GACKTの痴漢被害告白に「イケメンだから」 矮小化される男性の性被害

文=雪代すみれ
【この記事のキーワード】
GACKTの痴漢被害告白に「イケメンだから」 矮小化される男性の性被害の画像1

GACKTのYouTubeチャンネルより

 GACKTが、4月18日に公開した自身のYouTube動画で、過去の痴漢被害について告白した。

※具体的な被害の描写を含みます

 動画では、地中海に浮かぶ島国・マルタ共和国で、GACKTは地元のバスに乗りこんだ。

 やけにテンションの高いGACKTだが、実はバスに乗るのは約30年ぶりという。公共交通機関を利用するのには恐怖心があるからだ。彼は、過去に満員電車で女性からの痴漢被害に遭い、<それで怖くなっちゃって、それから乗れなくなったんですよ>と、過去の体験を語り出した。

 GACKTが被害に遭ったのは、学生時代。夏に満員電車に乗っていたところ、正面にいた女性が「暑い」と自分の服を引っ張り、胸を見せてきたという。GACKTは、その女性のことを「綺麗なお姉さんとかではなく“おばさん”」と説明し、<なんだこのおばさん>と思っていたところ、突然その女性が股間を触ってきたという。

 GACKTは痴漢行為を止めるため女性の手を掴もうと思ったが、当時は、男性が痴漢被害に遭うことが想定されていない時代。<もしこれで「キャー痴漢」と言われたら、どっちが痴漢だと思われるんだろうって思ったんですよ><もし僕が「痴漢!」って言われたら、捕まるのは僕じゃないですか。「この人が痴漢したんですよ」って言えないじゃないですか、証拠もないんで>と何もできず、目的地に着くまで、被害に遭い続けたと話した。

 動画は、辛い被害体験を打ち明けるというよりは、時折下ネタを交えながら、撮影スタッフと笑いながら話しており、動画の編集も女性の「あーん」という声の効果音を入れるなど、笑える雰囲気を出しているものだった。コメント欄にも「おもしろすぎる」「かっこいいから女性の目を引いたんでしょうね」「やめろ!って言えなかったのかな」といったコメントが多い。

 しかし、男性の痴漢被害であっても、ネタにしていいことではない。GACKTがこの体験により電車に乗れなくなっていると告白している通り、深刻な問題だ。

 こうした被害を矮小化したり、被害者の行動を責めたりする言動は、二次被害(セカンドレイプ)である。

男性の性暴力被害の実態・矮小化される風潮

 性暴力被害というと「女性が被害者」というイメージが強いが、男性も被害に遭っていることは、調査でも明らかにされている。

 2021年3月に公表された、内閣府の「男女間における暴力に関する調査」では、無理やり性交等(性交・肛門性交・口腔性交)された経験について、男性回答者1,635名のうち、17名(1.0%)が「ある」と回答している。

 また、加害者との関係について、男性では「通っていた(いる)学校・大学の関係者(教職員、先輩、同級生、クラブ活動の指導者など)」が 23.5%と最も多く、加害者の性別は、男性被害者の場合、同性と異性の割合が半々だった。

 同調査では、被害後の生活上の変化を問う項目もあり、男性被害者では「自分に自信がなくなった」「仕事(アルバイト)をしばらく休んだ・やめた・変えた」「誰のことも信じられなくなった」の回答が多く見られ、深刻な影響を受けていることがうかがえる。

 しかし、男性の性被害に関しては、ネット上で揶揄したり軽視したりするコメントがされることも少なくない。

 男性が女性からの被害に遭った場合「相手は美人だった?」など、被害を矮小化する声や(この点、GACKTは加害者が「綺麗なお姉さんではなくおばさん」と強調しており「男性は美人からの被害ならば嫌ではない」という二次加害的な認識を補強してしまっている)、男性からの被害であれば特定のアダルトビデオ作品と結びつけ、被害をネタとして消費する投稿が目立つ。

 GACKTが被害経験を軽い雰囲気で話したのも、こうした男性の被害をネタ化する風潮があるからではないか。「真面目に話しても傷つけられるくらいなら、ネタにしてしまおう」と考える被害者もいるだろう。男性も被害に遭うこと、そして男性の被害も決して軽視してはいけないことを、社会で共有することが重要だ。

男性の性暴力被害を嘲笑うな 男女の別ない深刻な性被害

 9月3日、元中学校教師の男らが男性に睡眠薬入りの酒を飲ませ、抵抗できない状態にしたうえで性的暴行をしたとして、準強制性交や準強制わいせつの疑いで逮捕さ…

GACKTの痴漢被害告白に「イケメンだから」 矮小化される男性の性被害の画像1
GACKTの痴漢被害告白に「イケメンだから」 矮小化される男性の性被害の画像2 ウェジー 2020.09.12

「GACKTの痴漢被害告白に「イケメンだから」 矮小化される男性の性被害」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。