庵野秀明、ネットの誹謗中傷受け「電車に飛び込もうと思った」匿名コメントの“暴力”は25年前から深刻だった

文=wezzy編集部
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エヴァンゲリオン公式サイトより

 『エヴァンゲリオン』シリーズや映画『シン・ゴジラ』などで知られる庵野秀明監督を特集した3月22日放送の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)。番組内で庵野は自ら命を絶とうとした過去を告白し、視聴者に衝撃を与えた。

 庵野が自身の過去を明かしたのは番組の後半。庵野に異変が起こったのは、1995年から1996年にかけて放送された『エヴァ』テレビアニメ版の最終話が放送された後だった。

 テレビ版の最終話は、主人公である碇シンジに対して、他の登場人物たちが唐突に「おめでとう」との言葉をかけて終わるもの。この意味深なエンディングも相まって、『エヴァ』は伝説のアニメと言われた。

 しかしその一方、一部ネット上では「庵野は作品を投げ出した」という批判が噴出し、ネット上には「庵野秀明をどうやって殺すか」を話し合うスレッドまで出現したという。庵野は当時の心情を以下のように振り返り、自ら命を絶つことも考えたと明かした。

<自分としては世の中とかアニメの好きな人のために
頑張ってきたつもりだったんですけど
庵野秀明をどうやって殺すかを話し合うようなスレッドがあって
どうやったら一番うまく僕を殺せるかってずっと書いてある
それを見た時にもうどうでもよくなって
アニメを作るとかもういいやって>

<1回は電車に飛び込もうと思ったのと
もう1回は会社の屋上から飛び降りようっていう
2回ほど危険があって>

 番組スタッフから踏みとどまった理由を聞かれると、庵野は<痛そうだったから。死ぬのは別にいいんだけど死ぬ前に痛いのはいやだなと。リアルに考えて止めちゃった>と話した。

 当時スレッドに書き込みをしていた人々にとって、「庵野秀明をどうやって殺すか」は単なる遊びだったのだろう。しかし、そのスレッドは庵野の人生を変え、もしかしたら、彼は生きていなかったかもしれないのだ。

誹謗中傷により急死した芸能人たち

 テレビアニメ版『エヴァ』の放送から25年ほどが経過したが、ネットの世界は今も変わっていない。むしろ、状況は悪化の一途を辿っている。SNSが普及したことで、誹謗中傷は昔よりも本人に届きやすくなり、実際に命を絶ってしまった芸能人も出ている。

 昨年5月、プロレスラーで『テラスハウス』(「TOKYO 2019-2020」Netflix、フジテレビ系)に出演していた木村花さんは、自宅で自ら命を絶った。生前の花さんはネットユーザーからの誹謗中傷に苦しめられており、死の直前にはTwitterに以下の文章を投稿していた。

<毎日100件近く率直な意見。 傷付いたのは否定できなかったから。
死ね、気持ち悪い、消えろ、今まで ずっと私が1番私に思ってました。
お母さん産んでくれてありがとう。 愛されたかった人生でした。 側で支えてくれたみんなありがとう。
大好きです。 弱い私でごめんなさい>

 隣の韓国でも同様の問題が起こっている。

 元f(x)のメンバーで、2015年にグループを脱退してからは女優・タレントして活動してきたソルリは、2019年10月に自宅で亡くなっているところを発見された。

 ソルリは2014年7月に芸能活動を一時休止しているが、その際、所属事務所は<ソルリが相次ぐ悪質なコメントや事実ではない噂による苦痛を訴えるなど、精神的にも肉体的にも非常に疲れており、事務所にしばらく芸能活動を休みたいという意思を伝えてきました。これを受け、弊社は慎重に議論した結果、本人の意思を尊重することはもちろん、アーティストを保護するために活動を最小限に抑え、しばらく休息を取る予定です>とのコメントを発表している。

 活動再開後の彼女は、ブラジャーから女性を解放するために「ノーブラ」写真をSNSに投稿したり、憲法裁判所が堕胎罪を違憲であると判決をくだしたときには、祝福のコメントを書き込むなど、女性の人権問題にも言及してきた。

 しかし、こうした行動に反発を覚える人々もおり、ソルリへの理不尽なバッシングが絶えることはなかった。

 「ネット書き込みは公衆便所の落書き」などと言われた時もあったが、そのような時代はとうに過ぎ去った。誹謗中傷を書き込んだ人物を特定し、逮捕されるケースも徐々に出てきている。

ネット上であったとしても、何を書き込んでも許されるわけではないのだ。

木村花さんの母が誹謗中傷した男を提訴 なくならない芸能人への誹謗中傷 

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庵野秀明、ネットの誹謗中傷受け「電車に飛び込もうと思った」匿名コメントの暴力は25年前から深刻だったの画像2 ウェジー 2021.03.17

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