
松陰寺太勇Twitterより
お笑い芸人・ぺこぱの松陰寺太勇が「芸人が政治的発言をすること」に言及し、注目を集めている。
松陰寺は1月12日に放送された『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で、10年後の未来予想図について、コンビとしての漫才は続けながらも「単なるお笑いバラエティではない、世界情勢・日本経済・歴史を扱う冠番組をやりたい」と明かした。
さらに松陰寺は<橋渡しをしたいんですよ 若者に 次の世代に何を残していくべきなのか>と述べ、お笑い芸人が政治等について話すと「お笑いだけやってろ」という声が飛んでくることについても<それも僕違うと思っていて、意見は持ってていいんじゃないか>と熱い思いを語った。
なお、相方・シュウペイによると、松陰寺はTwitterの裏アカウントで持論を呟いたり、政治家に自分の意見をリプライし、ブロックされたこともあるという。
2月14日の『サンデー・ジャポン』(TBS系)では、体調不良のため休養をとっている爆笑問題・田中裕二の代打MCを松陰寺が務め、番組では松陰寺の「バラエティ以外の番組をやりたい」という一連の発言をピックアップした。
松陰寺は件の発言の背景にある考えを問われ、次のように語った。
<昔に比べてそういうこと(政治的なこと)言う芸人さんが多くなってきたじゃないですか。今はそういう(「芸人は政治を語るな」という)反対意見があるとは思うんですけど、「こうあるべきだ」じゃなくて「こういう意見もあるよね」じゃあその理論を戦わせて、みんなで同じ方向、前を向けていけたらなとか、議論を戦わせることすらいけないという風潮は、ちょっと僕は寂しいなって思います>
この発言にスタジオでは「かっこいい」と称賛の声が漏れていた。
Twitter上では、やはり「お笑いに政治の話を入れないでほしい」と否定的な声も根強いものの、「芸人が政治の話をするって何がダメなの?」「素敵な姿勢だと思う」「ぺこぱがMCを務める情報番組を見てみたい!」と松陰寺を応援する声も少なくない。
政治は誰にでも関係のあることであり、お笑い芸人に限らず、語ってはいけない人などいない。最近ではお笑い芸人がワイドショーでコメンテーターを務めることは珍しくなく、政治についてコメントするシーンもしばしば見られる。まさに『サンデー・ジャポン』では爆笑問題が笑いを取り入れながら、政治や社会問題に言及している。
また、YouTubeで注目を集める「せやろがいおじさん」も、風刺的に笑える要素を取り入れて政治に物申す動画を公開して人気だ。「笑いを取り入れながら政治を語る」というお笑い芸人ならではの表現も浸透しつつある。
メディアを通して見た姿が「本当」かはわからない
ぺこぱといえば、「ツッコまないツッコみ」が特徴で、「人を傷つけないお笑い」と評価されている。多様性を尊重するネタは、いわゆるリベラル的な考えを好む人からの支持も厚い。
しかし以前、松陰寺太勇の裏アカウント「松井ッター【ぺこぱ】」(@yutamatsui1109)での過去の呟きが物議を醸したことがある。松陰寺は、2016年3月に<青山繁晴さん聴きながら、ちょっと8キロ走ってくる>、2017年10月には<虎ノ門ニュース見なきゃ!!>、2018年8月に「靖国神社を参拝した」といった投稿をしており、ネット上では「ネトウヨなの?」「がっかり……」といった声も出た。
ただ、松陰寺がどういった意図で当該ツイートをしたのかは本人にしかわからず、過去のツイートだけを根拠にその思想を決めつけていいのかは疑問である。
一方でメディアを通じて見えている部分だけで、人柄を決めつけたり、期待を寄せすぎたりするのも間違っているのかもしれない。松陰寺は以前、『QJWeb』のインタビューで、<笑いを生むために「ボケてツッコむ」をさらに裏切りたいってことで行き着いたスタイルであって、優しさ先行では別にないんですよ>と答えている。本人が表明したわけでもなく、勝手に視聴者が仮託したイメージから「自分の期待したような人ではなかった」と幻滅してしまうのも、一種の暴力的な側面があるのかもしれない。
いずれにせよ、松陰寺がどんな考えを持っていても、お笑い芸人が政治を語ることは否定されることではないし、政治を自分ごととして議論する姿勢は重要だろう。日本ではまだ「芸能人は政治を語るな」「知識がないなら政治を語るな」などといった声が飛んでくることは決して珍しくなく、誰もが政治について語りやすい土壌が必要だ。