EXIT兼近「“イジり”はおじさん世代に迎合されるため」「時代の変化は当然」

文=雪代すみれ
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『ワイドナショー』公式サイトより

 3時のヒロイン・福田麻貴氏が「容姿ネタの封印」の理由を明かし、注目を集めている。

 4月8日、福田氏はTwitterにて<今度改めて詳しく書きますが、この数週間で容姿ネタに関してじっくり考える機会が何度かあって、私達は容姿に言及するネタを捨てることにしました!>と投稿。

 一部「残念」という声も見られるが、「応援してる」「容姿ネタ以外もおもしろい」「ファンであることには変わりない」など、前向きなメッセージが多く寄せられた。

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EXIT兼近「イジりはおじさん世代に迎合されるため」「時代の変化は当然」の画像2 ウェジー 2021.04.10

 4月18日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)に福田氏が出演し、このツイートに関する思いを語った。

 まず、容姿ネタを捨てる理由は「お客さんにウケなくなっている」からだという。

<容姿ネタってどんどんウケなくなっていってるなっていうのを、劇場でも肌で感じてたんですね。ブスとかデブとかはっきり言っちゃうと、前は結構ウケてたところが、あんまりウケなくなっているなっていうの感じていて>

<このネタテレビで出そうってなった時に「これで誰かが傷ついたりとかするかも」とか、そういう心配を、ヒヤヒヤしながらネタを披露するってなんやねんと思って。受けへんやったらやる必要ないじゃないですか。面白いからやっていることであって>

<私自身は面白いと思ってるんですけれども、それがニッチになってきている>

 福田氏自身は容姿イジりを面白いと思っているものの、観客・視聴者からのウケが悪いから封印するというスタンスのようだ。

 その背景として、「笑い」を見る際の受け手のスタンスの変化を挙げる。昔の視聴者は、テレビの中で起きていることはフェイクだとわかって見ていたが、最近はYouTubeをはじめリアルを求められている時代のため、「若い人ほどテレビの中のこともリアルに、ドキュメントとして捉えている」と持論を展開。

 そのうえで、芸人としてイジられることはありがたいが、視聴者には「かわいそうでしょ」「そんなの傷つくでしょう」と見られていると説明した。

 一方EXIT・兼近大樹氏は「この流れは当然」と時代の変化を肯定し、イジりは“おじさん世代”へのサービスとしてやっていると語る。

<僕たち若い世代からすると、年上世代に迎合されるために、人をいじったり馬鹿にしたりしているんですよ。上の世代、いわゆる“おじさん”と呼ばれる世代が笑ってくれるから、人をイジったり攻撃したり怒ったりしてみせるんですよ。迎合してもらう、笑っていただくためにサービスでやっていて>

 また、石原良純氏から、若い人に容姿ネタがウケなくなっている心理について問われると、兼近氏は<それをおこなわれて、同じことされるんじゃないかとか、私もその見た目だからこういうふうに言われるんじゃないかとか、あと言われてる当事者じゃなくて、周りが意識高くなっているので、「それをやることで私の周りの誰々が傷つくんだけど」とか、多様性が広がっている時代だからこそ、難しくなってきている>との理由を説明した。

 兼近氏は時代の変化を感じ、容姿ネタが受け入れられなくなった背景も理解しているようだが、自分たちよりも上の世代が作ってきたお笑いは楽しいと感じており、<俺は正直変わらないでほしいと思っています>とも吐露した。

 また、あくまでお笑いの世界で行われていることは“プロ同士のサーカス”だとして、お笑いのライセンスを作るなど、従来のお笑いを残せる可能性についても言及。

<上の世代の面白い方々は、芸人同士でサーカスしているですよ。だからナイフを投げても当たらないし、空中ブランコで飛んでも取ってくれる。これが行われているのがお笑いとかテレビの世界で、これって危険な行為だから、一般のところで行われると怪我をするに決まってるんですよ>

