【シリーズ黒人史3】Black Lives Matterへと続くアメリカ黒人の歴史~南部再建期

文=堂本かおる

連載 2021.03.11 08:00

 アメリカ黒人史において、日本で最も知られていないのは「南部再建期 Reconstruction Era」と呼ばれる時期ではないだろうか。奴隷制が終了した直後のわずか12年間ほどを指すが、この時代は黒人に選挙権が与えられ、当選する黒人議員も続出した。

 南北戦争に敗れた南部は奴隷制を失い、甚大な経済的ダメージだけでなく精神風土の支えをも失った。質実ともに壊滅状態となった南部を連邦政府が文字通りに再建しようとした時期を南部再建期と呼ぶ。数ある課題の中でも自由人となった約400万人の黒人の処遇が大きな争点となった。

米国初の黒人上院議員と下院議員たち(wikipediaより)

米国黒人史に関わるタイムライン
1619:奴隷制開始
1861 – 1865:南北戦争(1863:奴隷解放宣言)
1865:奴隷制終了
1865 – 1877:南部再建期(*)
1876 – 1964:ジム・クロウ法(有色人種隔離政策)
1954 – 1968:公民権運動(1964:公民権法制定)
*南部再建期は1863年の奴隷解放宣言から始まるとする説もある

 本シリーズ初回で取り上げた「奴隷制」は、現代社会の視点では人権を完全に蹂躙した非人間的なシステムだ。とはいえ米国は当時から法治国家であり、奴隷制も法に則って行われていた。南北戦争と奴隷解放宣言を経て黒人が奴隷から自由人となったのも法に則してのことだった。

【シリーズ黒人史1】Black Lives Matterへと続くアメリカ黒人の歴史~奴隷制

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 だが、南部人にとって奴隷であった黒人を米国市民として扱うなど到底受け入れられることではなかった。同時に元奴隷たちの労働力無くしては経済を維持できず、自由人となった黒人から巧妙に権利を奪って働かせ、搾取する法が作られた。

 その対応策として、連邦は黒人の権利を保障する憲法を作った。以後、米国では黒人の権利にまつわる法の応酬が始まり、特に投票権については現代に至るまで延々と続いている。奴隷制の歴史ゆえに有権者が支持する党派は人種によって大きく異なり、選ばれる政治家によってアメリカの進む方向が180度変わるからだ。現在も文言上こそ直接は黒人に触れず、しかし明らかにアフリカン・アメリカンおよび低所得者の権利抑制が目的の法が作られ続けている。アメリカの人種差別の根の深さを思い知らされる事象である。

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