Qアノンとドイツの極右「帝国市民」の繋がり コロナが加速する陰謀論の蔓延と分断

文=河内秀子
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自由を制限されることへの懸念や不安が、陰謀論者と極右と左派をつなぐ

 ロックダウンが始まると、予想通り「政府の新型コロナウイルス感染拡大防止対策は基本法に定められた行動の自由を制限するものだ」とする抗議デモが始まった。しかし、その運動に集まった人の顔ぶれは、通常のデモとは異なる、奇妙な多彩さを持っていた。

 4月4日、首都ベルリンではローザ・ルクセンブルク広場でデモが行われていたが、その中心にいたのは元ベルリン・ブランデンブルク放送のレポーター、ケン・イェブセンだった

 ホロコースト否定と陰謀論を展開して、2011年にベルリン・ブランデンブルク放送を解雇され、サイトとYouTubeチャンネル「KenFM」をスタートしたドイツの陰謀論シーンではよく知られる人物だ。イェブセンと近しい右派ポピュリストや反イスラーム愛国主義者らが基本法を手に「我々こそが人民だ!」と叫ぶ。しかし同じ広場には、環境保護団体のメンバーや、緑の党や左翼党の支持者などもいる。

 ドイツ政府のウイルス感染拡大防止対策に抗議する運動はあっという間にドイツ中で大きくなり、ロックダウン緩和後の5月9日、ベルリンで約1200人、ミュンヘンで約3000人、シュトゥットガルトでは約1万人が集まった

 ベルリンではマスク着用やソーシャルディスタンスを守らなかったために、警察が解散を呼び掛けたが配慮がみられず、最終的に逮捕者が出る騒ぎに。その中には数多くの陰謀論者や極右、フーリガンなどのグループも見受けられ、ジャーナリストは「嘘つきメディア」としてブーイングや脅しを受けた。この頃、ドイツでのパンデミックはおさまりつつあり、4月はじめに日に6000人ほどだった新規感染者数も600人前後となっていた。

 この後もドイツ各地で同様のデモが行われ、その動きは膨れ上がっていく。

制限が緩和されても、「自由を剥奪する政府と戦う勇者」という物語から離れられない人たち

 実は6月末には、接触制限は完全に解除されて飲食店なども再開し、デモなどの集会も州によっては人数制限があるもののほぼ全面的に許可されていた。その代わりに1,5mのソーシャルディスタンスをできるかぎり保つことや(病院、学校や公共交通、美容室などは例外)、公共交通でのマスクの着用義務などの措置が導入されていた。

 懸念されていた行動の自由の制限など、権利の侵害はなくなったように思えるが、反コロナ対策措置デモでは、「マスクは言論の自由を阻む口輪」、「コロナ感染者は思ったより少なかった。大して危険なウイルスじゃなかったのに、ドイツ政府は過剰な措置を行った」と批判の声が飛ぶ。保健相が再三ワクチンの強制はしないと発表、約束し、まだワクチンすら市場にないのに「ワクチン強制に反対」の声が上がるなど、デモ参加者の主張が、徐々に論理を逸してきたような印象を受ける。

 そして8月1日。

 ベルリンで開催された「パンデミックの終焉 ターク・デル・フライハイト(自由の日)」のデモにはドイツ中から、約2万人が集まった。主催者からは、マスクをせず抱き合おう、などと呼びかけがあり、コロナ対策措置は全く無視。そして8月29日の「シュトルム・アウフ・ベルリン(ベルリンに突撃せよ!)」が、準備されていったのだ。

 ちなみにこの2つのデモの名前は、レニ・リーフェンシュタールが監督したナチスのプロパガンダ映画「自由の日:我らの国防軍 Tag der Freiheit – Unsere Wehrmacht」や、1923年にヒトラーらが起こしたクーデター未遂事件の際のモットー「ベルリンへの行進 Marsch auf Berlin」との類似性が指摘されている。

 ホロコースト否定派、極右、陰謀論者、そして掲げられるモットー……いったい誰がこの運動の後ろにいるのかが、垣間見えてきた。

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