
田村淳Instagramより
『グッとラック!』(TBS系)でのコメンテーター・田村淳氏の言動が物議を醸している。
森喜朗氏の女性蔑視発言を連日に渡り取り上げてきた『グッとラック!』。2月5日放送では、前日に開かれた森氏の謝罪会見について話す中でコメンテーターのフワちゃんがくしゃみをする場面があった。すると、田村氏は<森アレルギー>とツッコミ、フワちゃんが<森多くない?このスタジオ>と返し、スタジオで笑いが起きた。
一連の流れにTwitter上では、「○○アレルギーって子どものいじめと同じでは」「差別の話してるのにその言い回しは不適切」と批判の声が上がった。
この件について、2月14日に田村淳氏は自身のYouTubeチャンネルで説明。「森アレルギー」という言葉を使ったのは、フワちゃんがくしゃみをし、生放送の本番中だったので助けてあげなきゃとの思いからだったと説明したものの、<その場でぽっと出てしまった言葉ですけれども、森さんからしたら気持ちの良い言葉じゃなかったと思います>と謝罪。
また、番組内で感情が昂り森氏のことを呼び捨てにした件についても、その場で撤回・謝罪しており、<失言というか失敗はあります。その中でも悪いことは悪いと自分自身も思いたいですし、反省して次に活かしていきたいと思っています><自分が悪いことしたと思ったらしっかりと反省して二度とそういうことがないようにということは心掛けたいと思います>と語った。
一方で、<今回の森さんに対して僕は罵詈雑言をぶつけてない><まだ新しい会長は選ばれませんけれども、ちゃんと組織委員会が組織として機能しているかというところに僕はもう目が行っているので、森さんを引きずり下ろすとか、森さんに汚い言葉を投げかけるとか僕は一切やっていません>と弁明。この発言に対して、コメント欄には「“森アレルギー”は罵詈雑言じゃないのか」「言い訳にしか聞こえない」と否定的な意見も寄せられている。
2月15日放送の『グッとラック!』でも、田村淳氏は5日の放送での自身の発言について<確かに差別を助長するような言い方を僕もしたなと思ってすぐに反省しました>とコメント。
MCの立川志らく氏は<「森アレルギー」ぐらいはコメンテーターとしてはどうなのかってあるけれども、コメディアンとしてはいくらでもありというのが私の中ではありますよ。そんなこと言ったらお笑い人は何のギャグも言えなくなっちゃう。お笑いって時には人を傷つけることもあるしね、色々なパターンがあるから、「森アレルギー」だってどっとウケればね、で、攻撃受けてきたら「シャレのわからないやつ」だなって一言(いえばいい)> と田村淳氏を擁護した。田村氏も<舞台だったらなんてことないと思うんですよね>と、志らく氏の意見に賛同した。
“ネタ”が笑えないのは、受け手の問題なのか
※以下、ヘイト表現が含まれます。
批判をする際に皮肉や風刺で笑いをとることはあるが、病気や身体的特徴などに関わる言い回しは差別的な表現になることが多い。今回の「森アレルギー」という言い回しは、森氏の女性蔑視発言を批判する文脈としても、フワちゃんのくしゃみをカバーする目的だったとしても不適切ではなかったか。
立川志らく氏は「コメディアンならあり」と言っていたが、コメディアンでも差別的な表現で笑いをとることは歓迎できない。「お笑いは人を傷つけることもある」という点も、最低限、差別的な要素を取り入れないことは可能なのではないか。
また、志らく氏の「シャレがわからないと言えばいい」と聞き手の問題にしてしまう趣旨の発言にも同意できない。今月13日夜、福島県沖震源の最大震度6強の地震があったが、地震の後、Twitter上では「朝鮮人が井戸に毒を投げた」とのデマ・ヘイトが拡散される。当然、注意する声が多数出たが、それに対して「ネタなのに冗談が通じない」「ネタなんだから本気にするな」と揶揄する人も見られた。
しかし、注意をする側も冗談だということは承知の上で、ネタにしてよい内容ではないから怒っているのだ。関東大震災ではデマによって朝鮮人や中国人が虐殺された。発信者は面白いと思っていた内容が批判された場合に「シャレが通じない」と聞き手の問題にする行為は、差別発言ですら「笑えない側が悪い」ことにされる恐れがある。
ほかにも数年前までは性暴力報道に「エロい」「風俗行けばいいのに」「被害者はかわいかったの?」などとネタ化するコメントがつくことは珍しくなかった。今でも男性の性被害や同性からの性被害報道には揶揄するコメントが多数見られる。
時代の変化により問題視されることが増え、発信側は戸惑う場面もあるかもしれない。しかしそれは、笑いの裏で尊厳を傷つけられる人がいたことが可視化されたということだ。
皮肉や風刺と差別的表現は異なる。「受け取り方の問題」と責任を放棄するのではなく、発信する側の責任から逃げず、笑える表現を追求してほしい。