
GettyImagesより
加齢とともに誰でも増えていく「白髪」。最近はあえて染めずにグレーヘアでありのままの姿を見せるのが粋だという風潮もありますが、あれは放っておけば綺麗なグレーヘアになるわけではありません。この連載では30代前半から20年近く白髪と付き合ってきた女性ライターが、白髪の扱いに悩む世代へ向けて発信します。
白髪はどうして抜いてはいけないの? ファッションカラーから白髪染めへ、移行期の悩みと重宝したアイテム
加齢とともに誰でも増えていく「白髪」。最近はあえて染めずにグレーヘアでありのままの姿を見せるのが粋だという風潮もありますが、あれは放っておけば綺麗なグ…
白髪染めの繰り返しで、髪がとうもろこしのヒゲのように。健康な髪と頭皮のため「ヘナ染め」に変えたけれど…
加齢とともに誰でも増えていく「白髪」。最近はあえて染めずにグレーヘアでありのままの姿を見せるのが粋だという風潮もありますが、あれは放っておけば綺麗なグ…
“黒染めデビュー”後に気づいた「ぺったりした海苔感」
ヘナから、ヘナではない草木由来のノンジアミンの白髪染めでの施術に変更したのが47歳の終わり頃のこと。
新たな白髪染めは、たしかにヘナのような独特の香りはしなかった。その点は嬉しかったのだが、ただ、カラーがまったく選べなかったのは辛かった。
それでもヘナで染めていた頃のオレンジ頭がトラウマとなっていたこともあり、「オレンジよりはマシか」とカラーが選べなくても自分を無理に納得させたところがある。
その頃になると私の周りでも段々と「最近は白髪が増えて、白髪染めで染めているの」という人たちが増え、以前は明るかった髪色だった人も、みんなどんどん暗めの髪色になってきていた。そのせいもあるのか、あの頃の私は自分で自分に呪いをかけてしまっていたように思う。「黒い白髪染め=年齢相応=もう仕方ない」という呪いである。ということで、47歳で私もいわゆる“黒染め”デビューを果たすこととなる。
新しい白髪染めで染めれば染めるほど、私の髪はどんどん“黒”が強くなっていった。単なる黒ではない。もうとにかくとことん“真っ黒”な状態になっていったのである。
そこから3年強。ある日、鏡の自分を見て「なんか、頭蓋骨に張り付いた海苔みたいになってない?」と、ハッとする。なんというかこう……真っ黒な髪がものすご~く悪目立ちしてしまっているように思えたのだ。その頃には50歳をすぎていた。肌も当然ながら若い頃とは違い、ゆるみ、たるんできている。それなのに髪は不自然なほどに真っ黒。黒の中の黒。老いてきた肌と黒い髪にコントラストがつきすぎて、それはそれはとてつもなく不自然な気がしたのである。
また、黒くなればなるほど、そして年齢を重ね白髪の比率が増えれば増えるほど、ほかにも悩みが噴出しだした。真っ黒な髪から白い毛が生えてくると……これ、ものすごく目立つ。そらそうだ。皆さま、黒い画用紙に白いクレヨンで線を引いたときのことを想像してみてください。めちゃめちゃ目立ちますよね? つまり私の髪ではそういった現象が起きていたのである。
しかももっと悲しいことに、黒髪から生えてきた白髪、分け目や頭頂部のあたりがちょっとでも伸びてくると、遠目から見たらまるでそこに髪がないように見えてしまうことがある。実際、私もある日自分の写真を見て「分け目に髪がない!」と恐怖に震えたことがあった。よく見るともちろん髪はあるのだが、黒と白のコントラストはそういった目の錯覚さえも起こさせてしまう。辛いったらない。
ようやく美容室をチェンジ、次はヘアマニキュアで白髪染めを
もともと明るめの髪色が好きな私は、それまでも通っていた美容室の担当美容師さんに「真っ黒ではなく少しでも明るく見えるような調合があったら、試したい」と訴え続けてはいた。だが、返事はいつも同じ。「黒く染めるしか方法はない」というものだった。
それでも毎回粘り強く同じことを訴える私に、美容師さんも辟易したのだろう。あるときこんな提案をされる。「市販のカラートリートメントで染めてみる?」と。
それまで自宅でのホームケアでは、カラートリートメントを使用していた。だからよくわかるのだが、あれはあくまで一過性のもの。シャンプーするたびに色落ちしてしまうではないか……(繰り返すたびに徐々にうっすら白髪に色はつくけれども)。それをわざわざ美容室に行ってお金を払ってまでお願いする意味ってある?
美容師さんの苦し紛れのような提案を聞いた私はようやく「もうここじゃだめだ」と思い、美容室をチェンジすることを決意する。遅いよ、もっと早く変えればよかったのに、と思われる方もいるだろう。私も今ならそう思う。でも新しい美容室を探す、というのはなかなかに億劫なものだ。若い頃のようにフットワークも軽くないし、いつのまにかすっかり腰が重くなってしまっていたのである。その重たい腰をようやく上げたのが、たしか51歳の終わり頃のことだったと思う。
その少し前からネットで情報収集をしてはいたので、次は「白髪染めが得意です!」と謳う美容室に行ってみた。そこで提案されたのは「ヘアマニキュアで染めますか?」というもの。藁にもすがる思いでチャレンジしてみた。結果、ヘアマニキュアで白髪は染まることは染まるのだが、“黒染め”のときのように真っ黒には染まらない。表現するのはなかなか難しいが、白髪部分は淡いダークブラウン、という感じに仕上がった。となると、その下にあるのは真っ黒な髪なため、やはり白髪と黒髪の境目が目立ってしまう。色落ちも早いように感じた。「これじゃないな」と感じ、また次なる美容室を探すことにした。
その頃はインスタグラムでも鬼のように検索を続けていた。白髪染めというハッシュタグで都内の美容室の投稿を日々血眼でチェックしていると、いくつか聞きなれないワードに気づく。それは「#白髪ぼかし」「#育てるハイライト」「#脱白髪染め」だ。それらのハッシュタグがついた投稿を読んでみると「白髪染めではなくファッションカラーで白髪を染めましょう」と書いてあるではないか。「ファ、ファッションカラーで白髪が染まるの!? まさか!?」と驚き、そういった投稿をしている美容室に出かけてみた。
ファッションカラーで白髪染めにチャレンジ!
