
写真:AP/アフロ
「ドイツの極右」と言う言葉を聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるだろうか。
筋骨隆々のスキンヘッズ?社会からこぼれ落ち、やりばのない怒りを移民などにぶつける失業者?独裁的な権威主義に惹かれる人?コロナ禍のドイツに広がった陰謀論支持者は、紋切り型の「ネオナチ」のイメージとは異なるものだ。
2020年8月1日、ベルリンで開催され2万人を集めた「パンデミックの終焉 ターク・デル・フライハイト(自由の日)」そして、8月29日、3万8千人が集まった「シュトルム・アウフ・ベルリン(ベルリンに突撃せよ!)」という2つの大規模なデモ。参加した人からは「いたって平和的なデモだった。メインストリームメディアが報道しているように、極右のデモには見えなかった」という声も聞かれる。
このデモの主催者である「QUERDENKEN(斜めに考える)」を支持している人たちは、いったいどのような人たちなのだろうか。
スイス、バーゼル大学の社会学者オリヴァー・ナハトヴァイ氏が、支持者1150名にアンケートをとり見えてきたその「QUERDENKEN」支持者のプロフィールは意外なものだった。
高学歴、女性、民主主義のゆらぎへの不安、そして”オルタナティブなもの”への支持。
以下は、昨年12月に発表された「コロナ・プロテストの政治社会学」研究の抜粋である。
ナハトヴァイ氏らの研究チームは、ドイツとスイスの「QUERDENKEN(斜めに考える)」の反コロナ対策措置のデモに実際足を運び、また支持者のTelegramグループ内でアンケートを行なって、1150名からの回答を得て、以下のようにまとめている。
38歳以上が75%、女性が6割、大卒が3割以上、専門学校や大学入学資格を持っている人も3割以上と高学歴で、フリーランスが25%と一般的な割合よりも多めだ。また自分が属する場所は、中流以上と答えた人は6割以上もいた。
前回(2017年)のドイツ連邦議会選挙でどの党に投票したか?という質問には、緑の党が最も多く23%、次いで左翼党18%、右派ポピュリスト党AfD15%、メルケル首相が属する保守CDU /CSUは10%となっている。
今年はドイツで再び連邦議会選挙が行われるが、この際に投票したい政党は?という答えで最も多かったのは、右派ポピュリスト党AfDで27%。
次いで、2020年に創立されたdie Basisが18%を獲得している(P10、P 50)。
die Basis党は、自由、権力の制限、注意深さ、集団的知性の4つの柱を基本理念として掲げる政党で、もともとはWiderstand 2020(2020年の抵抗)という名前で、ボド・シフマン、ラルフ・ルードヴィッヒ、ヴィクトリア・ハムの3人が創立した政党が分裂してできた党である。
ボド・シフマンは、政府のコロナ対策措置反対派の中で最も有名な「医師」で、QUERDENKENのデモにも何度も登壇している。耳鼻科医として、QUERDENKENが拠点を置くバーデン・ヴュルテンベルク州に医院を持つ彼は、2020年3月から自らのYouTubeチャンネルで、コロナの危険性を軽視したりPCR検査を疑問視する動画を発信し、注目される人物となった。「マスク着用義務から人々を自由にするため」に、健康診断書を偽造した疑いで何度か家宅捜索が入っている。