マリエの告白に連帯の声続々 「枕営業」ではなく「権力を利用した性行為の強要」だ

文=wezzy編集部

社会 2021.04.08 18:46

マリエInstagramより

 元タレントで実業家のマリエのインスタライブを録画した動画が、ネット上で拡散され話題になっている。

 インスタライブで話された内容をまとめると以下の通りだ。

 マリエが18歳の頃、番組収録前に島田紳助に挨拶に行けなかったことがあり、別日に指定の場所に謝りに行ったところ、肉体関係を迫られたという。その場には出川哲郎やお笑いコンビ・やるせなすもいたが、誰もマリエを庇うことはなく、帰してくれなかったと打ち明けた。

 所属事務所もマリエを守ることはなく、肉体関係を結ぶことを拒否すると、事務所からは「いいの? マリエ。仕事来なくなるよ?」と言われたそうだ。

 配信中、マリエは酔っぱらっていたようだったが、「その場に居合わせた人たち(出川ややるせなす)がテレビやCMなどに出ていることがありえない」と怒りを露わにしたり、「未来は自分にある。他の誰にもコントロールされてはいけない」「自分の夢のために体を売った方が早いんじゃないかって思う瞬間なんていっぱいあるわけ。でもそれじゃ絶対に辿り着かない未来があるはず」と涙を浮かべながら視聴者に訴えかける場面もあった。

 この動画がネット上で拡散されるや否や、Twitter上では「#マリエさんに連帯します」のハッシュタグとともに、マリエの告発に敬意や感謝を示す投稿が多数見られる。

怖い思いをした経験を語る女性芸能人も

 「芸能界に本当に枕営業はあるのか」——女性タレントが「私はやってないけれども、周りでやっている人はいる」と語る場面は少なくない。

 なかには、本人が仕事関係者から性行為を迫られたり、性接待をさせられそうになった経験を打ち明けたこともある。

 昨年11月には、グラビアアイドルの藤井ももが自身のYouTubeチャンネルにて、以前所属していた事務所のスタッフから性行為を迫られたと語っている。

非公開: アイドルYouTuberが元事務所スタッフに「隅々まで見させてほしい」と肉体関係を迫られ告発

  グラビアアイドル「藤井もも」が自身のYouTubeチャンネル「ふじももチャンネル」で、以前所属していた事務所のスタッフに…

ウェジー 2020.12.03

 また、2019年には、ヨガインストラクターでかつて役者としても活動していた松本莉緒が『有田哲平の夢なら醒めないで』(TBS系)にて、性接待の危険性を感じた経験があると告白。

 松本が20代の頃、自分のやりたい仕事に近い人から「アラブの王族の直々の指名だから、今から来て欲しい」と電話があり、指定されたクラブを訪れたという。しかし、いざ現場に着くと電話をかけてきた人は「端っこの人が一番お金持ってるから後はよろしくね」と言って先に帰ってしまい、松本はその場に残されてしまった。危険を感じた松本は、5分もしないうちに非常階段から逃げ出したそうだが、番組内では「こんなことして仕事をもらわなきゃいけないのはしょうもないし、精神崩壊しました」と語っていた。

非公開: 松本莉緒が“接待強要”による精神崩壊を告白「こんなことして仕事をもらわなきゃいけないのはしょうもない」

 今月5日放送のバラエティ番組『有田哲平の夢なら醒めないで』(TBS系)に、女優でヨガインストラクターの松本莉緒が出演し…

ウェジー 2019.03.08

 なお、芸能関係を含めたハラスメントの実態を調査した報告書もある。2019年に約1200人を対象とした、フリーランス・芸能関係者のハラスメント実態調査では、「セクシュアルハラスメントを受けたことがある」と答えた人は36.6%いた。報告では、「性的な関係を迫られ断ったところ、悪い噂を流され、仕事を振られなくなった」「打ち合わせと称してホテルに呼び出され、レイプされた」などの体験談が書かれている。

 また、様々な表現の現場で起きたハラスメントを調査した「表現の現場ハラスメント白書2021」では、回答者1449名のうち、129名が「望まない性行為を強要された」と回答していた。

「枕営業」ではなく「権力を利用した性行為の強要・強制」

 2017年、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏の過去の性的暴行問題をきっかけに、世界の芸能界では「#MeToo」運動が盛り上がりをみせた。しかし、日本の芸能界に波及することはなく、現在でも、女性が仕事をもらうことの対価として身体を差し出すことがカジュアルに扱われ、「女性もそれを望んでいた」と勝手に解釈したり、「断ればいい話」と批判するセカンドレイプも根強い。

 たとえば、2017年放送の『バイキング』(フジテレビ系)では、ハーヴェイ・ワインスタイン氏の問題を取り上げるなかで、坂上忍が<ワインスタインさんがやったことは確かに悪いことなんですけど、逆もあるでしょう、女優さんのほうから実力者に>とゲストの梅沢富美男に投げかけ、それに対し梅沢は<枕営業なんて言葉がね、飛び交っているからね。こんなことは昔からじゃないの。私、言っていいなら喋るけど。こんなことやっているやつはいっぱいいるよ。気をつけろ、本当、テレビ局も映画監督も>などと、性暴力の話を「本当は女性から仕掛けたのに罠にハメられて男性が告発された話」として展開した。

 『バイキング』のセカンドレイプ的な放送はその後も続き、2018年に「TIME’S UP」運動を特集した際にも、おぎやはぎの小木博明と坂上が下記のようなやり取りを繰り広げた。

小木<これ僕の意見じゃないんですけど。セクハラを受けたことで売れた人たちもいるじゃないですか、女優さんは。訴えた人の中でもそれで売れた人ってたくさんいると思うんですよ。それを訴えたところで、どっちが悪いって>

坂上忍<それはダメでしょ。合意の上で、利害関係が一致してる>

小木<売れてない人が文句を言ってるんですか? 大スターはそれで大スターになったんじゃないですか?>

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ウェジー 2018.01.12

 しかし、そもそも「枕営業」という言葉からしておかしいだろう。現状、「枕営業」には「権力者から仕事の対価として性行為に応じるよう要求されること」という意味も含まれているが、立場の低い側から提示しているわけではない場合、「営業」というのは不適切だ。正しくは「権力や地位関係性を利用した性行為の強要・強制」ではないか。

 「強要」「強制」という言葉は強く感じる人もいるかもしれないが、前述の調査によれば、断ったことで悪い噂を流されたり、仕事がなくなったりという不利益が生じているケースがある。権力者が仕事の対価として性行為を要求することは、その時点で要求された側からしたら「断ったら仕事がなくなるかもしれない」といった恐怖心を与えており、暗黙の強要・強制の効果が生じていると考えられる。「仕事上、地位関係性がある」「断ると仕事に影響するためNOを示しにくい」といった構造的な問題があるのだ。

 2021年現在、性暴力への認識も広まりつつあり、性暴力をネタとして消費する声は以前よりは減少しているものの、完全に無くなったわけではない。現に、マリエに対してセカンドレイプにつながる言葉を投稿するネットユーザーも出ている。

 性暴力に関する課題はまだまだ残されている。性暴力をしにくい社会にするため、今後も「性暴力を許さない」という空気を広めていくことが重要だ。

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