ムロツヨシ、スタッフへの「無茶ぶり」がパワハラに当てはまる理由

文=wezzy編集部
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ムロツヨシInstagramより

 ムロツヨシが撮影現場でのパワハラを報じられている。2月16日発売の「週刊女性」(主婦と生活社)によれば、ムロツヨシは撮影現場でスタッフに対して理不尽「無茶ぶり」を行っているのだという。

 記事によれば、ムロツヨシは若手スタッフを相手に突然「いまから○○くんがおもしろいことやりま〜す」などと振り、一芸をやらせているそうだ。

 背景には、ムロツヨシ自身も若い頃に先輩の俳優やスタッフから「なんかおもしろいことやれよ」と言われ、それに応えてきたことで成長してきたという体験があるのだという。

 この報道内容が事実だとしたら、ムロの言動は「パワハラ」に該当する可能性が高いと言わざるを得ない。

 油断した若手の俳優やスタッフに対していきなり「なにか面白いことやれ」と振って発想力・瞬発力・度胸を身につけさせる教育方法は、昔の演劇界では当たり前のものだったのかもしれない。しかし実は、それは「パワハラ」以外のなにものでもない。

 厚生労働省のホームページでは、「職場におけるパワハラの3要素」として以下の項目をあげている。

「優越的な関係を背景とした言動」
「業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動」
「労働者の就労環境が害される」

 前述「週刊女性」記事によると、ムロツヨシがパワハラ的な無茶ぶりを行うのは、福田雄一の手がけるドラマ・映画の撮影現場である。

 ムロツヨシは福田雄一作品には欠かせない俳優のひとりで、福田作品にはもう15本以上も参加している。監督と強固な信頼関係があるムロは、現場では単なる「出演オファーを受けた俳優」以上の力を有していると見ることもできる。

 そうした立場にある以上、ムロツヨシからの「無茶ぶり」は、「優越的な関係を背景とした言動」となる。また、担当している作品と直接は関係ないことから「業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動」でもあるだろう。

 加えて、人前でそのような無茶ぶりを受けることは精神的な苦痛を与えることでもあり、「労働者の就労環境が害される」にも該当するのではないか。

ムロツヨシのセクハラに関する認識も問題に

 ムロツヨシは過去に、セクハラに関して物申したこともあった。

 2020年2月、『川柳居酒屋なつみ』(テレビ朝日系)に出演したムロツヨシは、<時代がハラスメントですから><なにがハラスメントかわからないハラスメントを受けてるんです、ずっと>としたうえで、「スタッフからハラスメントと言われるのが怖いので話しかけるのをやめた」と発言している。

<これが怖い。ずっと言ってきたもん。(撮影の)待ち時間にさ、(スタッフに対して)『ヒマだな。彼氏いるのか、お前は。ん? いるのか? そっかそっか』『いないのか。かわいいのにな』なんて言いながら待ち時間を過ごしてさ、あったじゃない、コミュニケーションが。それはハラスメントじゃない、コミュニケーションだよ、と思いたい。でもみんなが言うからやめてる>
<待ち時間、何も言えないです>

 本当に「なにがハラスメントかわからない」のだとすれば、職場環境を良好にするためのコミュニケーションについて、もう少し深く考える必要があるのではないか。

 ハラスメントの領域を超えないためには、まず自分が職場や業界の中でもっている権力についてきちんと認識し、その力関係を踏まえたうえで相手の心身を害するような言動・行動をしないよう、自分を戒めることが重要だ。

 これはムロツヨシひとりの問題ではなく、日本の映像制作現場に根深く蔓延る問題なのかもしれない。

 2019年にWEZZYでは深田晃司監督にインタビュー取材を行なっているが、深田監督は日本の映画界にハラスメントが残り続けている原因として「長時間労働是正に対する取り組みが不足している」ということと、「そもそも余裕をもった撮影スケジュールを組むだけの予算がない」といった、業界の抱える構造上の問題を指摘した。

撮影現場でいまだに暴力、日本の映画産業ではハラスメントが絶えない/深田晃司監督インタビュー

 『淵に立つ』(2016年公開)で第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査委員賞を受賞するなど国際的に高く評価されている深田晃司監督が、映画の撮影現…

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ムロツヨシ、スタッフへの「無茶ぶり」がパワハラに当てはまる理由の画像2 ウェジー 2019.12.06

 「ものづくり」の現場では、「いい作品をつくるため」を免罪符に、劣悪な労働環境が放置される構造があったのかもしれない。しかし、「いい作品をつくるため」に立場の弱い人が犠牲になってはいけないはずだ。

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