汚部屋そだちの東大生が考える「子どもは親を幸せにするために生まれてくる」思想の罪

文=山田ノジル

連載 2021.03.09 13:00

親と子は別の生き物

――父親と同じ東大に入れ。就職先は「自分が知らない会社」だという理由で認めない。部活も友だち付き合いも、自分が気に入ったものだけ。ここにも自己肯定感の問題を感じました。親の満足のため、子どもをトロフィーチャイルドとして利用する、みたいな。

ハミ山:そうなんですよね。東大という場所には、そうした問題を抱える家庭が多いように思えます。東大に行かせることが親のステータス。子どもがよいものになると、自分がよいものとして社会に受け入れられるということですよね。それもまた、自分を肯定できないから、子どもが社会で認められることで、間接的に自分も世界に受け入れられるみたいな。

――自分が親になった今、お母さんを反面教師にしているようなところはありますか?

ハミ山:いっぱいありますけれどね。すごく単純に「自分がされて嫌なことはしない」というのは基本です。あとは「これをやった方がいいよ」みたいなものは、たとえ自分が思っていても、本当は言っちゃいけないんだろうな~とか。今、2歳の子どもがすごくピアノが好きなんですけれども、私はピアノにぜんぜん興味を持てない。だからちょっと「え~ピアノ~?」みたいになっちゃうけど「この子はピアノが好きなんだ」と受け入れなくちゃなと。つい自分と子どもを同一視しがちですが、他人であり、ほかの生き物だと思わないと……と思っています。そして子どもはなんでも素直に全部信じますから「お空からお母さんを選んで生まれてきた」とか絶対言わないようにしようと思っています。一回そういうふうに思ってしまうと、あとから消すのが大変ですから。

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 親も人間ですから、救いを求めてあがいた結果間違うこともあるのでしょう。しかし親の支配がいかに子どもを蝕むかは、この作品を見ても明らか。見るからにおかしい親でもその異常性になかなか気づけなかったというハミ山さんのケースを考えると、全く問題ないように見えても親子ともに自覚なく依存しあい、親の偏った思想に支配されている子どもは無数にいるのでしょう。洗脳・支配・共依存といった呪いの渦中にいた人の体験を、これからもいろいろな形で追跡し、そして「幸せな育児を手助けするアドバイス」「よりよく育てるために」と謳いながら、支配的な思想を助長するような育児情報を「それ、地獄の入り口や」とツッコミ続けたいものです。

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山田ノジル

2021.3.9 13:00

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。

twitter:@YamadaNojiru

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