
『月曜から夜ふかし』公式サイトより
4月12日放送の『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で、MCを務める関ジャニ∞の村上信五とマツコ・デラックスが「昨今のコンプライアンス」について不満を吐露した。
番組収録中にマツコが<洒落がきかなくなってきてる>と最近のコンプライアンスについて言及。それに対し、村上は<冗談が通じひんもん>と同調した。
この日は、約1年ぶりのスタジオにお客さんを入れての収録であり、マツコは<1年も経っちゃうとさ、お客さんイジりもどこまでやっていいかわからないもんね。全部何とかハラスメントがつくわよ、私の発言は>とコメント。
以下、次のやり取りが続けられた。
村上<ブスもあかんねんで>
マツコ<ブスなんて大変よ>
村上<ここ(村上とマツコ)はさ、ずっとこの感覚やん>
マツコ<でもこれ(今のやり取り)だって見てる人が「不愉快です」って言ったらもうダメなのよ>
村上<これを真似しましたって子が出てきたら>
さらにマツコは「レディース&ジェントルメンがダメになったんだよね」とアナウンスが変更されていることにも触れ、<アタシ、オカマですけど、『レディース&ジェントルメン』って言われて『なんでオカマって言わないのよ』って思わないからね>とスタジオの笑いを誘った。
繰り返される『月曜から夜ふかし』のセクハラ・容姿イジり
『月曜から夜ふかし』は、他の番組では控えるような現代のコンプライアンスに反した特集を組むこともあり、その方向性を楽しみにしている視聴者もいる。
しかし、その方向性をもっても度が過ぎることがあり、過去に何度も物議を醸してきた。
例えば、昨年11月には、番組ADの知人女性のマスク着用前と着用後を見比べ、着用後の方が綺麗に見える「マスク美人」を調査するコーナーを放送。
ADは<ちょっとアレですけど、マスクするとすごい美人になるんですよ><めっちゃ可愛くないですか。この差、半端じゃないですよ>などと紹介していたが、他のスタッフは<普通とか可愛くないとか言っていいの?>と疑問視し、マツコや村上にも<ちょっと失礼だわ、やっぱり><めちゃくちゃ悪いぞ、これ>と指摘されていた。当然、ネット上でも「不愉快」「炎上狙ってるのかな」など批判が殺到した。
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また、今年1月にはスタッフが一般人の女性を「キャラクター(トトロ)に似ている」と揶揄する場面があり、「失礼」「『月曜から夜ふかし』だとしても面白くない」と批判の声が。
さらに、3月22日の放送では、ゲストとしてグラビアアイドルの青山めぐが出演し、青山が乳首に見えるものを服の下に入れて写真を撮り、カレンダーを作成する企画を放送。「青山めぐへのセクハラ」「気持ち悪い」「下品すぎる」と非難が集まった。
『月曜から夜ふかし』の世界観を好む声もあるが、ここ最近は度を超えた失礼・下品な企画が続いており、Twitter上では「ネタ切れなのかな」「企画力が下がった」といった声も見られる。
消費者からの声だけでなく、発信者・企業側が自らアップデートすることも
イジる側は“面白い”“楽しい”と思い容姿イジりをするのだろうが、子どもの頃「デブ」「ブス」と言われたことにより、大人になってもコンプレックスを抱え続ける人は多い。なかには、「デブ」と言われたことが原因で摂食障害になる人だっている。
「容姿イジりは人を傷つけるから嫌」という価値観は広まっており、芸人同士のやり取りでも容姿イジりを視聴者が拒否感を示すことは増えてきている。前述のように、『月曜から夜ふかし』を批判する人が増えたのもこのためだろう。
出演者側の意識も変化している。今月8日、お笑いトリオ「3時のヒロイン」の福田麻貴は、Twitterで<この数週間で容姿ネタに関してじっくり考える機会が何度かあって、私達は容姿に言及するネタを捨てることにしました!>と宣言し、注目を集めた。芸人側から“考えた上で”「容姿に言及するネタをしない」という選択もとられているのだ。
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企業側が自らアップデートする例もある。最近は3月18日から東京ディズニーランドと東京ディズニーシーが園内アナウンスを「レディース&ジェントルメン」を「ハローエブリワン」等に変更したとの報道があった。
ハフポスト日本版の取材によると、変更の理由について<全てのゲストのみなさまに継続的に、より気持ちよくパークでお過ごし頂くため><ダイバーシティなど、現在の社会状況などを含めまして鑑みた総合的な判断です>と回答しており、当事者からの要望というよりは、企業側が時代の変化を感じて自発的に変更したという。
なお、昨年10月から同様の取り組みをしているJAL(日本航空)でも、朝日新聞によれば、<社内でジェンダー問題を考える中で、性別を前提にした呼びかけはおかしいのではないかとの意見があり議論してきた。誰もが使いやすい環境を整えたい>とコメントしており、社内の意見から生じたアップデートのようだ。
また、3月27日には、ファミリーマートがプライベートブランドの女性用下着について商品の色を示す表現として「はだいろ」を用いていたが、「特定の色を肌色とするのは不適切」とといった指摘が社員や加盟店からあり、自主回収を行っている。
以前は、消費者から声があがり、それに企業が対応する形、いわゆる「クレーム対応」的なものが目立っていたが、最近では、企業が時代の流れを汲み取り(企業のブランディングの一面もある)アップデートが必要だと思えば、自主的に取り組んでいる。
なお、マツコは番組内で「自分はLGBT当事者であるけれども、レディース&ジェントルメンのアナウンスは気にならない」という趣旨の発言をしていたが、マツコが全LGBTの意見を代表できるわけでは当然ない。マイノリティとされる人たちの中でも、一人ひとり異なる意見を持っている。この件に限らず、「マイノリティの一人が○○と言っていたから」とその属性を持つ人の総意として扱うのは極端ではないか。
テレビ番組全体を見渡せば、コンプライアンスを守りながらも魅力的な番組はたくさんある。「洒落がきかない」「冗談が通じない」のではなく、アップデートされた視聴者の感覚に、『月曜から夜ふかし』が追いついていないだけではなかろうか。