その美容室では最初にひと悶着があった。なぜならば私は前の美容室で言われた「あなたはジアミンアレルギー」という言葉を頑として信じ切っていたからだ。そのため新しく行った美容室でも「ノンジアミンのファッションカラーで白髪を染めたい」と申し出たのだが、「ウチではノンジアミンはやってないんです」という答えをもらってしまう。「え、どうしよう……」ジアミン入りのカラーで染め続けて髪がとうもろこしのヒゲみたいになっていた40代半ばの自分が思い浮かぶ……。でもそこでふっと気がついた。果たしてほんとうに私はジアミンアレルギーだったのか、と。髪が痩せてしまったとはいえ、昔は一度もジアミン入りのカラーで染めてピリピリと頭皮にしみたような経験はなかったじゃないか。
さらに頭をフル回転させて考える。トウモロコシのヒゲ状態になったあの頃はちょうど更年期の入り口。頭皮と髪の変化は女性ホルモンの減少のせいもあったはずだ。48歳頃から更年期について詳しく学んだ私は、ホルモン補充療法を受けることを選択し、それを続けていた。髪がいい方向に変わった理由には、ヘナ効果もあるだろうけど、それだけではなく女性ホルモンが安定したこともあるのでは?
髪が人に与える印象を痛感してからは、ブラシを変え、ブラッシングを怠らず、地肌によいとされる頭皮エッセンスを使って毎日マッサージも欠かさないようになっていた。これまで深く突き詰めて考えることがなかったので、髪の変化をなんとなく「ノンジアミンにしたからよくなったんだな」と考えていたが、でもひょっとするとそれだけではないのでは……? もともとジアミン入りカラー剤でしみることはなかったんだから、ジアミン入りに再挑戦してもいいんでは……? ぐるぐる考えた結果、私は久しぶりにジアミン入りのファッションカラーで染めることを決めた。
その美容室の美容師さんが提案する“新しい白髪染めとは、「ファッションカラーでも調合次第で白髪が染まるので、お好みの色でカラーリングができます。また、生えてきた白髪を目立たせないために、髪に明るい色でハイライトも入れます」というもの。衝撃を受けた。私がずーーっと同じ美容室でモタモタと時を過ごしているうちに、白髪染めは進化していたということなのか……。
詳しく話を聞き、その仕組みに納得した私はファッションカラーで髪を染め、ハイライトも入れた。ジアミン入りだが、まったくピリピリはなかった。やはりアレルギーなんかではなかったのだ。思い込みとは恐ろしいものだと改めて思う。何年も黒染めで染め続けてきたため、すぐには明るい髪色にはならないとのことだった。“黒染め”の薬剤はとても強いこともあり、その名残りを完全になくすには、少なくとも1年はかかるそうだ。黒染め、恐るべし。
施術が終わって鏡に映る自分を見ると、数年ぶりに“真っ黒な人”ではなくなっていた。その日の帰り道は、髪だけではなく心までも軽くなった気がして、やたらと華やいだ気持ちになった。帰り道にファッションビルに寄って、つい洋服なんか買ってしまったりもした。「髪は顔の額縁」とはよく言ったもの、としみじみ感じた2020年の3月。髪はとても重要である。
#白髪ぼかし #脱白髪染め #育てるハイライト、がキーワード
その美容室での施術はカットを含め満足がいくものだったが、いかんせん家から1時間以上かかる場所で相当遠かった。しかも1週間のうちでオープンしている日時が非常に限られていたため、定期的に通うことは難しいと判断、そこに行ったのは1回きりとなる。それからはインスタグラムの#白髪ぼかし #脱白髪染め #育てるハイライト というハッシュタグを頼りに気になる美容室に片っ端から行ってみた。どのサロンでもファッションカラーで白髪を染めてもらい、ハイライトを入れ、髪色はどんどん明るくなっていった。
また、「せっかく美容室を変えたのだから、いろんな意味で自分にしっくりくる1軒を見つけるまで徹底的に粘ってみよう」という思いを持つようになり、ハッシュタグで見つけた美容室を転々とした。そして4軒目にしてようやく「ここがいい!」と思える美容室と美容師さんを発見したのである。東京・表参道にある美容室「SHEA.」で、担当美容師さんは佐藤幸治さんだ。佐藤さんはもうずいぶん前から“脱白髪染め”を掲げており、ファッションカラーでの白髪染めに取り組んでいる。次回は、変化する白髪染め事情について佐藤さんにじっくりお話をうかがってみたいと思う。
今回は最後に、私もチョイスしたヘアマニキュアでの白髪染めについて、佐藤さんにひとことコメントをお願いした。
「ヘアマニキュアでも白髪は染まります。ただ、上に書かれているように真っ黒には染まりませんし、色落ちも早いです。また、白髪は染まりますが、白髪以外には色はつきません。なので、黒染めにしていた方が髪色を明るくしたいならば、ヘアマニキュアは選択肢には入らないかもしれませんね。『髪色は変わらなくてもいいから、白髪を染めて髪にツヤが欲しい』という方にはオススメですよ」(佐藤さん)
たしかに色落ちは早かった……。
<最終回へ続く>