れて大丈夫?”とも思います。とくに私は病気のこともあるし、ひとりで倒れたらどうしよう、気づかれなくて手遅れ……みたいになるのが怖い」(Mさん)

「仮に別々に暮らすことになったとしても、できるだけ近くに住みたいという話はしています。それなら“ご飯食べよう”ってすぐ集まれるし。でも、ずっとどっちかの家にいそうだから、“意味なくない?”っていう(笑)」(Aさん)

 この調子だとおそらく老後まで一緒に暮らしていそうな二人。最後に、この生活が続いてるコツを聞いてみた。

「別れて一人暮らしするにはお金の問題もあるし、とはいえ地元には帰りたくないという目的がお互いに一致しているのは大きいですね。あとは、追っかけているものが一緒ということもあるのかな(笑)」(Aさん)

「価値観が近いのは本当にそう。趣味が別々だと、まずはその趣味の理解からすり合わせないといけないし。“今日は推しの配信があるからご飯先に食べるね”とかって、家族だと難しいこともあるじゃないですか。“同居”だから気を使わないというのはあります」(Mさん)

「同居」だから気楽 15年以上一緒に住んでいるAさんとMさんの画像4

 “同居だから気楽であれる”のは、先述した『女ふたり、暮らしています。』でも、各々の両親との関係においてのエピソードで触れられていた。ファン・ソヌ氏の母はキム・ハナ氏の好物を大量に送り、父はハナ氏を飲み友達のように迎えているものの、「もしも自分と相手の父母の関係が婚姻関係によるものだったらこうはいかないだろう」とあった。それは私のルームシェア生活の実感としてしもたしかにある。

 「友達」だからこその「気軽さ」は快適だけど、正直なところたとえ家族であった場合でも、そういった重圧から開放されたほうが、誰にとっても生きやすい世の中になるのではないだろうか。一筋縄ではいかない問題だとは思うけれど。

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