妊活、出産、子育ての周りはトンデモだらけ! 振り回された経験者らが語り尽くす

文=山田ノジル

連載 2021.04.06 09:00

Gettyimagesより

妊活、出産、育児に教育。正解がなく手探りで進むしかない世界には常に不安がつきまとい、根拠なき言説=トンデモにハマってしまう沼がたくさん……。そんな光景に出会った、もしくは自らハマった体験を語り合うトンデモ座談会・育児編です。今回ご参加いただく3名の女性は全員「Twitterアカウントを公開してOK」とのこと。堂々と、ぶっちゃけトークに花を咲かせていただきましょう。

骨先生®︎ 骨運動嫌い専門トレーナー 柴田郁恵「骨美人ダイエット」さん:
ボディバランストレーナーの活動をしながら、養護教諭資格取得のため勉強中。幼少期より体が弱く入退院を繰り返し、弟は自閉症と知的障害。自然派やスピリチュアルに巻き込まれやすい人生を送ってきた。twitter@info_honesensei

さくらこさん:
過去に自然体験活動に携わっていた中で、次々とトンデモに遭遇してきた。自称・検索魔であるため、謎物件を深追いしすぎてしまいがち。twitter@sakurakowatch

珍タロスさん:
不妊治療をする中で、胎内記憶や子宮系女子などにハマる。「原因不明の不妊」と診断されていたため、サプリや漢方、鍼灸などを片っぱしから試した経験アリ。twitter@chintaros

――まずは自己紹介からお願いします。

骨先生®︎ 骨運動嫌い専門トレーナー 柴田郁恵「骨美人ダイエット」(以下、柴田):仕事でダイエット系のセミナーをしていましたが、いまは学生。養護教諭の勉強をしながら、育児中です。その中で、子どもの人権や健康を考えるうえで見過ごせない出来事があるなと実感している毎日です。私自身小さいころから喘息やアトピーを持ち、実の弟は自閉症と知的障害があります。すると自然派やスピリチュアル界隈から「そういうのは、こういうことでなるんだよ」などの謎アドバイスをされ……。根拠のない言説を押し付ける界隈に巻き込まれがちです。

さくらこさん(以下、さくらこ):私は子育てや仕事上で、地元の人たちとつながるなかで、かなりの数のトンデモに遭遇しつづけています。自分の妊活から妊娠、子育てを通して、「この地域、トンデモがめちゃくちゃ多いな!」と気づき、このアカウントで情報収集しています。前職で自然体験活動をしていて「森のようちえん」※とも関わりがありました。

※森のようちえん:デンマークで自主保育活動として始まり、日本では現在、認可外保育施設として全国各地に存在(参照記事:https://wezz-y.com/archives/78291

珍タロスさん(以下、珍タロス):今はもう妊活そのものをやめましたが、不妊治療をしていたとき、次から次へと怪しいものに手を出しました。「原因がわからない不妊」だと言われたので、「わからないなら、もうなんでも試すしかない」という心境だったんですよね。

――最近は、育児教育関係の場でマルチがすごく活性化していると耳にするんですが、そのあたりはいかがでしたでしょうか?

柴田:最近というより、私は子どものころアムウェイ系のサプリメントを飲ませられていました。私も自閉症の弟も適切な医療を受けさせてもらっていましたが、プラスアルファでアムウェイ系のいろんなサプリを母に飲まされていました。でも母は、反医療になっていた父の反対を無視して病院に連れて行ってくれていたので、単に当時流行っていたからというのもありそうですが。父は団塊の世代で典型的な企業戦士、そしてエリートだったので、子どもたちがそんな状態なのがコンプレックスになってしまったのか認めたくなかったのか、「薬なんて飲ませるな」「医者なんか信用ならない」ということをよく母に言っていたらしいです。

さくらこ:親たちがマルチ製品使っている、私の周りでもありますね。地域の育児サークルのInstagramをチェックすると、アムウェイだらけ。サークルとしてアムウェイに取り組んでいます! と、あからさまには言いませんが、さりげなく紹介してるのがアムウェイ系列のサプリメントだったり、「みんなで料理しました」とホームパーティをしている写真にアムウェイの調理器具が並んでいたり。私がそれを知ったきっかけが「市政だより」。申し込めばだれでも掲載してもらえるイベント情報欄です。「親子で免疫講座をしませんか」みたいなイベントにちょっと引っかかるものがあって調べたら、そうだった。剣道やコーラスといった普通のグループからのお知らせもあるんですが、マルチ系のほかにも、トンデモで名高いEM菌とかもちょこちょこ見かけます。

――いわゆる、リアルでつながっているママ友たちはどんな感じでしょうか?

