ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。新型コロナウイルスの影響で収入が下がり、住宅ローンの返済が厳しくなっている人が増えているとの報道がありました(「「住宅ローンが返せない」5万人超 大震災時の5倍に」日本経済新聞)。
金融機関に相談して救済を受けた人は5万人を超えたそうです。この数字を単純に見ると、東日本大震災の際の5倍とのこと。
ただでさえ、大半の人が人生最大の借金を背負う住宅ローン。新型コロナウイルス感染拡大という想定外かつ歴史的な事態なら、なおのこと重くのしかかる人もいるでしょう。住宅ローンの返済が厳しくなったとき、何をするべきなのかを解説したいと思います。
重要なのは放置せず早く動くこと
新型コロナウイルスの影響にかかわらず、収入減少により住宅ローンの返済が厳しいと感じたら、すぐに金融機関に連絡することが重要です。
もっと言うと、厳しいと感じなくても、時々住宅ローンの金利などの動向を確認する意味でも金融機関に出向いたり、コールセンターに問い合わせるものだと考えておいてください。しかも、借りている金融機関だけでなく他行、信金なども含めて考えましょう。
もしも、借り換えができた場合、保証料が戻ってきて、かつ、金利など今よりも条件の良いものになる可能性があるからです。長い年月で計算すると大きなお得となることも大いにあり得ます。
審査があるので、いい条件の住宅ローンがあっても、引き落としできずに遅れた月があると収入が高くても難しくなることも合わせて覚えておきましょう。
返済が厳しい状態になっている場合は、条件の変更など救済対象になる可能性があるので早めに相談しましょう。
住宅ローンの救済措置
住宅金融支援機構の住宅ローンは、新型コロナウイルスの影響により、返済が困難となった際の相談や延滞損害金の支払い相談を受け付けています。
返済の救済については大きく次の3つのメニューがあります。
・返済特例
新型コロナウイルスの影響による特例です。毎月の返済額を減らすことができます。通常期間を長くするので当然総返済額は増えてしまいますが、毎月の返済が無理のない金額になる可能性があります。
・中ゆとり
一定期間の返済額を減らすことができる制度です。その期間が終われば返済額は上がりますし、総返済額も増えますが、今後の改善が見込める状態であれば、今を乗り切るために活用できる制度です。
・ボーナス返済の見直し
毎月返済分とボーナス返済分のバランスの変更やボーナス返済の取り止めです。会社が厳しい状況でも給料を減らすのは法律上難しいので、ボーナスをカットするのが常です。
いずれの活用に関する相談も、住宅金融支援機構のローン手続きをした金融機関に連絡をしましょう。
住宅金融支援機構以外の住宅ローンでも類似の措置を受けられる可能性があり、新型コロナウイルスの影響を考慮して、救済制度は拡大しています。とにかく早めにご相談を。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で収入が下がったことは非常に苦しいことです。しかし、住宅ローンによる持ち家でなくても、家賃の支払いは毎月発生するものです。
今厳しい状況の方の中には、「金利も低いし家賃と変わらないから!」と言って住宅ローンを組んでいた人も少なからず含まれていると思います。
その家賃と同じくらいの住宅ローンが払えなくなるというのは、生活レベルとしては、度々お伝えしている「緊急小口資金」「総合支援資金」や「生活保護」という事態であることも考えられます。
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返済が滞って身動きが取れなくなる前に住宅を売却する選択肢も考えてください。
住宅購入を検討中の方は、「家賃と同じくらい」という発想はやめておきましょう。ボーナス払いを組み合わせていたり、税金(固定資産税、都市計画税)や修繕関連の費用、賃貸よりも予想以上に高くなりやすい光熱水費、なぜか家と一緒に買ってしまった車やちょっといい家具家電など、トータルで見てみると収支の悪化や貯蓄の減少に繋がるケースが多いのです。
つまり、結果的に「トータルで考えると家賃と同じではなかった」ということになりやすいのです。その点を理解した上で、「家賃より遥かにかかるけれど欲しいから買う!」と堂々と言える住宅購入を目指してほしいと思います。