菅首相長男が暴いた菅政権の本質 「自助」強いられるのは国民だけ、身内には手厚い「共助」「公助」

文=ダースレイダー

社会 2021.02.20 17:00

Getty Imagesより

●ダースレイダーの「小学生からやり直せ」(第2回)

 既得権益の打破! まずは自助! 叩き上げ! 世襲制限! 勇ましい限りである。菅義偉首相はこうした看板を掲げて政治家としての覚悟を見せてきた。最後は生活保護。この発言の冷徹さに驚いた人も多いと思う。自分の意見は曲げず、反対するやつは飛ばす……。

 「とにかく闘うのだ!」そんな緊張感で溢れた社会をイメージしているのだろうか? そもそも菅首相は国家観を提示していないから想像するしかないのだが、誰も支え合わず己の力で闘争に明け暮れる『北斗の拳』のような世界が頭に浮かぶ。そんな世界を力でねじ伏せ君臨するラオウのような首相……。

 だが、そんな世界に救世主が現れた。ケンシロウ、ではなく菅首相の長男、正剛氏である。

 2021年2月4日に発売された「週刊文春」(文藝春秋)によるスクープで一気に注目を集めた彼は東北新社メディア事業部の趣味・エンタメコミュニティ統括部長である。

 2020年の年末、その彼が衛星放送の許認可に関わる総務審議官(総務省ナンバー2のポジション)への就任が確実視されている谷脇康彦氏、情報流通行政局長の秋本芳徳氏とその部下の湯本博信氏らに食事を奢り(総務省側はのちに返金したと主張)、タクシーチケットに高級パンまで手土産として渡していたのだ。16日の衆院本会議で武田良太総務相は、正剛氏と会食した幹部4人を処分する考えを示した。

 僕が時事芸人のプチ鹿島氏と配信しているYouTube番組『ヒルカラナンデス』では、この高級パン(父親はパンケーキ)に注目して正剛氏に「菅パン」というニックネームを付けた。この菅パンがなぜ救世主なのか?

菅首相長男が東北新社に入った経緯

 彼は民間企業の部長職でありながら許認可官庁のトップクラスと何度も会食を重ねている。2016年から2020年の間に延べ12回だ。そもそも正剛氏は菅首相が総務大臣の時に25歳の若さで父親の秘書官を務めている。

 総務大臣時代の菅氏といえば、反対する担当者を飛ばしてまでふるさと納税政策を実現したり、NHK人事に介入するなどして現在の姿勢の基礎を築いている。

 首相になってから掲げた携帯料金値下げという人気取り政策も総務省案件で谷脇審議官が対応しているという。つまり総務省は菅首相にとっての「地盤」に当たるのだ。

 この頃に秘書官を務めていた正剛氏はその後、東北新社に入社して総務省担当になる。この東北新社創業者の植村伴次郎氏は菅首相と同郷の秋田出身。菅首相は植村氏を尊敬していて、伴次郎氏の長男で社長だった徹氏(2020年逝去)は菅首相を応援している。

 そんな東北新社に入社した正剛氏は総務省幹部と会食を重ねる中、2018年には同社の「囲碁将棋チャンネル」を総務省にCS放送業務として認定してもらっている。認定された12社16番組で唯一ハイビジョン未対応にも関わらず、だ。そして2020年の会食直後には同社「スターチャンネル」の認定が更新されている。

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ダースレイダー

2021.2.20 17:00

1977生まれ。東京大学に入学後、中退。2000年にヒップホップユニット・MICADELICのメンバーとしてデビューした。
2010年に脳梗塞で倒れ左目を失明。以降は左目の眼帯がトレードマークとなっている。
現在は音楽活動のみならず、執筆・YouTube配信、イベントなどを通じ社会問題について精力的に発言中。
主な著書に『ダースレイダー自伝NO拘束』(ライフプレス)、『MCバトル史から読み解く日本語ラップ入門』(KADOKAWA)などがある。

twitter:@DARTHREIDER

公式YouTubeチャンネル:DARTHREIDER

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