マツコ・デラックス、kemioが日本から出た理由聞いてテレビマンに怒りぶつける「だから彼みたいな人はアメリカ行っちゃう」

文=雪代すみれ
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『マツコ会議』Twitterより

 4月24日放送の『マツコ会議』(日本テレビ系)に、YouTuberとしても活躍するタレントのkemioが出演。マツコ・デラックスとkemioの会話が注目を集めた。

 kemioは動画投稿アプリ「Vine」にて人気に火がつき、10代の頃に「原宿のカリスマ高校生」としてブレイクした。しかし、20歳で突如ロサンゼルスへ。

 その理由の一つとして、kemioは<テレビだと自分がうまく表現できなくて、どんどんフォロワーが減っていっちゃって、テレビだと面白くないし、あのキャラクター作ってるんだみたいになっていって、街を歩いていたら笑われたり、「まだいるんだ」とか(言われた)>と打ち明けた。

 これを聞いて、マツコは<テレビマンたちちゃんと覚えてるか。kemioちゃんが最初になんて言ったか。「テレビに出たら面白くない」って言われたって。なんでか分かる?>と語気を強めて質問した。

 指名されたスタッフは<テレビのやりたいことをさせてしまっていた>と回答。マツコは<これ重要ですからね(中略)だから彼みたいな人は、アメリカに行っちゃうんです>と、「テレビのやりたいこと」を強要し、若者に閉塞感を与えたことに怒りを露わにした。

 なお、kemioがアメリカに移住したのは、テレビ出演の影響だけではなかったようだ。

 kemioは両親を2歳で亡くしており、高校卒業まで父親がイタリア・イランの血をひいているといった自らのルーツについて伝えられておらず、かつ自身がゲイであることから、社会での生きづらさを日本で感じ、<いろんな人種の人がいる国で「自分は誰なんだろう」と感じたいなと思ったのも、一つの大きな理由です>と語った。

 kemioはアメリカでの生活について「今でも毎日刺激的」と話し、日本にいた頃からの一番大きな変化について問われると「NOと言えるようになったこと」と述べた。

<日本に住んでいた時は、「NO」って言えなかったんですよ。「いいえ」とか、何かを断ることに対するネガティブなイメージが自分の中ですごく強くて。アメリカに引っ越してみんな「YES」「NO」がはっきりしているので、「NO」って言うことによって、自分が自分で味方でいられるのかなって。やりたくないことはやれないって、ちゃんと言えるようになりました>

 一方、悩みもあるようだ。kemioの発信は多くの人の共感を得て、若い人のオピニオンリーダーのように扱われることもあるが、自分自身としては言いたいことを言っているだけだといい、<そうならなきゃいけないのかなって思う瞬間もたまにあります>と注目されるがゆえの葛藤も打ち明ける。

 これにはマツコも<最初そんなつもりなかったのに、世の中から「代弁者的な存在です」とか、「私たちの想いをわかってくれています」とか言われると、いやいや、私その辺の流れ者のオカマとして言いたいこと言ってるだけなんだけど(と思い)、すごく心地悪かった記憶がある>と共感を示した。また、<(kemioは)キレイだもんね。私の頃は飛び道具じゃないと世に出られなかったけれど。卑怯じゃんアタシ>と、自虐気味に時代の変化についても言及。

 Twitter上では「kemioさんの考え方が好き」「マツコは卑怯なんかじゃないよ。そんな社会だったんだもの」「冷静に自分を見つめられるマツコさんが好き」など、温かく二人を見守る声が散見された。

「オネエタレント」を笑っていた社会の空気

 マツコがブレイクし始めた2000年代中盤〜後半の頃は、まだ「LGBT」という言葉も広まっておらず、ゲイもトランスジェンダーも一緒くたに「オネエタレント」として扱われ、笑いの対象としていた風潮があった。

 飛び道具でないと世に出られなかったのは、テレビが「オネエタレント」を笑える対象として、おもしろおかしくするような番組を作ろうとしていたからで、社会もその笑いを積極的に受け入れていた空気があった。決して、マツコが卑怯であったわけではないだろう。

 ここ最近のマツコは、テレビマンの求めるものに自分を合わせてしまったことに関して忸怩たる思いを抱き始めているのかもしれない。4月26日放送の『5時に夢中!』(TOKYO MX)にて、人をイジる行為について反省を示していた。

 番組では、ベンチャー企業に勤める22歳の女性による「会社でイジられキャラになってしまって疲れる」という悩みを紹介。イジられることは馬鹿にされているような感じがして苦手だが、「ノリよく返さないと空気が悪くなってしまう」「みんなからイジられるようになって、今後もずっとイジられキャラでいなくてはいけないのか」と憂鬱に感じているそうだ。

 これについてマツコは<これでお金が発生するかどうかの差じゃない? この世界(テレビ業界)でイジられとかイジりが成立してるのって、それでおまんま(御飯)食ってるからじゃない。一般社会の人は給料に関係ないじゃない>と、テレビで行われているイジりはあくまで仕事であると言及。

 続けて、<アタシみたいにイジり倒している人間が言うのはなんですけど、一般社会で過度なイジりはきついのかなって言いながら、アタシ楽屋とか裏でもイジり倒してるから、ちょっと反省してる。やめたほうがいいのかもね>と、自身の言動を省みた。

 過去を省みることができる人は、この先、時代感覚をアップデートすることができる人だろう。マツコのように自身の言動を反省したり、テレビが定番として「おもしろい」としている構造に異を唱えたりする姿は、「人はアップデートできる」という希望になるのではないか。

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