コロナ禍でも好調のニトリがファミレスを出店 「ニトリダイニング」は成功するのか?

文=A4studio
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ニトリダイニング公式サイトより

 家具・インテリアメーカーの大手「ニトリ」の親会社であるニトリホールディングス(以下、ニトリHD)。3月31日に発表した2021年2月期の決算短信によれば、2020年2月21日~2021年2月20日の連結業績は売上高、営業利益、経常利益いずれも前期比から増加しており、34期連続での増収増益を記録した。

 新型コロナウイルス感染症による不況をものともしないニトリHD。その子会社であるニトリパブリックが3月18日、東京都足立区にある「ニトリ 環七梅島店」の敷地内に「ニトリダイニング みんなのグリル(以下、ニトリダイニング)」というファミリーレストランをオープンしている。

 ニトリパブリックはかねてから「いきなり! ステーキ」のフランチャイズ店舗を運営しており、環七梅島の「ニトリダイニング」自体が1月31日に閉店した「いきなり! ステーキ」の店舗を居抜きで営業しているという。

 開店直後からにわかに注目が集まり、4月27日には「ニトリモール相模原」の敷地内に2号店のオープンを予定している。はたして、「ニトリダイニング」は今後飲食業界のなかで存在感を放つ店となるのだろうか。フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏に話を伺った。

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千葉 哲幸(ちば・てつゆき)/フードサービス・ジャーナリスト
フードフォーラム代表。外食産業の専門誌である『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(当時、商業界)両方の編集長を歴任するなど、三十数年間フードサービス業界の記者として活動。2014年7月に独立し、取材・執筆や書籍のプロデュース、セミナー活動を展開している。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社)がある。

フランチャイジーとして進出した外食事業で立ちはだかった問題

 家具・インテリアの会社としてその名が広く知られているニトリのグループ企業が、外食産業に本格進出したことに驚きを覚える人も少なくないと思う。しかし、千葉氏によると異業種から外食産業に参入する例は珍しくないという。

「2000年代初頭の『牛角』を中心とした焼肉店ブームでは、ホームセンターなどで働いていた、いわゆるノンフード業界の人がフランチャイズ加盟店のオーナーになるケースが多かったですね。

 ホームセンターなどは商品在庫があまり動きませんが、飲食店は訪れた利用客が必ず商品を注文して在庫が動くので、ノンフード業界の人からすると生産性が高いように感じられます。また、外食産業は参入障壁が高くないことも理由のひとつでしょう。

 事業の多様化のためにニトリHDの主力である家具といったノンフードだけでなくフード分野をカバーするのは、経営者の考え方として非常に正しいと思います」(千葉氏)

 ニトリパブリックが既存チェーンのフランチャイジーではなく、自社での外食事業展開に転換した背景にはどのような要因があったのだろうか。

「ニトリパブリックはフード分野進出の第一歩として、『いきなり! ステーキ』のフランチャイズ展開に着手していたと思われます。しかし、『いきなり! ステーキ』は客単価が2000円を超えていて、日常的に利用する『ニトリ』の客層とはギャップが生じていたのではないでしょうか。

 さらに、コロナ禍で飲食業界そのものが大打撃を受けました。ニトリパブリックとしては外食事業を推進するために投資したばかりなので、すぐに撤退するのではなく、新たな業態を自社で開発しようと考えたのではないでしょうか」(千葉氏)

『ニトリ』らしい低価格・高コスパで利用客から支持を集める

 「いきなり! ステーキ」のフランチャイズ事業で得た資産を活かして誕生した「ニトリダイニング」は、ビジネスモデルに特徴があると千葉氏は語る。

「『ニトリダイニング』にはサラダバー、スープバー、ライスバーが設置されているのですが、これは食べ放題という利用客にとって魅力があるだけでなく、従業員が盛りつける必要がないので人件費を抑えることができます。

 また、『ニトリダイニング』の主力メニューは500円の『チキンステーキ 240g』なのですが、チキンは肉の食材のなかでも調達が安定しています。『サラダ&スープ&ライスバー』はセットの場合だと350円で、『チキンステーキ 240g』と合算しても1000円を超えない価格設定も、『ニトリ』の利用客にとってコーディネートができています」(千葉氏)

 「ニトリダイニング」は今後さらなる店舗拡大に乗り出すのだろうか。千葉氏は多店化することはないと分析する。

「『ニトリダイニング』がほかの飲食店と比較して優位に立っている点は、出店場所が『ニトリ』の敷地内にあるということ。飲食店の家賃は売上の1割程度であるため、その分のコストを値下げや原価を充実させることに割くことができるということは、圧倒的に有利です。

 あえて高い家賃を払って商業施設の中に進出したとしても、『ニトリダイニング』以上に価値のある商品を同程度の客単価で提供する店は既に数多く存在しています。商品や価格構成が『ニトリ』とコーディネートされているので、『ニトリ』の敷地内で店舗を展開し、『ニトリ』で買い物をするような動機で利用してもらうというスタンスではないでしょうか」(千葉氏)

 『ニトリダイニング』がこれから『ニトリ』にあるレストランとしてその地位を盤石なものにしていくのか、あるいは思いがけない発展を遂げていくのか、今後の店舗展開を注視したい。

(文=A4studio)

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