2030年までに「2010年比で62%減」なんて無理──そう思う読者の方々も少なくないかもしれません。ただ、日本の温室効果ガス排出の割合を見てみると、その約9割がエネルギー分野から。石油や石炭、天然ガスといった化石燃料を燃やすことにより、CO2が排出されているのです。
つまり、化石燃料から、太陽光や風力といったCO2をほとんど排出しない再生可能エネルギーに置き換えていくことで、温室効果ガス排出を大幅削減することは可能なのです。
環境省は経済性を考慮した再生可能エネルギー導入ポテンシャルを、最大で現在の電力供給量の約2倍と試算しているなど、日本における再生可能エネルギーの可能性は極めて大きいのです。現在、日本の発電の約8割が火力発電所、つまり化石燃料に依存したものです。これを太陽光や風力等による発電にすることで、日本全体の部門別温室効果ガス排出量で4割を占める「発電」を解消することができます。
そして部門別で「産業」(排出全体の約25%)、「運輸」(同・約17.8%)*も、できる限り再生可能エネルギーによる電力に置き換える。つまり、ガソリン車を電気自動車に変える。再生可能エネルギーから作られた水素は燃やしてもCO2を出さないので、飛行機や船など電気で動かすものが難しいものは、これを燃料として使う。エネルギー源を変えていくことにより、「2010年比で62%減」も全く不可能という訳ではないのです( *国立環境研究所による2018年度統計)。
このようなエネルギー変革は、とてもお金がかかることが予想されます。しかし、それは同時に、景気が停滞している日本経済を活性化させるための特効薬だとも言えます。
米国では、バイデン大統領が最初の任期の4年で、約2兆ドル(=約214兆円)を投じて、再生可能エネルギーや電気自動車の普及等の温暖化対策を行うとしており、それにより新たに100万人の雇用の創出や技術革新をもたらすと意気込んでいます。
日本でも、温暖化対策に大胆に予算を投じ、制度を変革していくことで、パリ協定の目標を達成し経済も活性化するという、一石二鳥の政策を推し進めていくことが大切でしょう。
(志葉玲)
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