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東日本大震災の発生から10年。震災による影響は、津波により壊滅的な被害を受けた東北3県の太平洋沿岸部から始まり、国内サプライチェーンの寸断、相次ぐ自粛、東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害、取引先の被災による販路の喪失など、直接的に被害を受けなかった企業にも波及して全国各地に拡大しました。10年を経た今もなお、東日本大震災の影響による倒産は発生しているといいます。
帝国データバンクによると、東日本大震災が発生した2011年3月から2021年2月までの10年間で、震災被害が倒産の直接または間接的な要因となった「東日本大震災関連倒産」は累計2061件、負債総額は累計1兆7143億円に上りました。
震災発生直後から東北3県を中心に多く発生した倒産は、震災1年目だけで513件。工場など設備の損壊、従業員・取引先の被災などで事業継続がままならなくなった企業が続出しました。しかし6年目以降は、震災復興工事や被災地域での生活再建、地域経済の再始動もあり、関連倒産は沈静化の傾向をたどっています。10年目となる2021年(2020年3月-21年2月)では40件と、発生から10年で最も少なくなりました。
ただ、震災関連倒産のうち、地震や津波による建物の倒壊・喪失など「直接被害型」の倒産が占める割合は、震災直後に比べ大きく高まっていることが近年の傾向として挙げられています。1年目の9.2%から5年目以降急速に拡大し、ピークとなる8年目には全体の半数超(56.1%)を占めたほか、10年目でもなお4割を占めています。
震災を乗り越え、政府・自治体の経営支援も活用して工場や事業所などハード面は再建したものの、取引先の廃業、需要の低迷などで次第に資金繰りが苦しくなり、最終的に経営が破綻するケースが多く、震災がもたらした影響は10年を経た今でも企業経営に色濃く影を落としています。こうした要因から、東日本大震災関連倒産はこの10年間、120カ月連続で発生し続けていると見られています。
過去10年の関連倒産のうち、累計件数で最も多かった業種は「サービス業」463件で、全業種中初めて400件に達した5年目をピークに、6年目以降は発生ペースが鈍化したものの、件数は依然として多い状況です。
次いで「製造業」423件、「卸売業」417件。当初は流通網の寸断や取扱商材の風評被害、取引先の廃業などから需要が急減し、中間流通を担う卸売業者での倒産が多く目立ちました。しかし、ここにきて東北地方を中心に製造業の件数が増加しており、10年目では累計件数で6件差ながらも卸売業を上回っています。製造業では、被災地を中心に補助金などを活用して工場施設を再建させるなど、地域経済復興のシンボルとして再稼働したケースが多くありました。しかし、工場など大規模な施設の再建やベルトコンベアなど製造機器類の新造・調達には多額の資金が必要となり、復興後の需要回復を見越してその大部分を借入金で賄った企業を中心に、当初の計画通りに売り上げが確保できなくなる一方で借入金の返済負担が次第に重くのしかかり、最終的に自力での経営再建や事業継続を諦めるケースが、震災から年数を経て特に目立ち始めています。
10年間累計の業種細分類別トップは「ホテル・旅館」134件。地震・津波による宿泊施設の流失や損壊、観光客減少による客室稼働率の低下などを受け、借入金の返済猶予など資金繰り支援を受けつつも抜本的な収益環境の改善には至らず倒産に陥るケースが多く、震災から10年を経てなお多く推移しています。次いで、荷動きや取引先の減少などに見舞われた「一般貨物自動車運送」51件、震災直後の資材調達難による影響を強く受けた「木造建築工事」50件、不漁や需要低迷などで業況の回復が鈍い「生鮮魚介卸」38件などが続きます。
都道府県別の発生状況では、島根県を除く46都道府県で「東日本大震災関連倒産」が判明しており、10年間累計で最も多かったのは「東京都」478件、次いで「宮城県」205件、「茨城県」122件、「静岡県」115件。地震や津波の被害を直接的に受けるなど特に影響が大きかった太平洋沿岸の県では、震災10年を経過してなお倒産が多発する一方、中部以西の西日本地域では5年間で1件も判明しなかった県が散見されるなど、エリアによって動向には差が見られます。
6年目以降の増加件数を見ると、10件以上増加したのは6都県です。なかでも最も増加したのは「宮城県」(5年目:145件→205件、60件増)で、震災10年目で200件に達し、発生件数も増えるなど、発生ペースは依然として衰えない状況です。