
『スッキリ』公式サイトより
3月12日の『スッキリ』(日本テレビ系)の中で、アイヌ民族への差別表現が放送され、ネット上で批判が噴出した。
問題となったのは、動画配信サイト「Hulu」で配信中のドキュメンタリー作品『Future is MINE -アイヌ、私の声-』を紹介したVTR。お笑い芸人の脳みそ夫氏が<この作品とかけまして動物を見つけた時ととく その心は あ、犬!>と謎かけを行った。
「アイヌ」と「あ、犬」をかけたものだが、これは実際に使われていた差別表現だ。Twitter上では、「知らなかったとしても許されない」「そもそも特定の民族と動物を結びつけることに疑問を抱かなかったのが問題」「VTRなら放送までに誰か止める人いなかったの?」と、即座に大炎上につながった。
同日夕方には『news every.』(日本テレビ系)で、藤井貴彦アナが説明と謝罪を行い、脳みそ夫氏も14日に自身のTwitter上で直筆の謝罪文を公開した。
3月15日の『スッキリ』では、冒頭でMCの水卜麻美アナが謝罪を述べた。
<先週金曜日のスッキリで、アイヌ民族の女性をテーマにしたドキュメンタリー作品を紹介しました。それを受けての放送の内容について、アイヌ民族の方々を傷つける不適切な表現がありました。制作に関わった者に「この表現が差別にあたる」という認識が不足していて、番組として放送に際しての確認が不十分でした。その結果、十分な、正しい判断が行われないまま、アイヌ民族の方々を傷つける不適切な表現で放送してしまいました。日本テレビとしてアイヌの皆様、ならびに関係者の皆様に深くお詫びを申し上げるとともに、今後の再発防止に努めてまいります。そして、アイヌ民族の方々の歴史や文化を深く理解して、広く伝えていくための取り組みを進めてまいります。なお、『スッキリ』の当該コーナーに関しましては、当面の間休止とさせていただきます。改めまして、本当に申し訳ありませんでした>
また、MCの加藤浩次氏も次のように詫びた。
<僕自身もですね、北海道出身という立場にありながら、オンエアがあったとき、即座に僕自身が対応できなかったこと、深くお詫びしたいと思います。さらにスタッフ共々、こういったことをしっかり理解して、若いスタッフもいます、そういった人間も含め、全員でこういった問題に取り組んでいく、そして理解を深めていく、そういうことを我々はしていきたいと思います。今回はアイヌ民族の方々、本当に申し訳ありませんでした>
さらに、月曜コメンテーターで読売新聞特別編集員の橋本五郎氏は<まず、言葉がいかに人を傷つけるか、ということに対する認識が非常に欠如していたと思います。それだけではありません。アイヌ民族とは、先住民とは何かについて学んでいないなという感じが私はしました>とコメント。
続けて、橋本氏は宇梶静江氏著『大地よ! 〔アイヌの母神、宇梶静江自伝〕』(藤原書店)を紹介し、<アイヌ民族の精神性から私たちが学ぶことはいっぱいあるんです><先ほど「これからはアイヌ民族の歴史と文化を学ぼう」というお詫びの言葉がありました。「アイヌの精神性ということは何か」ということまで考えていただきたいなと私は思います>と述べた。
Twitter上では「丁寧な謝罪だった」と評価する声がある一方、「出演者に謝罪させるのではなく、制作側の責任者が謝罪すべきでは」「『不適切な表現』ではなく『差別表現』とちゃんと言ってほしい」「何がどう不適切で差別にあたるのか説明が必要」と納得していない視聴者も少なくない。
誰かを傷つけないためにまずは“知る”こと
この問題を受けて、ネット上では「自分もこの表現が差別にあたると知らなかった。勉強しないと知らないうちに傷つけてしまう」と無知の怖さについて言及する声も見られる。「誰かを傷つけないために“知る”ことが必要」——人権教育の大切さをあらわにした出来事でもあった。
また、単純に「○○という表現は差別」という認識だけでなく、「差別とは何か」「なぜ差別になるのか」を根本的に学ぶことで、たとえその表現が差別とは知らなかったとしても、「この表現で傷つく人がいるかもしれない」と想像できるようになる。すると“不適切な発言”が公に発信される前に、誰かが気づいて止めることができるのではないか。
アイヌ民族のことに限らず、人権問題として差別表現を繰り返さないよう、間違いが起きたときの原因究明とその後の再発防止が重要だ。