
『報道ステーション』公式サイトより
『報道ステーション』(テレビ朝日系)のWEB用CMに、Twitter上で批判が殺到している。
3月22日、「報道ステーション+土日ステ」のTwitterアカウントにて、15秒のCM動画とともに以下のような文章が投稿された。
<【報ステ WEB用CM作りました】
「より深く、よりカラフルに」
今後とも #報ステ を何卒よろしくお願いします>
15秒版CMでは、「これは報道ステーションのCMです。」と表示された後、若い女性がこちら(視聴者)に向かって、次のように話しかけるものとなっている。
<ただいま
いい化粧水買っちゃった!
消費税は高くなったけど、今のうちにお肌に手をかけておけば裏切らないじゃんって思って。
あ、9時54分!
ちょっとニュース見ていい?>
そして最後に<こいつ報ステみてるな>と表示される。
ツイートには、YouTubeで公開された30秒版のCMのリンクも張られていた。30秒版でも最初に「これは報道ステーションのCMです。」と表示があった後、若い女性がこちらに向かって以下のように話しかける。
<ただいま
なんか リモートに慣れちゃってたらさ 久々に会社行ったらちょっと変な感じちゃった
会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど もうすっごいかわいくって
どっかの政治家が「ジェンダー平等」とかって スローガン的に掲げてる時点で なにそれ時代遅れって感じ
化粧水買っちゃったのもうすっごいいいやつ
それにしてもちょっと消費税高くなったよね でも国の借金って減ってないよね?
あ、9時54分!
ちょっとニュース見ていい?>
最後には15秒版と同じく<こいつ報ステみてるな>と表示される。ここ数日の「報道ステーション+土日ステ」の投稿を見る限り、リプライに制限をかけていないが、この投稿にだけ返信制限をかけている。何か意味があるのだろうか。
このCMにTwitter上では「まだまだジェンダー平等が達成されていないのに、ジェンダー平等を掲げることが時代遅れになるわけがない」「この発言を若い女性に言わせて、女性同士の対立構造を作っているのが最悪」「ジェンダー平等のために声をあげている人を馬鹿にした内容」「そもそも“こいつ”って失礼」など批判が噴出している。
なお、『報道ステーション』に関しては、2019年8月にチーフプロデューサーがセクハラにより謹慎処分を受け、更迭されている。
非公開: 『報ステ』チーフPがセクハラ更迭、テレ朝調査では社内のセクハラ被害が56%
『報道ステーション』(テレビ朝日系)のチーフプロデューサーがセクハラで更迭された。3日の「日刊ゲンダイDIGITAL」記事では「週刊誌がK氏のセクハラ…
ジェンダー平等は向き合い続けるもので、“時代遅れ”になることはない
CMを擁護する意見として、「ジェンダー平等を目指すことは当たり前のことで、スローガンに掲げること自体が時代遅れという意味では」などと、“受け手の読解力がない”と冷笑する投稿も見られたが、仮にそういう意図だったとしても、多くの人は違う意味に捉えており、CMとして失敗しているのではないか。
「ジェンダー平等を目指す視点」は日本社会に広まりつつあるが、その一方で、ジェンダー平等達成にはまだまだ遠い。世界経済フォーラムが公表している2020年の「ジェンダーギャップ指数」は、世界153カ国中、日本は121位であり、特に政治分野と経済分野でのスコアの低さが目立っている。
ジェンダー平等に関心が集まっているのは、こうした状況に甘んじず、勇気を出して声をあげた人々がいるからだ。男女格差の是正がまったく達成されていない現段階で、ジェンダー平等を掲げるのをやめてしまったら、問題として認識されず、取り組まなくてよいことにされてしまう。
そして、ジェンダー平等が進んでも、向き合う必要がなくなることはないだろう。日本と比べればジェンダー平等がはるかに進んでいるスウェーデンでも議論はされ続けている。今年3月7日の『朝日新聞デジタル』の「女性デーが許せない スウェーデン大使から見たニッポン」の記事にて、ペールエリック・ヘーグベリ駐日スウェーデン大使は以下のように言及している。
<男女平等の度合いを示すランキングで4位(日本は121位)のスウェーデンは男女平等で最も進んだ国の一つと言われています。しかしそのスウェーデンでも、「まだまだ足りない」といって議論を続けています。男女平等は民主主義と同じ。毎日みんなで話し合いをして監視をして、毎日あたためていかないといけないものです>
『報道ステーション』は何を伝えたかったのか
今回の『報道ステーション』のCMには批判だけでなく、「何を伝えたいのかわからない」といった疑問の声も多く見られる。
24日午後0時56分、『報道ステーション』は同アカウントで<【今回のWebCMについて】>と投稿し、謝罪文が画像で掲載された。
<今回のWebCMは、幅広い世代の皆様に番組を身近に感じていただきたいという意図で制作しました。
ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした。
不快な思いをされた方がいらしたことを重く受け止め、お詫びするとともに、このWebCMは取り下げていただきます>
筆者はこの謝罪文を見ても、あのCMで何を伝えたかったのか理解できなかった。「議論を超えて実践」とは、具体的にどういったことを示しているのか。「不快にさせたこと」への謝罪より、何をどう伝えようとしてこのような表現に至ったのか。その原因究明がされない限り、同じことが繰り返されるだけではなかろうか。