実際、経済の実態を見ると、日米景気格差の最大の原因は個人消費の良し悪しに表れています。この1-3月の個人消費の状況を日米で比較してみましょう。
まず米国ですが、アトランタ地区連銀がまとめている1-3月期のGDP超短期予測「GDPナウ」によると、1-3月の個人消費は年率7.2%増と、景気全体をけん引しています。しかも、政府からの給付金や手厚い失業手当などによって個人所得が増えているため、まだ使い残しの貯蓄が潤沢にあります。
一方の日本は、総務省の「家計調査」によると、1-2月の実質消費水準は昨年10-12月の水準を6.6%も下回っています。昨年夏以降消費を押し上げていた「Go To」キャンペーンが終わり、しかも緊急事態宣言などで自粛を呼びかけたこともあり、外食や宿泊を伴った旅行が大きく落ち込みました。所得も増えていないのですが、それ以上に消費が落ち込んでいます。
感染対策はアフリカ並みでゼロに等しい
特別給付金以外には個人向け支援がほとんどなかったうえに、コロナの感染防止にも「無策」を露呈し、消費者の不安を高め、消費の落ち込みで飲食店や観光業などに余計な負担をかけています。
コロナの感染予防対策には、感染そのものを徹底的に防ぐ形と、集団抗体(免疫)獲得を目指す形の2つのパターンがあります。前者は中国、台湾、オーストラリア、ニュージーランドなどで、感染を最小限にして経済や生活の正常化を維持しようとしています。日本もかつてはSARS、新型インフルエンザの抑制ではこれで成功しました。
一方、後者の集団抗体獲得型は米国や英国などで、日本も今回はこれに乗りました。水際での隔離に失敗したので、これをとらざるを得なくなった面もあります。集団抗体の獲得には、国民の約7割が抗体を持つようになることを目指すのですが、それには感染経験者が増えるか、ワクチンによって人工的に抗体獲得を進めることになります。
実際、イスラエルでは国民の全員が最低1回はワクチン接種を済ませており、米国・英国でもワクチン接種が進んだことにより、少しずつ経済や生活の正常化を取り戻しつつあります。
これに対して、日本では感染による抗体獲得率が東京でも1.35%にとどまり(昨年12月)、他の地域では1%前後にとどまっています。その分ワクチン接種が進めばよいのですが、4月になっても日本はまだ、イランやアフリカの貧困国と変わらないワクチン接種率にとどまっています。
その間に大阪や兵庫では過去最高の新規感染者を出し、日本全体でも感染の第4波を迎えています。ゴールデンウィークあたりには年初の第3波のピークを超えるのではないかと、医療関係者の間で不安が広がっています。国産ワクチンの開発が遅れ、海外からのワクチン入荷も不透明で、入ってきても接種する医療体制が取れるかわからない状況と言います。
日本でも「山梨モデル」と言われる感染防止の成功例がありながら、東京も国も感染対策に手をこまねいています。このままでは大型連休中に人が動けず、経済はまた落ち込み、国民は政府の言うことを信用しなくなります。「三流政治」に危機対応は任せられません。
(斎藤満)
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