しかしである。2021年現在の堂本剛は、そういった評価を完全に覆しているように見える。彼のソロプロジェクト・ENDRECHERIはファンクが好きな剛のクリエイティブを最優先にした趣味性の高い音楽を追究しており、ジャニーズのアイドルとはまた違ったファン層にも届き始めている。日本を代表する音楽フェス・SUMMER SONICにも2018年と2019年の2年連続で出場した。
また、仕事では自由な裁量を手に入れている。音楽活動に力を入れるため、俳優としての仕事はたとえ大きな役であろうと断ることもできるようだ。
2018年には『KinKi Kids どんなもんヤ!』(文化放送)にて、<連ドラはイヤですね>と大胆な発言をしている。
発言のきっかけは、同年1月から「イブニング」(講談社)にて連載されている『金田一37歳の事件簿』。この作品は『金田一少年の事件簿』の20年後を描いた続編である。
『金田一少年の事件簿』といえば、1995年から1997年にかけて主人公・金田一一を演じた剛にとっての当たり役。原作者の樹林伸氏は『金田一37歳の事件簿』にあたって堂本剛をモデルに当て書きしていると明かしており、ドラマ化の際は剛が再び金田一を演じることが期待されていた。
しかしそれに対して剛は感謝の言葉を述べつつも<なにかをやりながらやるとかもう、イヤやわ><すっごい暇な時やったらいいけど。なんかこういうのって忙しい時に来んねんな>と話していた。いまの剛は俳優よりもミュージシャンとしての仕事を優先させたいのだろう。
ジャニーズ事務所にいながらこれだけ自由に活動できている以上、敢えてジャニーズを離れるメリットもないように思える。
堂本剛の「ジャニーズ愛」
また剛は、所属タレントのなかでも人一倍ジャニーズ事務所への愛情をもっている。ジャニー氏から非常に大事に育てられた、距離の近いタレントでもあり、会社には恩も感じているのではないか。
ジャニー氏が亡くなった直後に行われたコンサートのMCでは、こんな話をしていた。ジャニー氏が亡くなったちょうどその時、剛はバラード曲をつくっており、肩のあたりにジャニー氏の「気配」を感じたのだという。ちなみにこの曲はジャニーズのタレントか堂本光一と一緒に歌いたいと話していた。
その後、剛は2019年に行われた初代ジャニーズを描いたA.B.C-Zの舞台『ABC座 ジャニーズ伝説』に書き下ろし楽曲「You…」を提供している。
このようにクリエイターとしてジャニーズの制作物に関わることは剛にとって「恩返し」という意味合いもあるようだ。彼は「AERA」2019年12月9日号(朝日新聞出版)のインタビューで<これからも僕がジャニーズという場所に対して貢献できることがあれば、貢献し続けたいと思っています。どういう形であれ、KinKi Kidsは、ずっと続けられたらいいなと思ってる>と話している。
2017年に元SMAPの稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が退所して以降、ジャニーズ事務所を去るタレントが続出している。主要なところだけでも、2018年は前述した渋谷と山口達也、2019年は錦戸亮、2020年は中居正広、手越祐也、山下智久、錦織一清、植草克秀が退所した。今年3月には長瀬智也も事務所を離れることが決まっている。このなかに堂本剛の名前が加わることはあるのだろうか。
1 2