トンデモ健康法の極北「肛門日光浴」を検証する

文=山田ノジル
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N子:作中で「腸に光を当てることで、ホルモンもすごい活性していて、アルツハイマーにもいいと思うし、うつ一発で飛んだわ」みたいなこと言って、脳波を測るんだよね。でも、ぶっちゃけボーッとしたらα波は出る。むしろうつ病は思考停止傾向があるだろうから、α波しか出てないって話もよくある。さらに「10分ぐらい当てるとポカポカなって」とか、しきりに体温が上がることも主張されてたけど、だったら脳波よりも紫外線の影響よりも、まず体温が上がるのを確認すべきじゃないかな~。普通の日光浴と肛門日光浴で比較。賭けてもいいけど、上昇の幅は同じだから。

 靴下重ね履きで毒素を出して健康! とか、オンラインサロンで瞑想! とか。それが推奨している行為自体は決して悪くないけど、そこに盛られる効果効能トークと、儀式化したやり方が、うへぇ…というおなじみの展開なわけですね。

N子:さらに意味不明なのは、「肛門に光を入れる」という説明。腸内細菌が大腸にいるのは正しいけれども、腸内細菌のビフィズス菌、バクテロイデス、ユーバクテリウム、クロストリジウムって、偏性嫌気性菌なわけですよ。要は、空気が嫌い。乳酸菌は好気性だけど、いわゆる善玉菌に空気は不要。光も不要。ドキュメンタリーのなかで、おしりを左右に開いているのを見て「その手は何ですか?」と聞いて、「開いてるの、腸に取り込むために」と返ってきますが、いやいや開いちゃダメだから。空気取り込んじゃダメだから! 映画に出ていた、実践者たちは、今日もお尻を太陽に向けて、腸内細菌たち元気になれ~って思っているんだろうな。ピース。以上です。

 ついでに作中に登場した医師は、気の毒なほど戸惑いの表情を浮かべていた、という印象しかなかったそうです。「ええっと…まあ日光浴は体に悪くはないよね……」みたいな。しかしはっきりと否定はしていないことから、別のヒトの目には「医師も賛同!」と映るのかもしれませんが。真実は、当事者であるその医師のみぞ知る……。

 元ネタとなっている投稿を見る限りでは、肛門日光浴(もとい会陰日光浴)はヨガの世界の話です。そこでもうひとり、長年ヨガ講師をしている友人にも話をふってみました。すると、「やってみたいと思っていた!」というレス。マジか。

ヨガ講師Y:単純に気持ちよさそうと思ったんだけど、辱めな感じが否めないので、実践できてなかったー。

 そうなのか……。で、ヨガ講師としての見地からはどうでしょう?

ヨガ講師Y:人体には7つの「チャクラ」とよばれるエネルギーポイントがあると言われていて、心身の統合をめざすヨガではチャクラの活性を重要視してるんだけど、肛門は第1チャクラ。ここは大地のエネルギーと深いつながりを持ち、グラウンディング※につながる場所でもある。グラウンディングができていないと「ふわふわしていて生命力が感じられない」「自己嫌悪や自己否定など、自分に自信が持てない」「現実に立ち向かう精神的エネルギーが不足する」と言われているかな。私はそういった言葉は使わないんだけど、ポーズを安定させるときとかは、肛門を締めて体幹を意識するよう指導するし、それは結果的にヨガでいうグラウディングにつながるのかなと。だから肛門を意識することは健康にいいと思うけど、でもだからといって日光浴でそこまでの効果が得られるかはどうなんだろう。やっぱりやってみようかな(笑)。

※グラウンディング=地に足つけてしっかりと現実を生きること。

 みなさま、まじめにご回答いただいて恐縮です。

 朦朧とした私が肛門日光浴に惹きつけられたように、常軌を逸したこのワークは、確かに何かの起爆剤になるくらいのスイッチが隠されている可能性があるのかもしれません。ドキュメンタリー映画でも、実践者が「目覚めた!」と語っていたそうですし。しかし健康効果はあくまで後づけであり、オモシロ活動をすることに対する、高揚感が全てであるという印象。脱ぎたい人、注目を集めたい人、選民意識を持ちたい人。そういう選ばれし民(悪い意味で)が特別な活動を共有し、たのしい! と、はしゃぐ世界。そして暴走&迷走して、医療の範疇を踏み荒らしていく。

 しかし友人たちが指摘するとおり、なかなかそう簡単に「おしりをだしたこ一等賞♪」にはならないようですよ。むしろお日様の下ででんぐり返ししたほうが、よっぽど体にいいんじゃないか? いずれにしてもおしり丸出しで野外活動していたら、社会からバイバイバイされてしまいそうですけど。「楽しい・気持ちいい・大好き」で飽き足らず、壮大な健康効果を認めてもらいたがるそれは結局、やっている行為にうしろめたさを感じているからなのでは……なんてことも、感じた肛門日光浴でした。

Information

4月25日『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』(ズュータン著)出版記念トークライブ!

トンデモ健康法の極北「肛門日光浴」を検証するの画像2

山田ノジルがゲスト出演します。

https://www.loft-prj.co.jp/schedule/heaven/173452

【出演】

ズュータン:『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』著者 twitter@zyuutang

山田ノジル:『呪われ女子に、なっていませんか?』著者 twitter@YamadaNojir

雨宮純:連載「時間も資産も奪われる悪徳商法の実態」ライター twitter@caffelover

【司会】

鈴木エイト:やや日刊カルト新聞社容疑者兼主筆 twitter@cult_and_fraud

 「誰もがこの沼に落ちる可能性がある」ーー帯に書かれたこの言葉が非常に重く感じる衝撃的な内容の著書『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』(ポプラ社)。出版を記念して、トークライブを開催!

 今回のイベントでは、マルチ商法の話や実体験はもちろん、スピリチュアル、自然派、ニセ医療、疑似科学、陰謀論、カルト宗教などにも共通する「人の不安に寄り添う」怪しげなもの全体を取り上げます!

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