日本のCO2削減目標はまったく足りない! 国際社会から本当に求められている数値とは?

文=志葉玲
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Fridays For Future Japan(写真提供:能條桃子)

●いま、“ここ”が分水嶺…豊かな地球を残すために知っておくべきこと(第2回)

 地球温暖化を食い止めるためバイデン米国大統領が4月22日、約40カ国の首脳達とオンラインで話し合った気候サミット。日本からも菅義偉首相が参加し、2030年度の温室効果ガス削減目標として「2013年比から46%削減し、さらに50%の高みに向け挑戦を続けていく」と宣言しました。

 これは、これまでの「2030年度に2013年度比26%減」に比べれば、大幅に引き上げられたもの、と言えます。しかし、温暖化の破局的な影響を防ぐための全世界的な取り組みである「パリ協定」での目標達成には不十分であるとの声が環境NGOから上がっています。これまでに大気中に放出されてしまったCO2の量から計算すると、2030年までに排出できるC02の量は既に限られているからです。

 地球温暖化の影響は既に深刻なものとなっています。頻発する異常気象、それによる災害が世界各地を襲っているのです。日本でも、西日本豪雨災害(2018年)など、大きな被害を被っています。このまま温暖化の進行を放置すれば、人類の生存すら危うくなるかもしれません。熱帯の国々が暑すぎて人が住めなくなるようになったり、異常気象による水不足や農業被害が深刻となったり、これらの危機が生む軋轢によって、戦争や内戦も起きるのではないかと懸念されています。温暖化による破局的な影響を防ぐため、世界平均気温の上昇を少なくとも2度未満、できれば1.5度未満に抑えることは、パリ協定での目標とされているのです。

 このパリ協定の目標達成のため、重要なのが2030年までにどれだけCO2などの温室効果ガス排出を削減できるかということです。逆に言えば、パリ協定の目標の達成のため、人類が2030年までに排出できる温室効果ガスの許容量は決まっています。この排出許容量「カーボン・バジェット」から見ると、今回、菅首相が表明した「2013年比で46%削減」という目標は、不十分なのです。

 というのも、国連によればパリ協定の目標達成のためには「2030年までに2010年比で世界全体の温室効果ガスの排出を半減」することが必要だとされているからです。削減目標の基準年をいつにするかによって、実際の削減量が変わるのですが、日本の場合、「2013年比で46%減」は、実は「2010年比で41%減」なのです(認定NPO法人「気候ネットワーク」調べ)。

 また、「2030年に世界全体での排出削減」を実現するため、世界第5位の温室効果ガス排出国である日本は、より多くの排出削減が求められており、国際研究機関「クライメート・アクション・トラッカー」によれば「2010年比で62%減」とすることが必要だとのこと。このため、前出の気候ネットワークやグリーンピース・ジャパン等の国内の環境NGOや温暖化対策を求める若者グループFridays For Future Japanは、今回の目標について、「全く不十分」だと指摘しているのです。

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Fridays For Future Japanの中村さんは衆議院環境委員会で日本の中期目標について発言した(衆議院インターネット中継より)

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