さくらこ:そのへんは意外と「マルチはだめだよねー」とか言ってる人が多いものの、やはり数人は沼へ行きましたね。私とは距離ができるけど、マルチ沼のほうでまた仲間を作っているので、それはそれでいいのかなと思うこともあります。仕事で親しくしている方にマルチ商法で知られる「ドテラ」のアロマの愛用者がいますが、彼女のnoteを見ると「お金のブロックを~」とか「量子力学」とか……。でもどうしても、仕事上会わざるをえない。過去に沼についてツッコみ、喧嘩になり疎遠になった友人がいたので、そういう人は自力で抜け出してくるのを待つしかないと思っています。

珍タロス:私は自分が沼にハマっていたわけですが、当時、人には極力言わないようにしていました。SNSにも書かないでおこうって。やっぱりちょっと、怪しいことをやっている自覚はあったんですよ(笑)! 一度だけ、Facebookにそれっぽい投稿をしたら、友人たちから秒で「あんた大丈夫!?」と言われて少し引き返したり(笑)。だからツッコんでもらえるのは、ありがたい場合もあります。

柴田:理性が働いていたのは素晴らしい(笑)。

珍タロス:あまりにおかしいものは、さすがに引きますしね(笑)。不妊治療中に一度、流産したんですよ。精神的に不安定になり、ある大学病院で流産死産した人のカウンセリングを無料でやっているのをたまたま知ったので参加してみたら、カウンセリング担当の看護師さんが、子宮系女子にどっぷりハマっている人だった。要は子宮委員長はるが大好きだという人で(「子宮の声に従い、やりたい放題! 子宮系女子界のカリスマによる非常識な万能感」)。

一同:それはすごい。 

珍タロス:私は子宮筋腫があるんですが、病院の先生からは「妊活するのに支障ないから放っといたらいいよ」と言われました。でもその看護師さんは「ネガティブな感情が子宮にたまっているからだ」と言い出して(笑)。そこでちょっとやべえな~と思い、行くのをやめました。

柴田:私は今37歳ですが、FacebookやInstagramなどを見ていると、乳児期の育児でへとへとになって子宮系とか布ナプとかになんとなく手を出し、今度はより実践的なアロマオイルやサプリで体にアプローチする。そして子どもが就学したら、賢い子に育てることに関心がいく……みたいな流れを感じます。

さくらこ:私が携わっていた「森のようちえん」周囲ですと、お母さんが自然保育にハマって子どもを森のようちえんへ入れ、その後普通の小学校が嫌でオルタナティブスクール※※に進み、道徳的なことや社会的なことを学ぶ機会もなく子どもが育っていくケースが増えている、という印象がありますね。そうしたお母さんたちはマルチやってたり、変な自己啓発にハマッたり、最近なら西野亮廣氏の映画『えんとつ街のプペル』で盛り上がったり。みんなそうだと、ようちえん全体がある意味そういう団体になってきてしまう。10年くらい前にある地域で新規の森のようちえんに携わったときは、そこまでおかしな思想がある感じではなく、メディアでの紹介のされ方も単に「森で遊ぶのは素晴らしい」くらいだった。でもここ最近は森のようちえん全体が、普通の社会で受け入れられなかった人たちの受け皿になってるっていう傾向が強いかなって。

※※オルタナティブスクール
主流または伝統とは異なるカリキュラムを取り入れている学校の総称。文部科学省の認可を受けていないところが多く、独自の進級制度や教科科目を設けているため、理念や教育法に共感した親が通わせる傾向が強い。有名どころは、「モンテッソーリ」「シュタイナー」「サドベリー・バレー」など。

――そこで過ごす子どもたちはどうなるんでしょうね?

さくらこ:まともにやっているところもあるんですが、おかしな団体になってしまっているところは結局、森でのびのびとしてる中で一般社会になじめない子を作ってしまっているっていう感じです。もちろん無理になじむ必要はないんですけど、子どもに選ばせてるようでいて、実は親の思想の影響のほうが大きい。子どもにとって、親って絶対ですからね。前にテレビ番組で家族で田舎暮らしをしている俳優Mさんの暮らしをとり上げているのを見たら、周りの友だちはケーキとか食べてるけど、自分たちの子にはそういうものは食べさせず、家族で「白砂糖ヤバいね!」と言い合っている。あれも親の受け売りですよね。それって本当に子どもたちにとって幸せなのか? その子どもたちが、いざ社会に出たときにどうなるのか? いじめに遭ったり学校になじめなかったりで不登校になるのではなく、親の思想で不登校になってる子も増えているんじゃないでしょうか。そういう子たちがオルタナティブスクールに行って、世の中の学校のあり方に反対してるとか。つくづく、親は選べないなってなるわけですよ。

――まさに「子どもは親を選んで生まれてきてない」っていう。ところで、そういった規格外教育でなくても、標準的な学校にも、着々とトンデモって入り込んでいますよね。江戸しぐさとか、誕生学とか、EM菌とか。

柴田:教員免許取得のカリキュラムに道徳もあるんですが、そこでも「感謝の言葉をかけると水の結晶が美しくなる」というのを目にします。幸い私が教わった教授はまともな方だったんで、「水からの伝言は道徳じゃない」「そういうことをやるのが道徳ではない」とはっきり言ってくれました。ただ国が、すごくゆるい。指導要領は一応ありますけど、宗教法人がやってる学校や私立の学校では道徳の時間を宗教に変えられるので、そちらに偏ってしまいますよね。すごく怖いなと思っています。これから教員になり、どうやって子どもたちを守っていくのかということを、いつも考えています。

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山田ノジル

2021.4.6 09:00

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。

twitter:@YamadaNojiru

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