混迷を極めるコロナ禍の国際経済。インフレ、スタグフレーション、デフレが同時進行…日本は回復出遅れが目立つ

文=斎藤満
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Getty Imagesより

3パターンの同時進行か

 これまで世界的な低インフレ、低金利が長く続いてきましたが、ここへきて少し変化が見られるようになりました。米国ではコロナ対策として大規模な財政支援がなされたこともあり、市場には一部でインフレ懸念が出始め、長期金利が目立って上昇しています。

 また中国では著名なエコノミストによる「スタグフレーション(不況下の物価高)がやってくる」というレポートが拡散され、中国政府も神経質になっています。

 その一方、日本は20年度に3度にわたる補正予算を組み、総事業規模でGDPの半分以上にあたる300兆円もの景気対策を打ち出しましたが、依然として消費者物価はマイナスの「デフレ」が続いています。景気も「Go To」キャンペーンの停止でまたブレーキがかかり、再度の緊急事態宣言が追い打ちをかけました。

 今年の世界経済では、米国中心のインフレ、中国でのスタグフレーション、日本でのデフレという3パターンが同時進行する可能性が出てきました。

米国ではインフレ論争

 米国ではこのところ長期金利が大きく上昇しています。10年国債利回りは昨年夏に0.5%まで下げていましたが、この3月には一時1.6%を超えてきました。トランプ前政権に続いてバイデン政権もコロナ支援策として、大規模な財政政策を立て続けに打ち出したためで、市場のインフレ期待が高まっています。

 これに対して、米国の中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)も、春から夏にインフレ率が上昇する可能性を認めています。しかしこれは一時的なもので、基本は強い経済への期待で金利が上がっているだけで、それ自体問題ないとしています。FRBがインフレを一時的と見ているのは、コロナパンデミックで物流などが制約される「ボトルネック」が発生し、そこへ経済再開で需要が集中したため、と言います。

 しかし、市場はそう見ていません。物流面では、コロナパンデミックだけでなく、トランプ前政権が中国を核とするこれまでのサプライチェーンを破壊してしまい、新たなサプライチェーンがまだできていないことも影響していると見ています。半導体やいくつかの重要製品の調達が制約されるようになっています。

 それだけではありません。ロックダウン解除で経済が再開され、需要が集中することはありますが、米国ではそれ以前に個人向けを中心に兆ドル単位の大規模な給付金が提供され、個人消費需要を中心に大規模な需要が追加されました。いまだにこれが使いきれずに、個人貯蓄率は1月時点で20%を超えています。それに加えて、バイデン大統領の1.9兆ドルの追加支援策が議会を通過しました。

 この支援策について、OECD(経済協力開発機構)は、米国の初年度のGDPを3%ないし4%押し上げ、300万人分の雇用を生み出し、インフレを年平均0.75%押し上げる状況が少なくとも2年続くと見ています。FRBがインフレ率の尺度にしている個人消費デフレーターは足元で1.5%程度の上昇なので、間もなくこれが2%を超えてくることになります。

 バイデン政権はこれにとどまらず、次はインフラ投資・クリーンエネルギー対策として、さらに2兆ドル(210兆円)前後の経済対策をまとめようとしています。財源の一部は富裕層への増税で賄うようですが、一段と財政需要が高まることは間違いなく、OECDの予想からさらにインフレが高まる要素になります。

 米国のインフレが高まり、金利が上昇すると債務を抱えた新興国が大きなダメージを受けます。そうした国のひとつが中国です。

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