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2021年2月19日、退去強制令状の出ている外国人の長期収容解消を名目に、入管法改正案が閣議決議された。
きっかけは2019年6月、大村入管(長崎県大村市)にて3年7か月にも及ぶ長期収容に抗議してハンガーストライキを行ったナイジェリア人の男性が餓死してしまったことにある。この事件の後、法務省「出入国管理政策懇談会」の専門部会がまとめた提言をもとに、出入国在留管理庁が改正案を作成した。
その改正案の中身は人権擁護の観点から考えられたものとは言いがたい。送還を拒否した人、逃亡した人に刑事罰を設けるという非常に厳しいものだ。
また、「管理措置制度」というものが設けられるようになる。これは入管によって決められた管理人が仮放免者を監視するというものだ。しかし、この措置を認めるか否かの裁量が入管に委ねられるため、抜本的な解決にはなり得ないと評価する声も多い。また、監督を務める人の負担も心配される。
今回の改正案が通れば、難民申請を3回繰り返すと送還の対象になってしまう。長期収容の解消と言えば聞こえがいいが、蓋を開けば帰国させることを前提とした、人を人と思わないえげつない法案だ。
帰れないのには理由がある
日本にいられないのなら帰るしかないが、どうしても帰ることができない人たちがいる。母国で迫害されているため帰れば殺されるかもしれない人、治安が非常に悪いため現地で生活することによって命に危険がおよぶかもしれない人など、さまざまな事情の人がいる。
一方、日本は難民条約を結んでいるにも関わらず、難民の受け入れに積極的ではなく、認定率は1%未満と先進国の中で突出して低い。
また、いまさら帰れない人たちもいる。さまざまな事情で在留資格のないオーバーステイの状態になってしまったが、日本に20年30年と暮らして地盤を築いているケースなどだ。彼らが長年かけて積み上げてきた地域社会とのつながりを奪い、さらに家族と引き離すことはあまりに酷である。
また日本で生まれ育ったのに在留資格がないこともある。ビザがない親の間に生まれた子どもを、行ったこともない“母国”に無理やり送還しても生きていけるわけがない。見殺しに等しい行為である。
長期収容の問題を解決したいのであれば、まずはそういう人たちの在留資格を出すことが先決ではないだろうか。
長期収容されている人たちのほとんどは、どんなに収容施設が劣悪で人間扱いされない環境であろうとも、帰ることができない。拘禁症状のため精神は蝕み、心身ともに病気になっても、だ。
「この法案が通ったら一体、どうなっていくのだろうか」と、誰もが怯えながら日々を過ごしている。
支援者は抗議行動を開始
東京入管と東日本入国管理センター(牛久入管)で面会活動をやっている各市民グループは「入管法改悪反対共同行動」を開始した。
2月17日、法務省前で申入れ書を提出。その後は「入管法改悪反対」のプラカードを掲げて日比谷公園から銀座の大勢の人が行きかう通りを歩くデモを行い、道行く人にアピールした。この抗議行動には平日にも関わらず100名以上の参加者が集まった。
法務省まで来られない人たちには、最寄りの駅や家の中でも構わないので、同じ「入管法改悪反対」のプラカードを掲げ、その写真をSNSにアップしてほしいと呼びかけた。また、18時~21時と決めた時間に「#入管法改悪反対」のハッシュタグをツイッターに流してもらうようにも呼びかけている。「誰でも簡単に参加できるように」との工夫である。
共同行動はデモが終わった後も続く。廃案を訴えるロビイング活動なども、引き続き協力してやっていく方針だという。
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