
Gettyimagesより
「性の話をもっと気軽にオープンに」をテーマに、性にまつわるさまざまな情報を発信する助産師の性教育YouTuberシオリーヌさん。
昨年5月に夫の“どさんこつくし”さんと結婚報告をしてからは、Twitter上でそれぞれ夫婦としてコミュニケーションをとっていく中での気づきをツイートしています。日頃からお二人は人権やフェミニズムについて会話するなど、対話を大切にされているといい、信頼関係を築けていることが伝わってきます。
パートナーと「話し合いができない」「人権やフェミニズムの話はしにくい」そんな悩みを抱える人が少なくないなか、お二人はどのようなきっかけで社会問題の話をするようになったのでしょうか。話し合いで大切にしていることや、センシティブな問題でも対等に話し合えるパートナーと出会うためのアドバイスなどを聞きました。
シオリーヌ(大貫 詩織)/助産師・性教育YouTuber(左)
総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟にて勤務ののち、現在は学校での性教育に関する講演や性の知識を学べるイベントの講師を務める。 性教育YouTuberとして性を学べる動画(https://www.youtube.com/channel/UC4bwpeycg4Nr2wcrV9yC8LQ)を配信中。 オンラインサロン「Yottoko Lab.」運営。 著書「CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識」(イースト・プレス)
どさんこつくし/看護師・イラストレーター(右)
北海道室蘭市出身のイラストレーター。1997年生まれ。 主に書籍やweb記事等で使用するイラストレーションを手掛ける。得意ジャンルは医療知識を必要とするものや、ジェンダーフリーでポップなテイスト。看護師資格を有し、現在は医療系スタートアップ企業にも勤務している。仕事柄、ウィメンズヘルスが関心事。
「僕自身を否定しているのではなく、社会にある価値観の話をしているんだ」
——お二人が人権やフェミニズムの話をするようになったのは、どのようなきっかけからなのでしょうか。
シオリーヌさん(以下、シオリーヌ):明確なきっかけというよりは、自然に話をするようになったんです。そもそも付き合い始める前から、つくしは私の動画を見てくれていて、私がジェンダーや人権問題に関心が高い人だと知っていました。付き合い始めてからも私の仕事柄、「今、緊急避妊薬でこういうことが話題になってるよね」とか「日本の性教育はここが足りないと思う」とか日常的に話していたので。
どさんこつくしさん(以下、つくし):僕は看護師で、体の仕組みや性にまつわる話も学生時代から勉強はしてて、知識として得られるのはありがたいと思っていましたし、日本の性教育はもっと改善していく必要があると感じていたので、そういった話を聞けるのは楽しいと感じていました。
——ジェンダーや人権の話で、お二人は大枠では同じ方向を向いていると思うのですが、意見が食い違うこともあると思います。話をするときに大切にしていることはありますか。
シオリーヌ:「なぜわからないの?」と責めずに、相手を尊重して話を聴くようにしてます。個人差はあれども、男性として生きてきたのと女性として生きてきたのでは、見てきたものや経験してきたことにギャップがあると思うんです。
といっても、最初から冷静に考えられたわけではなく「そんなこと言うなんてありえない!」って思ってるのが顔に出てしまい、つくしを困らせてしまうこともありました。そういう反応をすることで、相手が「否定されてる」「責められてる」と思うと、心を開いてくれるものも開いてくれなくなってしまう。だんだんとそのことに気づいて、考えに違いがあるのは当然なので「どうしてつくしはそう思うの?」「どういう経験があってそう感じてるの?」と、お互いを理解するために落ちついて話をしようと心掛けるようになりました。
つくし:僕も生理や体のことなど、性に関することは知ってたし話せていたものの、ジェンダーの側面からの「女性ならではの弊害」は見えていない部分が大きかったんです。だから、女性蔑視や男女差別の分野の話は衝突してしまうこともしばしばありました。
自分の中で男子として生まれ育って醸成された価値観を真向から否定されている気持ちになってしまって、「なんでそんなこと言うんだろう」「そんなわけないでしょ」と妻の考えを受け入れられないこともありました。でも妻が何度も伝えてくれて、徐々に「僕自身を否定しているのではなく、今、社会にある価値観の話をしているんだ」とわかってきて、対話ができるようになっていきました。
——話し合いにおいて、お互いが歩み寄れたのには何か理由があるのでしょうか。
シオリーヌ:付き合う前につくしと共通の友人と飲んでいたときに、「次にパートナーを作るならどんな人がいいか」って話になって、二人とも「話し合いを大切にできる人」と答えていたんです。「意見が違って衝突しても、最終的にお互い理解し合って仲良くしたいと思ってる」とわかってるので、諦めずに対話を続ける気力が湧いていました。
それから、つくしは「もういい!」って話し合いを放棄しない人だという信頼があります。歩み寄って話し合えるモチベーションのある人だと信じられるので、この人に話しても無駄とは思わず、対話を続けられています。
——パートナーから話し合いを放棄されるという悩みを持つ女性は少なくないですが、つくしさんは「もういい!」と言いたくなったことはないのですか。
つくし:そうですね、「なんでも話し合いウェルカム!」ということではなく、自分の中で葛藤はありますし、話し合いのテーブルから逃げたり拒否したい気持ちが自分の中にまったくないわけではないです。
男女間に限らず、価値観の違う二人が話し合いをしていたら片方が受け入れられない議題が上がることもあります。でも話し合いの席から立ち、その議題を先延ばしにしたら、またどこかで引っかかりが出てきてしまうかもしれない。「二人で仲良くやっていきたい」という思いが土台にあるので、「話し合いを放棄したい気持ち」と天秤にかけたときに、「仲良くやっていくために話し合いをきちんとしよう」となるんです。
——「二人とも仲良くしたい」という思いが共有できていると、安心して話し合いに臨めそうです。お二人のTwitterを拝見していると、ケンカになってしまうこともあるようですが、どのように仲直りされているのでしょうか。
シオリーヌ:実はこの間、「ケンカのあとの仲直りの仕方」でケンカしたんです(笑)
つくし:どちらが原因ともなくケンカを始めてしまうことはしばしばあって。二人とも「ギスギスした空気を長引かせたくない」と思っているのはわかっているのですが、仲直りのきっかけ作りを妻に頑張ってもらってたことが多くて。妻から「コミュニケーションコストを払わなさすぎるよね」と指摘されました……。
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