「北京五輪ボイコット!」を声高に訴える右派論壇 ホントに「人権」のことを考えているのか?

文=早川タダノリ
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 冒頭でみた野口健氏もまた、「北京五輪ボイコット」を訴える理由として、産経新聞に寄稿したコラムの末尾で、次のように書いていた。

 (北京五輪が開催されれば)ますます、中国は威勢を増し、台湾統一という野望に向かっていくだろう。台湾だけではない。今後、尖閣諸島、南シナ海への侵攻を目指すであろうことは想像に難くない。日本にとっては決して、対岸の火事ではないのだ。

 もともと、ウイグル族・チベット族を始めとする中国国内の少数民族に対する強制収容・迫害の人権問題として浮かび上がった「北京五輪ボイコット」というイシューが、エッセイの末尾では「台湾統一」「尖閣諸島、南シナ海への侵攻」を招きかねないという問題にすりかわっているのである。

 いろんなものをくっつける前に、ウイグル族に対する人権侵害を解決するにはどうするか真剣に議論するべきではないの?と唖然とした。どうも目的がうさんくさいぞ。

 冷戦崩壊以降、アメリカを始めとした西側諸国が「人権侵害」をもひとつの口実として、さまざまな国に軍事的・経済的な介入を仕掛けてきたのを私たちは見てきた。

 中国におけるウイグル族に対する迫害は大きな問題だが、それは外部からの居丈高な帝国主義的介入で解決しうるのか、まったく疑問だ。

 「新冷戦」とも呼ばれるアメリカの対中戦略の転換のなかで、「反中国」包囲網の口実としてウイグル族の人権問題があげつらわれているというしくみを、野口コラムははしなくも自己暴露してしまっているのである。

「北京五輪ボイコット」からでいいの?

 もちろん、「五輪」という巨大イベントを、中国共産党指導部が自らの支配のために利用することに、弾圧され・迫害されるウイグル族やチベット族、さらに香港の人びとが危機感を持ち「北京五輪ボイコット」を訴えるのは理解できる。

 神戸大学の小笠原博毅教授は、4月14日に「WEB論座」へ寄稿した「聖火リレーは「汚された五輪」を浄化するか」で次のように五輪の性格を喝破していた。

大国のナショナリズム、冷戦構造、商業主義、グローバリズム、旧植民地諸国の利害関係を巧妙に利用しながらIOCが作り上げてきた五輪の今の姿こそが、有り得べき五輪なのではないか。

 五輪は「平和の祭典」などではないし、これまでも国際政治のなかで激しく翻弄されてきた。単なる巨大運動会ではないのである。先に見た三浦瑠麗氏のツイートに反発する側もまた、「五輪ボイコット」の歴史をことさらに強調することで、所詮は五輪が政治の手段であることを自認していた。

 そんな国威発揚ツールとしてきわめて政治的な汚濁にまみれた「五輪」システムなど、2022年の北京冬季五輪からなどと悠長なことを言わず、〈いかなる国の人権侵害も許さない〉という宣言とともに、東京五輪から率先垂範さっそく中止してはどうだろうか。

(早川タダノリ)

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