4〜6月は残業を控えたほうがいい理由 給与明細は捨てずにきちんと確認しよう

文=川部紀子
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 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。新年度最初の給料が振り込まれた方も多いと思いますが、給料明細は見ましたか? 今回の給料明細には、この春から変わることや、今後の社会保険料への影響など、しっかり確認しておきたいことが記載されています。

 この記事では、健康保険料・厚生年金保険料と給料の関係について解説していきます。ちなみに、健康保険と厚生年金保険は合わせて「社会保険」「社保」と呼ばれます。かつて、この2つの社会保険の一定手続きは「複写」の書類で同時に手続きを行ったほど共通事項が多いのです。

社会保険料の計算方法は?

 社会保険料を計算するためには、給料や残業代、通勤手当などの合計額から、計算の元となる金額・「等級」を決めます。

【例1】合計額265,000円→「260,000円」で社会保険料を計算
【例2】合計額270,000円→「280,000円」で社会保険料を計算

  例1、例2は給料等の合計額が5000円しか違いませんが、カッコで示した社会保険料計算の元が20,000円も違います。カッコの数字に保険料率を掛け算して健康保険料と厚生年金保険料が決まるので、等級が上がってしまうと保険料が高くなります。例のケースでは天引きされる健康保険料は約1,000円、厚生年金は2000円近い差が生まれます。

 同じ給料や手当でも通勤費が違うために社会保険料が違うなど、大いにあるのです。

4月から健康保険料が変わった都道府県がある

 健康保険料は毎年3月分(4月納付分)から変わっている可能性があります。給料明細を見て比べてみてください。

 例えば、この春の東京都の健康保険料率は9.84%(自分と会社が4.92%ずつ負担)で、前年度の9.87%よりも0.03%下がっています。都道府県によって健康保険料には違いがあり、もっとも高い佐賀県と低い新潟県では1.18%もの差があります。さらに40歳からは介護保険料もプラスされてきます。

 なお厚生年金保険料に関しては、平成29年に固定されており18.3%(自分と会社が9.15%ずつ負担)です。

「4~6月に残業するな」はなぜ?

  先述の通り「等級」で社会保険料を計算しますが、毎月計算するわけではありません。

 毎年4、5、6月に支払われた合計額を3で割り平均を出します。3カ月平均額からその人の等級が決まり、9月分から1年間の社会保険料が決定する仕組みになっています。

 ですから、基本給は変わらないとしても、4、5、6月に残業代が多かった、引っ越しの前で通勤費が高いなどの理由で上の等級になってしまうと、高い社会保険料が1年間続く可能性があるのです。そのため、「4~6月に残業するな」が定説となっています。

 その後、平均よりも大きく下がった月が続くなどすれば、1年以内に特別に社会保険料が下がる改定もあり得るのですが、毎年恒例のルールとして3か月の平均から一旦皆さんの社会保険料は決められてしまいます。

 社会保険料が上がれば、もしもの際の健康保険の給付額や将来の厚生年金の額へも反映しますが、目先の保険料が上がってしまうのは嬉しいとは思えませんよね。

 自力で調整できることとできないこともあると思いますが、会社員人生に付きものの社会保険料ですから基本的な仕組みは知っておきたいですね。

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