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「生理用品を軽減税率対象に!」の署名運動から生まれた団体「#みんなの生理」が、3月4日、「日本の若者の生理に関する調査」の結果を公表した。
調査によると、回答者671人のうち、過去1年間で経済的な理由により生理用品の入手に苦労した経験のある人は20.1%、金銭的な理由でトイレットペーパーなど生理用品でないものを使った人は27.1%、生理用品を交換する頻度を減らした人は37.0%であった。
現在、「生理の貧困」の問題は注目を集めており、3月9日放送『グッとラック!』(TBS系)でもこの問題を取り上げた。
番組は「生理の貧困」を経験した大学生を取材。その学生は昨年3月に新型コロナの影響でアルバイト先を解雇されたという。それまで月10万円の奨学金とアルバイト収入で生活していたものの、アルバイト収入が0になってしまったため、かなり生活が苦しかった。その状況下で生理用品を節約するため、吸水量の多い夜用ナプキンを1日中つけるなど、使用枚数を減らすようにしたところ、経血漏れやかぶれなどのトラブルが起きたそうだ。
この大学生が自身の経験からSNSで生理の悩みについてユーザーに問いかけると、「節約したいので常に夜用ナプキンをつけている」「ティッシュで代用したことがある」、なかには「生理用品の費用を切り崩すため、食事をやめて生理を止めている」との声まであったとのこと。
また、番組の取材を受けた「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは、<抑えられない出費ですし、特に人によっても使う量にバラつきがあるということで、それも分かってほしい、という声も結構寄せられました>と話す。谷口さんは①学校や公共施設に生理用品を無償で提供すること②生理用品を軽減税率の対象にすることを提案している。
3時のヒロイン「売れない頃は生理用品を節約していた」「月1000円でも負担」
生理用品にはどれだけの費用がかかるのか。番組では月に1000円かかるとした場合に、12カ月で年間12000円、生理が40年続くとすると、48万円かかると計算。人によっては生理痛や生理に伴う体調不良により、鎮痛剤や低用量ピルなどの薬を服用するため、さらに費用を要する。
スタジオでは、コメンテーターの福田麻貴(3時のヒロイン)氏が「売れない頃はなるべく交換しないようにしていたことがある」「色々なところを切り詰めていると月1000円でも辛い」と自身の経験を振り返り、<最低限清潔に暮らす権利は誰にでもあるなと(思う)><(生理用品は)確実に手に入るべきだなと思う>と意見を述べた。
同じく3時のヒロイン・ゆめっち氏は「ケチって同じナプキンを長時間使ったり、トイレットペーパーで代用したこともある」と経験を語る。彼女は生理周期をコントロールするために低用量ピルを飲んでいたこともあるそうだが、「結構高かった」と話していた。
※低用量ピルの価格は1シート(28日分)で3000円程度。
ここ数日「生理の貧困」に注目が集まっているが、Twitter上では「300円のナプキンを買えない人は何を食べているの?」「スマホを持っているのに」などという批判的な意見も見られた。
若林有子アナは<こういった声によって、より『我慢しなければいけない』と思う人が出てきてしまうのも問題>と指摘。メインコメンテーターの田村淳氏も、スマホが生活必需品となっている現代に<スマホを諦めて生理用品に替えろというのは暴論だなと思います>と意見を述べ、<(生理用品が)公共の場所で普通に(無償で)置けるようになった方がいいと思います>とコメントした。
コメンテーターでフリーライターの望月優大氏は「生理の貧困」への批判について、①貧困そのものへの無理解と、②男性の生理への理解のなさが問題だと解説。
①については、「スマホを持っている」「ネイルをしている」「食費を削れ」などの批判は、「生理の貧困」に限らず貧困問題において繰り返されており、<結局『貧しくあれ』ということを言っているにすぎない><明日食べるものがないとか、家がないとかってところにならないと『自分が貧しい』ということを言ってはいけない、助けを求めてはいけないという文化が日本をすごく厳しい社会にしている>と指摘した。
②については「根本的に性教育の問題がある」と述べ、<自分が体験し得ない痛みだったり、経済的負担について理解しようとすることが大事>とコメント。また、人によって周期にバラつきはあるものの、毎月約7日間生理があり、それが約40年続くなか、<痛みがあったり仕事に行きづらかったりするということに対する理解が男性の側にないことは、貧困に限らず生理に関してすごく大きな問題だと思うので、それを改めていくのが大事だと思います>と言及した。
ゲストのトレンディエンジェル・斎藤司氏も、「生理用ナプキンを1日に7枚も使うのは知らなかった。なんとなく1日1枚でいいと思っていた」と、VTRを見て初めて知ったことも多かったとコメント。
谷口さんが提案している、学校や公共施設に無償で生理用品を置くことも、軽減税率の対象にすることも法整備が必要になるため、政治家に理解されることが必要だ。MCの立川志らく氏は「国が決めるとなると女性の政治家が少ないのも問題ですよね」と女性議員が少ないことへの弊害にも言及した。
Twitter上でも「小学生の頃、親に初潮が来たことを言えずナプキンを買ってもらえなかった」「自分も苦労した時期があったから、学校や公共施設に無償で置かれるのは賛成」と生理の大変さに共感する声も見られたが、一方で「生理の貧困」を認めたがらない声も根強く見られる。
「私は食費を削って我慢していた」「髪染めて綺麗な服着てるのに生理用品を買えないわけがない」「生理用品にお金かかるのわかってるのだから、もっと家賃安いところに住めばよかった」「布ナプキン買えばいいのに」「ナプキン買えないなら古着使えばいい」など……。「他を我慢すれば生理用品くらい買えるだろう」と考える人は少なくないようだ。
「限界まで追い詰められていなければ、助けを求めてはいけない」という風潮
生理にかかる費用は、個人の希望に関係なく女性に生まれたためにかかっているものだ。女性だけにかかる生活必需品の費用が負担だと感じている人に「別のものを我慢すればいい」と“自助”での解決策を提示するのは望ましいのだろうか。
また、「困っている」と声をあげている人に、なぜ他人が「あなたは困っていない」とジャッジするのか。「生理の貧困」への批判的な意見は「自分の描く貧困イメージに当てはまらないならば、困っている人として認めない」という不寛容さを浮き彫りにしている。
新型コロナによる経済的な影響は、個人の努力だけではどうにもならないことがあることを日本社会に突きつけている。困ったとき、生死にかかわるほど貧しい状態に追い詰められる前に、最低限の生活は守られ、安心して立て直せる。そんな寛容な社会の方が生きやすいのではないか。
なお、最近では企業の生理に関する積極的なアクションも見られる。ファミリーマートは、「国際女性デー」の翌日である3月9日から12月31日まで、対象の生理用品を2%割引で販売している。
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