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米国に周回遅れの日本の景気
同じように積極的な財政金融政策でコロナ支援をしているはずの日米間で、経済の状況に大きな差が見られます。少なくとも日本経済の状況は米国に「周回遅れ」の大差をつけられています。その原因に、両国のコロナ対応の差があると見られます。経済は一流、政治は三流と言われる日本のコロナ対応の稚拙さが、経済の足を引っ張る形になっています。
今年1-3月のGDP(国内総生産)成長率は、日本がまたマイナス成長を余儀なくされそうな状況に対して、米国ではむしろ年率10%近い高成長が予想されています。そしてIMF(国際通貨基金)は2021年の成長率を、米国の6.4%成長に対して、日本は3.3%成長と予想しています。この1-3月期の状況からみると両者の格差はもっと大きくなりそうです。
どちらも積極的なコロナ支援策
この差はどこにあるのでしょうか。まず、IMFは米国の積極的な財政支援策を評価しています。すでにトランプ前政権が3兆ドルあまりのコロナ支援策を打ち出した上に、バイデン政権が1.9兆ドルの追加コロナ支援策をまとめたことを大きく評価しました。バイデン政権はこれに続いてさらに2兆ドル規模のインフラ投資策を提示しているので、さらに上振れの可能性があります。
日本は安倍晋三政権時に総事業規模110兆円の景気支援策を2回まとめています。これに菅義偉政権が第3次補正予算をまとめ、総事業規模では約300兆円規模の景気支援策をまとめたことになります。これは日本のGDPの半分以上に相当するので、相対的には米国以上に積極的なプランを出したことになります。金融政策では両国ともに「必要なら無制限の資産買い入れ」を含めた超緩和策を行っています。
ところが、前述のように日本はまた年明けに「二番底」に向かってマイナス成長が予想されるのに対して、米国経済は絶好調です。米国株は最高値を更新し、長期金利もジワリと上昇を見せています。その「おこぼれ」が日本の株価上昇、長期金利上昇をもたらしていますが、景気のギャップは大きく開いたまま埋まりません。日本の対応には何か問題がありそうです。
見かけ倒しの景気支援策
米国での5兆ドル近いコロナ支援策が、給付金や手厚い失業手当の支給などで現実に個人に届き、個人の所得を大きく支えました。これが景気回復の大きなエネルギーになっています。
しかし、日本では総事業規模では300兆円と、GDPの半分以上の規模と自慢しましたが、これは見掛け倒しで中身がありません。表向き300兆円規模の追加といいながら、日銀の「資金循環勘定」をみると、一般政府の財政赤字を示す「資金不足」が、昨年は48.4兆円に過ぎず、19年から35兆円しか増えていません。
政府の言う「総事業規模」と現実の財政支出、あるいは財政赤字の拡大幅との間には大きなギャップがあることが確認されました。これではIMFも日本の景気を強くは見られません。しかもそのほとんどが企業への助成金、給付金で、持続化給付金5兆円、雇用調整助成金3兆円も、生産や投資には回っていません。
一方、個人には1度特別給付金10万円が支給されたくらいです。米国のような失業保険の上乗せや支給期間の延長などで直接失業者を支援するのではなく、企業に雇用を維持するための支援給付金として支払われました。それで失業者の発生が抑制された面はあるにせよ、米国では個人所得が大きく増加したのに対し、日本は所得の減少が続いています。
企業には手厚く、個人には冷酷な支援策で、その規模も水増しされていました。企業はその支援分を生産や投資の拡大に回せば、景気拡大にもつながるのですが、企業投資は増えず、労働者への賃金還元もほとんど見られませんでした。この中身に乏しい景気支援策では、米国のような華々しい回復は期待しようがありません。
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