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加齢とともに誰でも増えていく「白髪」。最近はあえて染めずにグレーヘアでありのままの姿を見せるのが粋だという風潮もありますが、あれは放っておけば綺麗なグレーヘアになるわけではありません。この連載では30代前半から20年近く白髪と付き合ってきた女性ライターが、白髪の扱いに悩む世代へ向けて発信します。
白髪はどうして抜いてはいけないの? ファッションカラーから白髪染めへ、移行期の悩みと重宝したアイテム
加齢とともに誰でも増えていく「白髪」。最近はあえて染めずにグレーヘアでありのままの姿を見せるのが粋だという風潮もありますが、あれは放っておけば綺麗なグ…
更年期世代となり、髪がスッカスカのパッサパサに
さて40歳頃から “白髪染め”デビューした私(それまでの白髪についてのあれこれはこちら)。白髪染めをする際の私のオーダーはただひとつ、「できるだけ明るめの色で染めてほしい」であった。
それからというもの、美容院で1ヵ月半から2ヵ月に1度の頻度で白髪染めを行い、合間には自宅で目立つ白髪をケアするようになった。最初は市販の白髪染めを使っていたのだが、途中からはテレビの通販番組で購入した“髪に優しい”とうたわれる白髪染めを頻繁に使用するように。まだ年齢的に、周囲に白髪染めをしている、という友人が少なかったこともあり、「私、白髪なんてありませんよ」という涼しい顔をしながら、内面では「1本の白髪も許すまじ」とやっきになって白髪を撲滅していた時期である。
そして46歳になった頃のこと。ある日、友だちから送られてきた一枚の写真に写る自分を見て愕然とする。髪がまるで……トウモロコシのひげのような有様だったのだ! 黄色っぽく、スカスカでパサパサ。写真から目をそむけたくなるも「いま逃げてはいけない、現実を見ろ」と自分の心の中の警報機がビービーと鳴った。
もともと髪質は子どもの頃から決して良いとは言えないものだった。くせ毛で、艶がなくパサつきがち。そのうえ猫毛で毛量が少ないときてるから、まぁなにをしてもまとまらない。ツヤツヤとかスルスルの髪というワードは、私の人生には縁遠いものだった。
スマホに送られてきた写真を最大限に拡大して考えた。髪は本当にコンプレックスで、これまで一度だって美しい髪だったことはない。でも、それにしてもなぜにここまで……。ひょっとするとあれは更年期に突入し始めたというサインだったのかもしれない。更年期について学び、メノポーズカウンセラーという民間資格を持ついまの私なら、そう考えられる。
更年期に入ると急激に減少する女性ホルモンのエストロゲンは、髪や肌の艶、ハリに大きな影響を与えるもの。だから、多くの女性は40代に入るとうねりやパサつきなど髪の変化に悩まされてしまうのだ。だが、当時の私は更年期に対する知識はゼロ、「女性ホルモンが減ってきたから、髪質も変わったんだな」なんて結びつけることはできなかった。ただ「なにかほかに白髪を染める方法はないものか」と危機感を覚えたのはたしかだ。
いまからまだほんの7年ほど前のことだけれど、その頃はいまとは比べようもないほど「白髪染め」に関する情報が少なかった(更年期についても)。そんな少ない情報の中で「これを試してみたい」と思えたのが、ヘナ。草木の汁を原料にした薬剤で髪を染める方法である。
気になっていたヘナ染めにトライするも色味と匂い問題に直面
そこで私はネットだけではなく周囲にも聞きまくり、「ヘナ染めが得意」という美容院でヘナ染めを試してみることに。その際、美容師からは「髪がここまでスカスカになったのは、ジアミンアレルギーだからだと思う。今後ケミカルなものは使っちゃダメ」というアドバイスがあった。パサパサ、スカスカに悩み、髪の1本1本が、たとえそれが白髪といえどもどんなに大切なものなのかと痛感していた私は、その言葉を胸に刻み込み、盲目的に信じることになる(後に、一概にそうとも言えないのでは? と思うことになるのだが……)。
そこから約1年半はヘナで白髪を染め続け、自宅ケアにも市販のヘナを使うように。結論からいうと、とうもろこしのヒゲ状態だった髪はかなり改善された。スッカスカだった髪にだんだんとコシが出て、艶も出るようになったのだ。髪にコシが出るだけで、毛量は少なくてもふわっと膨らませることができるので、目くらましになる。ヘナにしてからは、「髪が綺麗になった」と周囲からも言われるようになったほどだ。
「噂通り、ヘナは髪にとてもいいものだ」という実感は持てた。持てたのだけれど……。どうしても私には耐えられないことが2つあった。
ひとつめは、匂い。先にも書いたが、ヘナの原料は草木の汁である。なので、ヘナで髪を染めると、畳のような匂いというか青汁のような匂いというか、なんともいえない独特の香りが髪と頭皮から漂うようになる。草いきれの匂いともいえる。染めている最中だけではなく、染めてからもずっとその匂いは続くように感じた。いつも自分の頭付近からモワッとヘナの香りが漂うのだ。
とくに辛いのは梅雨や真夏の高温多湿の時期。ヘナと自分の頭皮の匂いがミックスされて「私、まるでお風呂に入っていない人のような匂いがしてない?」と四六時中気になって仕方ない。誰かに指摘されたことはなかった。なかったけれど、自分の匂いに自信が持てないというのは、なんとも辛いもので、大げさでなくQOL(生活の質)が下がる。とくに運動中に汗をかいたときが、キツい。頭から立ち上る匂いが気になり、運動にも集中できず「私、お風呂ちゃんと入ってますよ~。髪も洗ってるんですよ~。これはヘナの匂いなんです!」と、聞かれもしないのに大声で言って歩きたかったほどだ。
ヘナで耐えられなかったことの2つめ。それは色味である。新しい美容院に変わり、最初に「髪色は明るいのが好き」と話したせいか、ものすごくオレンジ色が強い色味で染められてしまったのである。誰が見ても「髪がオレンジ色っぽい人」になった。ヘナ臭さは指摘されたことはなかったが、この「オレンジ色」については何人かから指摘を受けた。「すごいオレンジなんだけど、それはわざと?」と。
オブラートに包んでいるが、本当は「ちょっと変よ」と言いたいんだろうなと推測できた。むろん私も自分で気がついていなかったわけではない。でもあの頃の私は髪を元気にすることが最優先課題だったので、「オレンジっぽいけど、これも髪が元気になる過程。仕方ない」と目をつぶっていた。「染めて数日経つと落ち着くから、オレンジも気にならなくなるはず」との美容師からのアドバイスもあり、それも信じていたのだが……落ち着くどころか、回を重ねるたびにどんどんとオレンジ味が増していった。
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