アジア人女性を狙った犯行、そしてアジア人女性の性的な搾取
昨年アメリカで報告された3,800件のアジア人に対する人種差別事件のうち、被害者の約70%がアジア人女性だったという報告がある。
犯人に同情したり、「人種差別に基づいていない」と警察官や報道機関が発信したことに加えて、「女性の性的な搾取に基づいた犯行」であることを考慮する必要性が挙げられている。
犯人は、自身の犯行は「人種的動機ではなく、性的依存症によるもの」と語っている。それに対してアジア系アメリカ人のフェミニストブログ「Reappropriate」の創始者であるJenn Fang氏は、ツイッターにてこのように発言した。
「この事件が女性に対する女性差別的な攻撃だったのか、それともアジア人に対する人種差別的な攻撃だったのかということで議論が起きてるみたいだけど、そもそも、両方っていう可能性があるのではないでしょうか。」
アジア系の女性たちがアメリカで(主に白人男性によって)過度に性的に消費されたり、性的なフェティシズムの対象になることで多くの被害を受けていることも、数多くの実体験を含めたSNSの発信で明確になった。
フィリピン系アメリカ人の作家であり音楽家であるクリスティーン・リワグ・ディクソン氏は、自身の体験について以下のように述べている。
「アジア系女性が過度に性的に消費されていることが、多くの暴力の大きな理由だ。私は路上で追い詰められ、男性から言い寄られたり、(性行為を求めて)「お金を差し出されたされたこともある。アジア人であることを理由に口説かれ、それが”褒め言葉”だと言われたこともある
アジア人女性は、頻繁にモノやトロフィーとして見られ、扱われている。この非常にリアルな問題は、メールオーダー花嫁に関するジョークやハリウッドでのアジア人女性の描写など、”面白いオチ”として捉えられているのだ。
そしてそのせいで、アジア人女性が殺害されているのです。」
The hypersexualization of Asian women plays a HUGE part in the violence we face. I’ve been cornered on the street as men say “me love you long time.” I’ve been offered money for a “happy ending massage.” I’ve been hit on because I’m Asian and told it’s a “compliment.”
— Christine Liwag Dixon (@cmliwagdixon) March 17, 2021
アジア系アメリカ人の女性たちにとっては、人種差別と性差別が常に密接に絡み合っている。映画『フルメタルジャケット』で売春婦を揶揄するシーンを模した人種差別的な言葉が投げかけられるなど、彼女たちが経験するハラスメントや人種差別には、性的な要素が入り込むことが多いのだ。
記者のShaila Dewanはこう言う。
「アジア人男性を含むあらゆる人種の男性が、アジア人女性に対して女性蔑視や暴力を振るってきた長い歴史がある。アジア系アメリカ人の女性は長い間ポップカルチャーにおいて、性的に従順でエキゾチックな”蓮の花”や、人を上手く操る”ドラゴンレディー”として描かれたり、まるで他の女性よりも本質的に優れているかのように、そして彼女たち本人の個性を消し去るような形でステレオタイプ化されてきた。
アジア系女性に対するヘイトクライムは、ほぼ確実に過小評価されている。(アクティビストである)ヘレン・ジア氏はその理由のひとつとして、性的な側面を持つ事件は性犯罪として分類される傾向にあり、実際に人種的な側面が消されていることを挙げている。また、アジア人女性は従順であるというステレオタイプが、加害者を増長させている可能性もあると話す。”私たちは弱いと思われています。つまり、反撃してこない”モノ”なんです。」
最後に
日本人も、ヘイトクライムのターゲットとなっている被害者と同じ「アジア系」だ。アメリカでのアジア系への差別やヘイトクライムの拡大や加速化に加担する大きな根本的問題は、「話題にならない」ことにある。それぞれの被害者のストーリーが拡散されたり、事件自体が広く知れ渡らなければ、「差別」が存在していることにさえならないため、アジア系同士で連携し、声を上げ、多様な歴史について学ぶ必要がある。
だからまずは、より多くの人にこの事実を知ってもらうことが大切であり、さらなる差別を防ぐ第一歩でもある。第二回ではアジア系アメリカ人の自由を束縛し、表現や活動の自由を狭め、差別の助長へとつながる「モデルマイノリティ (模範的な少数派)」というステレオタイプについて取り上げる。