トンデモ健康法の極北「肛門日光浴」を検証する

文=山田ノジル
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Gettyimagesより

 肛門に日光を当てると、健康になる! 2019年後半にInstagram発で話題となり、テレビでもとり上げられ、トンデモウォッチャーとして名を馳せる五本木クリニックの桑満おさむ院長も、ブログで検証している「肛門日光浴」

 いい大人が、おむつがえのポーズでパッカーンと大股開きしている姿。しかも、日中に野外で。もはやそれはヌーディズムすら感じる、堂々たる……は、ぶっちゃけ言い過ぎで、過去に当連載でご紹介した「おとなまき」(ぜひ検索してね!)をはるかに超える衝撃ビジュアルに「一体コレはなんのプレイですか?」と大爆笑でした。

 プロ(桑満医師)が医学的にコメントしてくださったことだし、周りではあまり目にしないし……と当時はスルーしていましたが、私の中でなぜかこれが今、再燃。ここ1カ月ほど徹夜作業の日が多かったせいでしょうか(ゴールデンウィーク進行のバカ)。寝不足の頭で朦朧となりながら、この連載の担当編集者に「私は今、肛門についてしか書きたくない!」と意味不明な宣言を放ち、「うわ~パワーワードきた~」と呆れられる始末です。

 肛門日光浴は、さまざまな媒体で紹介されているとおり、肛門に日光を当てることで、さまざまな効果を期待する、健康法のこと。ブームのきっかけとなったインフルエンサーmetaphysicalmeagan氏の投稿では「会陰日光浴」とあるのですが、どうもメディアが「肛門日光浴」と名付けて広めたようです。

 投稿ではこうありました。

「プラーナや太陽エネルギーを太陽から体内の臓器に取り込み、臓器を強化する」
「会陰の日光浴は、体からの気や生命力のエネルギーの漏れを防ぐ」
「健康的な性欲とバランスの取れた性的エネルギーを助ける」
「性器のホルモン機能を調節する」
「大地に根差し、地球と一体化することができる」
「体から発せられる磁力を増強し、オーラフィールドを拡大する」

 ザ・ヨガ的スピリチュアルワールド! 日本に伝わっている肛門日光浴は、メディアを通じてずいぶんマイルドになった感じなのでしょうか。そしてより医学的な方向にシフトチェンジしてしまい、結果としてニセ医学の領域に突入しています。

 桑満医師のブログにある、実践者たちが主張する効果効能はこちらです。

  • ・肛門粘膜に30秒日光を浴びせると、日光浴を一日したのと同じ効果がある
    ・お尻全体を日光にさらすことになるので、日光が当たる面積が増えてビタミンDを吸収しやすくなる
    ・肛門日光浴は体のエネルギーを高める
    ・肛門のバクテリアを減らし、痔の治療に役立つ
    ・睡眠が改善され、朝のコーヒーを止めることができた

 2021年の現在はみなさまご存知のとおり、世界中がコロナ禍で困難に襲われています。するとむしろ商機とばかりに、コロナに関する効果効能までが盛られはじめたではありませんか。今年2月には、ミュージシャンのリー・タバスコ氏が肛門日光浴を実践する姿をおさめたドキュメンタリー映画『サンライズ・ヴァイブレーション』が公開されています。監督は、俳優・現代美術家でもある太田信吾氏。公式サイトでは、こう語られています。

  • ・事態の長期化を受けて、自宅にこもり運動不足や精神失調になる人が増加することを懸念したリーは、国内でも知る人の少ない「肛門日光浴」を周囲のうつ病患者に伝える活動を開始
    ・「精神的な気怠さが回復した」「やり始めたら集中力が上がった」など絶賛のコメントが続出
    ・監督の太田がエビデンスが必要では?とリーに釘を刺すと、リーは研究者や医師と連携して実証実験をスタートさせる

 ついでに、肛門日光浴の素晴らしさを歌った曲もリリースされております。サンプラザ中野が歌ったふんどし協会のテーマソングといい、各種宗教ソングといい。弾けた活動はしていても、啓蒙活動に音楽を用いるというスタンダードな手法は取り入れるのねえ~。

 特筆すべきは、この作品が文化庁動画配信プラットフォーム事業「THEATRE for ALL」で公開されたことでしょう。おいおいおい、文化庁何やってんだ。現在は公開期間を終了していますが、これを鑑賞した友人K子曰く「予告編を超える内容はない」と言い切っていますので、みなさまぜひYouTubeにアップされている予告編をご覧ください。

 このドキュメンタリーをいち早く視聴した、理系ライターである友人N子に感想を聞いてみました(私は見逃しましたすみません)。

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