紙を綴じる文房具といえば、最初に思いつくのがホッチキスです。紙が2枚以上あって、紛失を防いだり順番を変えないように保管する際、ホッチキスで留めておくと便利ですよね。
ホッチキスはその基本構造が何十年も変わらない、ほとんど完成された文房具だと思います。どこのご家庭やオフィスにも、銀色で指が当たる部分だけカラー樹脂に覆われた、昔ながらのホッチキスがあるのではないでしょうか。
ホッチキスは故障が少なく、長く使える文房具の代名詞でもあります。針はどんどん消耗しますが、本体はいつまで経っても消耗することなく手許に残ります。金属部分が多少錆びた程度では、作業に影響もありません。
仕事でたくさんの書類を一気に綴じたり、大量の書類を用意しなければならなかったり、用途によってホッチキスもさまざまなバリエーションを持っています。紙を綴じる、という根本的な機能はもちろんですが、ホッチキスにはもっと別の便利機能もあるのですが、ご存知でしょうか。
それは、タッカー機能です。ホッチキスのハンドルを180度開き、ポスターなどを壁に直接ホッチキスの針で固定することをタッキングと言います。プロ用の製品として、例えば椅子の座面に布を装着するのに専用タッカーを使用しますが、それの簡易版ですね。タッカー機能があるホッチキスは限られているのですが、現在もっともベーシックなホッチキスであるマックスのHD-10にはその機能があります。
ところがこのHD-10、実にすべりやすいのです。全体はぴかぴかのステンレス、グリップ部分の樹脂もつるつるです。ホッチキスとして握るにも、タッカーとして打ち出すにも、あまりにつるつるで使い勝手がいいとは言えません。
特に枚数の多い書類を綴じたり、高所にあるポスターをタッキングしたりしたい場合、本体が滑らずしっかり握り込めたり力をかけて押せたりしたほうが便利ですよね。
今回ご紹介するマックスのホッチキス「HD-10G」は、握り心地を改良したベーシックタイプのホッチキスです。
替針1,000本が同梱されており、購入してすぐにお使いいただくことができます。パッケージには「タフベーシック」と大書きされていますが、これは本製品の特徴であるソフトグリップのデザインに起因した愛称です。
ノーマルのHD-10に比べると、全身をエラストマーのカバーに覆われたHD-10Gは無骨で、力強い印象を与えます。エラストマー樹脂は滑り止めと衝撃吸収の両面から、本製品を「タフ」に仕上げています。
カバーのカラーバリエーションは3色。チャコールグレー、モスグリーン、ベージュで、いずれもアースカラーです。アウトドアでの使用を意識されているようで、見えている金属部分とのコントラストが美しいカラーリングですね。
握ってみるとわかりますが、エラストマーカバーはしっとりとしていて適度に抵抗があり、滑り止め効果は抜群です。これなら作業中につるつる滑ってしまうこともありません。
また、落下させてしまった際にも、ホッチキス本体を衝撃から守ります。ホッチキスが壊れてしまうほとんど唯一の原因が、落下によるパーツの損傷でしょう。本体はそもそも頑丈なのですが、それでも落下の衝撃によるゆがみはホッチキスの精度を下げてしまいます。本製品はそんな落下の事故にも安心できます。
ホッチキスとしての機能はまさにベーシック。針は50本内蔵可能、綴じ枚数は最大20枚(一般的なコピー用紙を基準)。たくさん綴じたい場合は、もっと大型のものを使用された方が便利です。小回りが利きますので、本製品は枚数が少ない書類を気軽に綴じる際に使用するのがいいと思います。
ホッチキスで紙を綴じる場合、ハンドルを紙に向けて前に握る「順手持ち」だけでなく、紙を下にしてホッチキス本体を掌に握り込む「逆手持ち」をされる方もいらっしゃいますよね。HD-10には逆手持ち用の樹脂グリップが後端に用意されていましたが、HD-10Gは全体がエラストマーカバーで覆われているので逆手持ちが楽にできます。特に逆手持ちの場合、握り込むホッチキス底面にもエラストマーが伸びているので力がかけやすくなっています。
この滑り止め加工は、タッキングの時にも有効に働いてくれます。高い位置ではホッチキスを保持しづらいのですが、エラストマーカバーはこの作業時の保持を助けてくれます。
ホッチキスは立てて設置できると底面積を取らずに収納でき、また持ち上げてすぐ綴じ作業にかかることができるのですが、HD-10Gも立てて置くことができるように設計されています。
軍手をしたままでもタッキングができる、アウトドアでも活躍する「タフベーシック」HD-10G。ちょっと甘めのデザインが多い昨今の文房具においては、かなり渋めに寄った製品です。かっこいい文房具がすくないとお嘆きの貴兄に、ぜひお使いいただきたいニューベーシックです。
(他故壁氏)