3時のヒロインを「超濃厚フェミニズムトリオ」といじった『水ダウ』。フェミニストコントから10年、根深い問題

文=田口るい
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 2月17日に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、フェミニズム・フェミニストを“いじる”シーンがあり、ネットで批判を集めている。

 この日の番組では前半で、ネタ番組で登場する際に使われる出囃子に乗せたキャッチフレーズが予想外の内容だった時、芸人はどう反応するのかを検証する「ネタ番組でつけられたキャッチフレーズどんなにしんどいモノでも渋々受け入れちゃう説」を放送。問題視されているのはお笑いトリオ・3時のヒロインにつけられたニセのキャッチフレーズだ。

 3時のヒロインは最初、<男社会に喝!女性差別絶対反対!超濃厚フェミニズムトリオ!3時のヒロイン>というキャッチフレーズを聞き、驚いたのか固まってしまった。ただ、スタッフの手前「そう見えてたらこれでいいかなって感じです」「気にはならないです、まったく」と受け入れる様子を見せた。

 しかしスタッフがいなくなると、メンバーは「あんま聞いたことないお笑いのキャッチフレーズ」「危険かもしれないですね」「『もうちょいポップにしてください』って感じにする?」と、件のキャッチフレーズに違和感を覚えていることを打ち明け合う。

 その後、スタッフから「もう1パターン、直接的じゃないのがあったので」として、<ズバッと鋭く論破論破論破!男社会にタックルだ!令和のトリプル田嶋陽子!3時のヒロイン!>という新たなキャッチフレーズが発表され、ネタばらしされる……という流れだった。

 この展開にネットでは「フェミニズムいじり最低」「フェミニズムって芸人界にとってはネタなの? 嘲笑の対象なの?」「男社会でただでさえ生きにくい女性の芸人に対して、フェミニズムを悪い意味としての使い方でネタにし、いじったりするの良くない」と、批判が相次いでいる。

 先日は森喜朗元首相が<女性理事を選ぶってのは、文科省がうるさく言うんです。だけど、女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります>と女性侮蔑の発言をしたことが問題になり、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長を辞任したばかりだ。収録はこの騒動より以前だった(昨年)と見られるが、「よりによって今フェミニズムとか」「随分とタイムリー」という声も上がっていた。

田嶋陽子とインパルスの「フェミコント」

 テレビというメディアでフェミニズムがネタにされることは今に始まったことではない。そもそも、3時のヒロインに使われた「トリプル田嶋陽子」というフレーズだが、田嶋陽子氏は法政大学の教授を務めていた1990年代に『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)での議論の様子で有名になり、“喧しいフェミの女”として散々からかわれ、叩かれた。

 また、『エンタの神様』(日本テレビ系)でもインパルスがコントでフェミニズムを揶揄するような表現をしていたことがある。

 件のコントでは、堤下敦扮する男性幼稚園教諭と、板倉俊之扮する女性園長が登場。男性幼稚園教諭が園児に「桃太郎」の絵本の読み聞かせをしていると、女性園長は主人公の「桃太郎」が男であることについて「主役はいつだって男だっていう固定観念が危険だって言ってるわけ!」とヒステリックにまくし立てる。桃太郎の敵である鬼についても「あなたはわかってるかもしれないけど、子どもたちはわかってないから。『鬼は女性を虐げてきた愚かな男どもの象徴だ』ってことをカッコ書きで言ってあげないと伝わらないから!」と喚いて、笑いを取っていた。

 終盤、男性幼稚園教諭が結婚の話題を出した瞬間、女性園長は「ふざけんなテメー! 結婚イコール幸せじゃないぞ! 全然わかってねえだろうがよ! こっちの言ってることをお前よぉ……」と激高して男性幼稚園教諭を引っ掻くが、「園長、怒らなければキレイですよ」と言われると「あなたとはうまくやれそう……」と照れながら去る。そんな女性園長を見て、男性幼稚園教諭が「あいつモテねえだけだろ!」と吐き捨てるというコントだった。

 このコントは10年以上前に披露されたものだが、2010年代からはジェンダー平等や女性のエンパワーメントについてメディアで取り上げられるようになっている。さらに、女性の管理職を増やす、仕事と育児の両立のためにテレワークを活用するなどして、女性のエンパワーメント推進に取り組む企業も増えた。

 ただ、そんな中でも森喜朗氏の発言とそれを擁護する声がそれなりに多くあったこと、そして今回の『水曜日のダウンタウン』の企画を見る限りでは、まだ“ものいう女性”を茶化したい人々は少なからずいるようだ。フェミニストが改善を試みているのは多くの女性にとって切実な問題だが、一方で彼らにとっては「男社会に喝!」「ズバッと論破論破論破!」と揶揄する対象であり、「モテないがゆえに男嫌いなだけの女」なのだろう。元首相の発言もバラエティ番組のいじりも、社会的な影響力は決して小さくはない。なぜフェミニストが声を上げているのか、その切実さをもう少し理解しようという気にはなれないものだろうか。

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