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「黒染めを強要する校則は違法ではない」——そんな判決に衝撃の声があがっている。
大阪府立懐風館高校の元生徒は、生まれつき茶髪だった髪を黒染めするよう強要され不登校になり、府に対し約220万円の損害賠償請求の訴訟を起こしていた。
生徒の母親は入学時に「生まれつき茶髪なので配慮してほしい」と伝えていたものの、学校は黒染めを強要。生徒は痛みやかぶれが生じるほど黒染めを繰り返していたが、「不十分」「学校を辞めるか黒染めするか選べ」と言われ、高校2年生だった2016年9月から不登校になった。
今月16日、大阪地裁は府に33万円の賠償を命じたが、校則で髪の染色を禁止していることは「正当な教育目的があり学校の裁量の範囲である」として違法ではないとされた。一方で生徒が不登校になった後、名簿や座席表から名前を消去したり、机を撤去したりしたことについては「著しく相当性を欠く」として違法と認定した。
なお、元生徒側の弁護士によれば<提出した幼少期の写真には全く触れず、教師たちの証言が裏付けもなく信用されている>と、控訴を検討しているという。
2月24日放送の『グッとラック!』(TBS系)でもこの問題を取り上げ、白熱した議論が繰り広げられた。
スタジオでは、髙橋知典弁護士がこの判決の注目すべきポイントとして、①時代錯誤の茶髪禁止の校則について深く議論されることもなく裁判所が認めたこと、②座席表や名簿からの削除という学校から生徒へのいじめ、と解説。
①について、茶髪禁止の校則の合理性としては、学校の治安を守ることや勉強に集中するためと説明されているものの、「大前提として髪を染めること自体が、治安や勉強への集中と関係あるのか」「そもそもそのルールが必要が議論されるべき」と指摘。
茶髪禁止校則の合理性の理由についても「茶髪の子が登校して、周りの子たちはその子のせいで何か不安にかられたり、何か勉強に集中できない状況があるのかというと、そうではないはず」と疑問を呈した。
コメンテーターの西村博之氏は「地域によっては偏差値の高い学校で茶髪可の学校があるので、そういう学校に行きたければ勉強すればいいだけ。勉強しなくて校則が厳しいところに入ったのは本人の責任」と校則の緩い学校を選べなかったのは“自己責任”と主張。
これに対し、メインコメンテーターの田村淳氏は<勉強ができない人も学校のルールに抑えつけられなければならないって理論は俺はわからなくて、自分は勉強ができなかったから。勉強はできないんだけれども、学びの場所に行って社会に出るための学びをそこでしているわけだから、“この校則おかしいな”っていうのには声をあげていいと思うんですよね>と学力関係なく、理不尽な校則に対して意見を持つことは否定されないと反論した。
髙橋弁護士は②についても説明。学校側が元生徒が不登校になった後に名簿や座席表から名前を消去したことなどから、「結果的に学校に従わなかったことによって排除している」と学校側からのいじめではないかと指摘。
田村淳氏も、時間を守るなどのルールは納得できるとした上で、<学校の先生たちが生徒を押さえつけるために生まれた“ブラック校則”についてはずっと疑問に思っていたし、髪の毛の色を変えたからってなんなんですかって>と意見を述べた。
また、自身が学生時代に茶髪にした際、教師に「先生も白髪染めしてるじゃないですか」と言ったところ「うるさい」と一蹴されたことがあり、<ちゃんと説明してよって思うんですよ。その染め方(白髪染め)はいいのに、なぜ茶髪にしたいという自己主張は認められないのか>と、教師は生徒に校則の合理性を説明すべきと言及。
コメンテーターの星野真里氏は「生まれもった髪の色があるので、茶髪禁止はおかしいと思う。染髪を禁止する校則はあってもいい」と述べた。一方、国山ハセンアナは、自身も小学生の頃から白髪染めで黒染めをしていたといい、「勉強に集中したいから黒染めしていたんですよ。“染めるの禁止です”って言われてたら傷つくんですよ」と打ち明け、染めること自体の禁止には疑問を呈した。
長髪を禁止された男子生徒
近年、こういった理不尽な校則は「ブラック校則」と呼ばれている。番組ではその他のブラック校則についても取材。インタビューを受けた中学3年生の男子生徒は、音楽活動のため10歳から髪を伸ばしているが、男子生徒が通う学校では<男子の髪は襟足が学生服にかからないこと>という校則があり、校長から教室に入ることを禁じられたという。
なぜそのような校則があるのか。番組からの質問に学校側は<身だしなみとして昔からあるルール 詳しい理由は分からない>と回答。
この男子生徒は髪型が自由なフリースクールに通っているものの、友人と同じ時間を過ごしたいため学校側と交渉を重ね、中学2年生から保健室への登校は認められた。当然、他の生徒と共に体育の授業を一緒に受けたり、給食の時間を共にすることはできない。校長からは「髪の毛を切るのが嫌なら他の地域に引っ越せばいい」と言われたそうだ。
ところが、中学3年生になり状況は一転。校長が代わったことにより、「髪を結べば教室で授業を受けていい」と言われたという。男子生徒は「髪の毛を結んで教室に入れるなら最初から結んでいた。中学1、2年生の教室に入れなかった期間を取り戻したい」と語った。
この件についてもスタジオで議論が繰り広げられた。西村博之氏は「音楽と髪の長さは関係ない」とし、「入る前から校則がわかっていたのだから、最初から別の学校に行くとか髪を切るとか選択肢があった」と、生徒が別の学校を選択するか、校則に合わせるべきと主張。
これに対し髙橋弁護士は、高校は受験先を選択するものの、公立の小中学校について基本的には居住地域で進学する学校が決められていることを指摘。それでも西村氏は「私立に行けばいい」と本人が長髪のまま通学できる選択をとらなかったことを責めるものの、コメンテーターのノンスタイル井上裕介氏は「小学校から上がってきた友達と同じ学校行きたいとかあるじゃないですか」、田村淳氏も「成長過程で入学後に校則のおかしさに気づくこともある」と男子生徒の気持ちに寄り添った。
MCの立川志らく氏も「長髪が禁じられる理由について、生徒を納得させるだけの説明を教育者がしなかったのに“ほかへ引っ越せばいい”というのは、教育者としてあるまじき行動ということでしょう」と述べた。
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