
『ワイドナショー』公式サイトより
3月28日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)が、『報道ステーション』(テレビ朝日系)のWeb用CMに批判が殺到し、その後CMが取り下げられた件を特集した。
CMの内容はと言うと、帰宅した若い女性が、視聴者側に向かって<どっかの政治家が「ジェンダー平等」とかって スローガン的に掲げてる時点で なにそれ時代遅れって感じ><いい化粧水買っちゃった! 消費税は高くなったけど、今のうちにお肌に手をかけておけば裏切らないじゃんって思って>といったセリフを発した後、その若い女性に対して<こいつ報ステみてるな>と字幕が表示されるものであった。
これについて「ジェンダー平等はまだまだ達成されていないのに時代遅れになるわけない」「ジェンダー平等に向けて声をあげている人を揶揄する内容」「“こいつ”呼びが失礼」といった批判が殺到。
24日に『報道ステーション』はTwitter上で下記の謝罪文を公開し、CMを削除した。
<今回のWebCMは、幅広い世代の皆様に番組を身近に感じていただきたいという意図で制作しました。
ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした。
不快な思いをされた方がいらしたことを重く受け止め、お詫びするとともに、このWebCMは取り下げていただきます>
『報ステ』のCMは何を伝えたかったのか 「いい化粧水買っちゃった!」「ジェンダー平等を掲げるのは時代遅れ」
『報道ステーション』(テレビ朝日系)のWEB用CMに、Twitter上で批判が殺到している。 3月22日、「報道ステーション+土日ステ」のTwit…
『ワイドナショー』のスタジオでは、意見を求められた俳優の武田鉄矢氏が、以下のようにコメント。
<私は西洋に比べて、欧米列強に比べて、日本が特に女性に関して、男性優位社会って言われていますけれど、そんな風に感じたことはありません。日本で一番強いのは奥さんたちだと思います。我が家でもそうですけれど、母ちゃんから一声、女房からね……>
コメンテーターの松本人志氏は<報道ステーション側は、このCMは「報道ステーションは先を行ってますよ、報道ステーションを見ている人達はちょっと先を見えてますよ」っていうCMをやりながら、CMが先を見えてなかったっていう、ブーメラン的な目にあったということですよね?>とCMのメッセージの方向について言及した。
さらに、松本氏は以下のように続けた。
<僕が思うのはそれにクレームされて「はい、すみません、やめます!」だと、本当に解決になっていなくて。「この文言を加えたら使えないですかね?」何とかあのCMを使えるように、議論し合わないと、ジェンダーのことでワッと言われたら謝るしかないっていう、この状況が絶対良くないし、現に僕もジェンダー問題をあまり語りたくないみたいな気になってしまっている。この状況は、ジェンダーのことでワッと言ってくる人たちは望んでいるんですかね?>
<もっと戦ってほしいんです。「はい、すみません、やめます」で終わりで、訴えた側も「はい、やめさせた」みたいな、そこがゴールじゃないだろうなと思いますよ>
ゲスト出演した劇作家の根本宗子氏も「すぐ謝るのはどうなのかな」と松本氏に賛同。
<作り手の方にそれに対する熱意はなかったのか、それだけの思いで見てほしくて作ったならそんなこと言われても「こうだからこの作品じゃなきゃだめだったんだ」と言えなかったっていうことはちょっとそこが甘く、「CMを見てもわからなかった」って思う人がいるってことは、そこに対するクリエイションの思いが足りてないからこう言われちゃうんだよって(思います)>
批判=取り下げ要求ではない
Twitter上では、武田氏の発言に対して「個々の家庭の話ではなく社会の話してるのに…」「男性優位を実感したことがないことが、男性優位な社会であることを示している」と論点のズレや、下駄を履いている側だから見えていないという指摘が集まっている。
また、松本氏や根本氏の意見に賛同したうえで、「生きにくい世の中になっている」「言論弾圧」「言葉狩り」など、声を上げる人々への批判も見られるが、今回、『報ステ』のCMに異を唱えた多くの人々は、取り下げを最終的なゴールとしていたわけではないだろう。
『報ステ』のCMに対しては、なにがマズかったのか問題点を指摘したり、どういう趣旨のCMなのか説明を求める声も少なくなかった。謝罪文を公開したツイートにも「経緯と今後の課題を説明して」「なぜこうなったのか検証してほしい」といった議論を前進させるための要望も多数見られる。
謝罪文に書かれているとおり、内容ではなく「意図を伝えられなかったこと」が問題だったならば、“改めて意図を伝える”という選択肢はあったはずだ。『報ステ』が取り下げる選択をとったのは、批判に対して明確に説明できる言葉を持っていなかったからではないか。
なお、過去にはCMが炎上しても、企業側の判断で取り下げを行わなかったケースもある。
2017年「ユニ・チャーム」(本社:東京都)が、オムツの「ムーニー」のCM「はじめての育児に奮闘するママを応援する」を公開。母親が育児に奮闘する内容だが、約2分の中で父親がほとんど出てこなかったり、CMの最後に<その時間が、いつか宝物になる>といったメッセージが表示されたことから「ワンオペ育児を美化しないで」「リアルだけど辛い」「ワンオペ育児を思い出して涙が出た」と批判を集めた。
当時、ハフポストの取材に「ユニ・チャーム」は<子育ての理想と現実にギャップがあった、ということに悩む、母親のリアルな日常を描いて、それを応援したいという思いがありました>と回答。当時も「動画の削除は予定していない」としており、現在でもTwitter上で動画を視聴できる。
なお、この件についてハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は、2017年5月に行われたシンポジウムにて<反省されていたが、何がいけなかいと感じたか教えてほしい、と逆に取材された。男性版も作って同時に流したら面白いCMになりますね、と言ったら、それは面白いですねと会話が生まれた>というエピソードを語っていた。
また、炎上したとしても、自ら炎上した理由を学ぼうとする人もいる。
今年2月、お笑いコンビ・浅草キッドの水道橋博士氏は、ある女性アイドルに関し<美人であり、あんな歌声を持っていれば読書などしなくても良いのに>とツイートし「誉めてるつもりでも失礼」「美人なら読書しなくていい理由とは」などの批判を受けた。
その後、水道橋博士氏は『エトセトラ VOL.2』(エトセトラブックス)や、太田啓子弁護士の『これからの男の子たちへ』(大月書店)を読んだこと、「ジェンダーバイアスについて知ろう!」の講義を聴講したことをnoteに綴っていた。
「炎上したからCMを削除した」と思考停止しては、また同じことが繰り返されるだけだ。炎上した理由を学んだり、知識をインプットしない限り、前進はできないだろう。
水道橋博士の「美人なら読書しなくてもいい」が誉めているつもりでも女性蔑視になる理由
お笑いコンビ・浅草キッドの水道橋博士氏が、女性アイドルグループ「Juice=Juice」の金澤朋子氏に関し<美人であり、あんな歌声を持っていれば読書な…