繰り返される「何々の意図はなかった」と「誤解を与えたならお詫びする」という合わせ詭弁
社会 2021.04.06 07:00
『報道ステーション』公式サイトより
●山崎雅弘の「詭弁ハンター」(第5回)
3月22日、ネット上で公開された『報道ステーション』(テレビ朝日系)のCMが激しい批判を浴びたため、2日後の3月24日に削除されるという出来事がありました。
特に激しい批判を浴びたのは、動画に登場する若い女性の「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的に掲げてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」という台詞でした。
世界経済フォーラム(WEF)が各国における男女平等の達成率を評価する指標「ジェンダーギャップ指数」において、日本の順位が世界156カ国中で120位という事実(2020年は121位)が示す通り、日本はまだまだ「ジェンダー平等」の実現にはほど遠い国であり続けています。
そんな現状を無視し、実現に尽力する人(多くは女性)を馬鹿にするかのような台詞が、大きな反発を招いたのは当然でした。
また、CMの中では「職場の先輩が会社に連れてきた赤ちゃんがかわいい」「化粧水買った」などの台詞のあと、最後に「こいつ報ステみてるな」という、男性目線の言葉が画面に表示され、全体として「若い女性を見下すトーンだ」との批判も起こりました。
動画を削除した後、テレビ朝日は2月24日に【今回のWeb CMについて】という告知文を公開しました。
その中で、同社は「ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした」と説明した上で、「不快な思いをされた方がいらしたことを重く受け止め、お詫びするとともに、このウェブCMは取り下げさせていただきます」と締めくくっていました。
何度読み返しても、日本語として意味が成立しているとは思えない、意味不明の弁明ですが、この告知文を読んで、既視感を覚えた方は多いのではないでしょうか。
この「一見謝罪のように見えて、本質的にはそうではない何か」は、政治家、とりわけ政権与党の自民党の国会議員がよく使う詭弁だからです。
「何々の意図はなかった」という第一の詭弁
国会議員が失言や暴言で批判を浴びた時、決まって口にするのが「何々の意図はなかった」という言い逃れです。
例えば、自民党の杉田水脈衆議院議員は、2020年9月25日に開かれた自民党の合同会議で、女性への暴力や性犯罪に関して「女性はいくらでもウソをつけますから」と発言したことがメディアに報じられると、激しい批判を浴びました。
杉田議員は最初、そのような発言はしていないとシラを切りましたが、9月29日に同じ自民党の橋本聖子男女共同参画相(当時)からも批判されると、一転して発言を認め、10月1日付の自身のブログ記事で「謝罪らしきもの」を公開しました。
杉田議員は、まず「女性を蔑視する意図はまったくございません」とした上で「発言で女性のみがウソをつくかのような印象を与え、不快な思いをさせてしまった方にはお詫び申し上げます」という形で、形式的な「お詫び」を行いました。
どうでしょう? 先に紹介したテレビ朝日の告知文とそっくりではありませんか?
そして、論理的に読み解けば、この二つは両方とも、一見すると自分の非を認めているようでいて、実は本質的な部分においては反省していません。テレビ朝日と杉田議員が認めて「お詫び」しているのは、自分の意図を正しく理解しない相手を「不快にさせてしまったこと」だけであり、自分の意図それ自体には何の問題もないと居直っています。