Qアノンとドイツの極右「帝国市民」の繋がり コロナが加速する陰謀論の蔓延と分断

文=河内秀子
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陰謀論者と極右、ヒッピー。彼らをつなぐものは何なのか?

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プラカードには「コロナ独裁政権」と書かれている(撮影:河内秀子)

 筆者は、8月1日の「自由の日」デモを実際に目にしたが、一括りに「xxのデモ」と表現できない奇妙なカオスが広がっていた。

 反ビル・ゲイツ、反ワクチン、ティンホイルハットをかぶった陰謀論者がいるかと思えば、マハトマ・ガンジーの旗を振りながらピース!と叫ぶ人もいる。しかしその横には、ドイツ帝国の戦争旗がはためく。メルケル首相やウイルス学者を刑務所送りにしろ!コロナ独裁政権に反対!というプラカードの横に、平和の鳩とハートマークが描かれた看板が並ぶ。ドイツ連邦議会前の緑地には極右「帝国市民」が集まって、帝国復興を望む!という演説が始まっていた。取材を試みるレポーターや、警備の警察官にわざとマスクなしで近づいて唾を飛ばしたりと、挑発する人がいる。その後ろには「オルタナティブメディア」がカメラを構える。

 参加者に極右やQアノンといった陰謀論者が少なくないことは、デモに多くはためく旗のモチーフからも見て取れたが、ネオナチのデモとも様子が違う。誰もがマスクを外して、ソーシャルディスタンスを取らず、好き勝手に主張をする。「ベルリンの壁崩壊以来最大の、自由をのぞむデモ」だと感激して語る人もいた。

「不安を抱える一般市民」にしのびよる、極右と陰謀論の影

 「極右は、新たに「反コロナ対策措置デモ」に標的を定め、デモをする人たちの怒りや不安を利用して、自分たちの人種差別的な思想やシンボルを広めようとしています」と言うのは、ミヒャエル・ブルーメ氏だ。南ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州で反ユダヤ主義担当官を勤める人物で、昨年3月からは陰謀論についての疑問や歴史を解説するPodcast「陰謀論についての質問」をスタートしている。2021年2月、メールにてインタビューに答えてもらった。

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(c)die arge lola

 よりによって、歴史教育が徹底されているはずのドイツで、なぜ極右、人種差別主義者や陰謀論者が勢力を伸ばしているのか。人々の抱える不安、また新しいメディアがそれを可能にしたと、ブルーメ氏は分析する。

「ドイツはたしかに、ナチスという過去にしっかり取り組んできたと思います。反ユダヤ主義は減少しつつあるのですが、ヒトラーとナチスは、ユダヤ人がイスラエルを建国するためにホロコーストと戦争を始めることを強制させられた、というような陰謀論を主張する人も少なくありません。インターネットによって、このような危険な陰謀神話ー私は“陰謀論“は科学的な理論ではなく、悪者は誰で誰の責任なのかという神話のような単純な説明だけを求めていると思うので、“陰謀神話“という言葉を使うのですがー を広め、人々の目を現実からそらし、外界から遮られた陰謀神話のカプセルの中に誘い込むことは、とても簡単になりました」

 Facebook、WhatsApp、Telegramなど、陰謀神話が流布されているSNSに登録すると、一日中ずっと「自分が信じる世界(陰謀論)」が正しいのだという証明が手元に届き続ける。ハマるのは簡単だ。

 ウイルスという目に見えず、わかりにくいものを説明するために、神話が必要なのだろうとブルーメさんは言う。神話そのものは悪いものではなく、時には神や愛といった数字で説明できないものを理解する手がかりとなるが、陰謀論の場合は、自分が抱えている不安を架空の敵に責任に押しつけることで気持ちを軽くする、もやもやと形のない不安から目を逸らし、敵と定めたグループを実際に攻撃することで不安が解消したような気になるのだと。

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