<言葉の暴力を許してもらえるライセンスを作って、それを持った人がお笑いできれば、リング中で戦っているのと一緒になるのではないかなと、最近よく考えます>

 松本人志氏は、福田氏の考えを肯定しつつも、<ネタって自分たちの世界やから、ボクシングみたいなもので、ボクシングのリングに上がって、「お前ら殴り合いやめろ」って言ってるようなもので、「放っておけよ」って話なのよね>と愚痴をこぼした。

 また、福田氏が「芸人と視聴者の価値観のねじれ」について言及したことには、<世間とどんどんねじれていくっていうのは、このネタ(容姿ネタ)をやめたらもっとねじれていくんじゃないのかな。このねじれを直すために、我々はそこは絶対に引かずに頑張るっていうやり方も、俺はあるんちゃうかなって思う>と提案。

 さらに<ブスイジりしたときに、ウケが悪くなっているっていうのは、確かに世の中の空気がそうしているっていうのもあるけど、やってる側が躊躇しちゃってるから、ウケが悪くなってるっていうのは絶対にある>とも指摘した。

芸人が抱えるコンプレックスは一般社会で作られたもの

 番組内で福田氏は<太ってて学生時代みじめな思いしていた人が、それをお笑いで面白くしてもらって、それで人気者になってスターになって、コンプレックスがなくなった人もいっぱいいるんですよ>とも主張していた。

 しかし、そもそも一般人の頃に容姿イジりをされたことがきっかけで、コンプレックスを抱えているのである。容姿イジりがなければ、コンプレックスを解消する必要もなかっただろう。

 容姿イジりについては、他の女性芸人も悩んでいるようだ。

 昨年9月に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)では、ガンバレルーヤのよしこ氏が<最近、『ブス』とか『デブ』とか容姿いじりがダメみたいな流れになっているじゃないですか。私たちは顔一本でここまでやってきたので、それが無くなると私たちはどうやって頑張っていけばいいのか……>との思いを告白。

 一方で、ラランドサーヤ・サーヤ氏は<ブスを売りにする女性芸人も、本当は“ブス”などと罵られ、嘲笑されたくないはずだ>と主張し、よしこ氏に<綺麗って言われたくはないってことですか?>と問いかけた。

よしこ氏<綺麗って言われたくは……なくはないです>
サーヤ氏<言われたいんですよ。本当は、可愛い、綺麗って言われたいんですよ>
よしこ氏<……私ホントは可愛い、綺麗って言われたいの?>

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EXIT兼近「イジりはおじさん世代に迎合されるため」「時代の変化は当然」の画像2 ウェジー 2020.09.29

 「一般社会で容姿を罵られ、コンプレックスを抱えた人が芸人になり、容姿を卑下されるコミュニケーションで人気者になること」は、その人個人の救いにはなっているかもしれない。

 だが、テレビでのお笑いが、一般社会に再生産されているとの指摘は以前からされており、テレビで容姿イジりを肯定することは、一般社会で容姿イジりされる人を作ることに繋がっているだろう。

 また、福田氏は<太ってる人が人気になるって、一番多様性を認めているし、それを一切イジらないとなると、逆にそれって腫れ物に触るみたいな感じになるので、それを本当は理解してほしい>とも強調していたが、太っていてもネガティブに扱われないことが、多様性の尊重だ。

 「太っている人をイジらないと多様性を尊重していない」と思うのは、まだ「太っている=悪いこと」という価値観の中にいるのではないか。

 また、容姿イジりがウケなくなったのは、視聴者がテレビをリアルと捉えるようになったからというよりは、SNSでテレビの感想が語られるようになり、自分とは異なる意見を持つ人の声が、可視化されたためだろう。定期的にテレビ番組のヤラセ問題が発覚している中で、リアルだと考える視聴者が増加したとは考えにくい。

 (昔の筆者を含め)何も考えず、なんとなく容姿イジりを見て笑っていた人たちが、容姿イジりに異を唱える声を見て、疑問を持つようになる。「テレビで容姿イジりされている人がかわいそう」というよりは、「人を卑下する笑いはおもしろくない」と感じる視聴者が増えたのではないか。

 「なぜウケないのか」が正しく理解されなければ、芸人をはじめとする作り手と、視聴者の心の距離は広まる一方だろう。

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