2018年にブレンというボールペンが登場したとき、ここまで早くラインナップが拡充されるとは思っていませんでした。
ブレンはゼブラのボールペンです。ボールペンはインクの特徴によって油性ボールペン、水性ボールペン、ゲルインクボールペンに大別されるのですが、ブレンに使用されているインクはエマルジョンインクと言って、油中水滴型の油性ボールペンに分類されます。
2018年12月、単色ノック式のブレンが登場しました。筆記時に芯がブレないこと、無駄な音が出ないこと、そういったストレスからフリーになることをメインコンセプトに置き、デザインオフィスnendoによってスタイリッシュにまとめられたボディは「かっこよさと機能性を兼ね備えることができる」ことを証明してみせました。
2020年3月、ゼブラは早くも3色ボールペンであるブレン3Cをリリースします。3色ボディでありながら単色だったブレンとまったく同径でサイズに変わりがなく、最も使うと想定される黒インク用のノックボタンを大きく取ったり、ノックが戻る際の衝撃を軽減させる軟質素材を使用するなど、ブレンの良さをさらに進化させた製品でした。
そして2021年──待望の製品が誕生しました。それが今回ご紹介する「ブレン2+S」です。
名前に着いている「2」はボールペン2色、「+S」はシャープペンシルを意味しています。
シャープペンシルは0.5ミリ芯を使用します。エマルジョンボールペンは0.7ミリと0.5ミリが用意されています。ボディカラーは単色ノックおよび3色ボディと同様に、黒、白、グレー、ブルー、ピンクが用意されています。
ボディデザインは昨年発売されたブレン3Cとほとんど変わりません。店頭で販売されている段階ではボディ前面にシールがあって区別ができますが、購入後これを剥がしてしまうと区別するポイントが限られてきます。
ブレン2+Sのノックでいちばん大きなノブは、シャープペンシルの繰り出しとノックに使用します。頻繁にノックする部分ですので、ブレン3Cのものより大型化しています。ただし、これも並べて較べることで判明する程度で、デザイン上の違和感はありません。
ボールペンのノックノブは小さく、指の腹で引っ掛けて押すイメージです。クリップを前に、ペン先を下に向けた状態で、右側が黒、左側が赤です。クリップを前にし、右利きの方が親指で操作することを念頭に置かれた位置で、ノックノブを持つ2色ボールペンの大半はこの「右が黒、左が赤」のレイアウトなのではないでしょうか。
ブレン3Cは同条件で比較した場合、右が赤、クリップ背後の大型ボタンで黒、左が青です。なので、ブレン2+Sとブレン3Cを並べた際、もっとも判りやすい差はノックボタンの配置になります。余談ではありますが、背後に黒を配置している3色ボールペンを他に見たことがありません。たいていの3色ボールペンは右が黒、左が赤、背面が青です。
ブレンの最大の特徴は、ペン先がブレないことです。金属口金の中にはさらに樹脂のリングがはまっており、そこに入るボールペンの先端にまったく隙間がないからブレずに安定した筆記が可能なのです。この樹脂リングによるブレ制御方式を「ダイレクトタッチ」と呼称しています。
通常ボールペンリフィルの口金は黒であっても赤であっても同一の径になっているので、多色ボールペンであるブレン3Cがどの色を出してもブレないのは理解できます。ところが、今回はシャープユニットをそのダイレクトタッチに隙間なく通す必要があります。ブレン2+Sはこの難題をクリアし、複合筆記具にありがちだったシャープペン先のカチャつきがまったくありません。
消しゴムが内蔵されていないのは残念ですが、他社でも消しゴムのない複合筆記具は存在しますし、このスタイリッシュさを損ねない消しゴム内蔵方法がまたいつか編み出されるかもしれません。
シャープ芯の補充は、グリップを外し本体よりシャープユニットを引き抜いて行う方式です。替芯補充推奨本数は1本です。多めに入れて詰まらせてしまうことのないようにご注意ください。
書いてみると、なるほどブレないし余計な音が出ません。今までのノック式ボールペンでは、ノックノブを押すと「かちゃッ」、戻すと「ぱちッ」と音がするものが多かったのですが、ブレン2+Sは押したときの音は「すッ」、戻すと「ちゃッ」と控えめです。
エマルジョンインクである黒と赤のボールペンは書き心地もスムースで、油性らしさを前面に出したチューニングに好感が持てます。
シャープペンシルはノブを押し込むまでは軽いのですが、誤動作を防ぐためなのかノックはかなり重く、ぐっと力を入れないと芯が繰り出されません。ノブが大型化されたとはいえ、やや押しにくい印象があります。
ブレンは一度経験してしまうと、その「ブレなさ加減」と「静音性」の虜になってしまう筆記具です。書いている時、聞こえてくるのは紙とペン先が触れる筆記音のみ。騒がしい教室や職場では気にならなかったさまざまなノイズが、いまテレワークでひとり作業をしていると気になることがあります。筆記具のカチャつきは、ないほうがいい──そう思われる方に、ぜひ一度お試しいただきたい製品です。
(他故壁氏)